牛丼の「代役」としてかつて誕生、大手3社の「豚丼」は今どうなっている?

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牛丼の「代役」としてかつて誕生、大手3社の「豚丼」は今どうなっている?

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2003年、米国で牛への感染の疑いが確認されたBSE(牛海綿状脳症)。それに伴い、一旦販売休止となった牛丼(牛めし)の代わりに誕生した「豚のどんぶり」は、牛丼(牛めし)メインの流通に戻った今でもなお、それぞれの店で、それぞれの形で息づいています。

BSEの影響で誕生した「豚のどんぶり」は今

 牛丼チェーン各店の主役であり、不動の人気メニューといえば「牛丼(牛めし)」。その歴史は古く、明治時代まで遡ります。大手牛丼チェーン、吉野家(中央区日本橋箱崎町)の創業はなんと1899(明治32)年。大正、昭和、平成を経て、令和の今もなお、気軽に楽しめるファーストフードとして、多くの人に愛されています。

大手牛丼チェーン3社(すき家、松屋、吉野家)それぞれの「豚肉を用いたどんぶり」(高橋亜矢子撮影、加工)



 一方、その歴史の途中で突如誕生した「豚丼(豚めし)」もまた、根強いファンを持つメニューです。

 大手牛丼チェーン3社が「豚丼(豚めし)」の販売に踏み出したのは、2004(平成16)年ごろ。米国でBSE(牛海綿状脳症)に感染した牛が発見され、牛肉の調達が困難となったなかでの、いわば「ピンチヒッター」としての登場でした。

 一定数の支持を獲得した「豚丼(豚めし)」は、「牛丼(牛めし)」復活後もレギュラーメニューとして残ることに。ただ、永続的にではなく、2019年5月24日(金)、「すき家」は「豚丼」の販売終了を発表。「松屋」でも既に、レギュラーメニューとしての販売を終了しています。

 ですが、「豚丼(豚めし)」に限定しなければ、「豚肉を用いたどんぶり」は、大手牛丼チェーン3社にそれぞれの形で、今も息づいているのをご存知でしょうか。もしくは特定の店舗のみ、提供されているケースもあります。

 一体どういうことなのでしょうか。1軒ずつ、豚の歴史と今を紐解いていきたいと思います。

すき家「豚生姜焼き丼はある」

 すき家本部(港区港南)が展開する牛丼チェーン「すき家」に「豚丼(とんどん)」が登場したのは、2004(平成16)年2月のこと。牛丼の販売の一時休止と同時に、販売が開始されました。

 その後、2009(平成21)年に一旦販売を終了したのち、2015年4月に復活し、2019年、再び販売は終了。その理由を同社の広報担当者は「メニュー改廃の一環」と話します。

 ですがここで誤解してはならないのが、「すき家で、完全に豚肉のどんぶりを食べられなくなったわけではない」ということ。「豚丼」はなくなりましたが、2019年3月、レギュラーメニューに登場した「豚生姜焼き丼」(並盛490円)は健在。「キムチ」「とろ~り三種のチーズ」「おろしポン酢」「高菜明太マヨ」など、さまざまなトッピングを楽しむことも可能です。

すき家の「豚生姜焼き丼」。「食卓の定番 生姜焼きを、どんぶりでお気軽にお召し上がりいただければと思い開発しました」とのこと(高橋亜矢子撮影)



「豚丼」との違いは「値段」と「味付け」。加えて、「お子様豚丼」「豚あいがけカレー」のような、お子様メニューやカレーメニューの提供がないことが挙げられます。

 タレには、生姜をたっぷり使用。「隠し味にオイスターソースとホワイトペッパーを加え、旨みとコクを深めました」と広報担当者は話します。

 そんな「豚生姜焼き丼」を、かつて「豚丼」愛好者だった記者も食べてみました。注文して間もなくやってきた「豚生姜焼き丼」は、心なしか、お肉の「盛り」が多い印象。口に含むと生姜の香りが広がり、「豚丼」以上に「味がしっかりついているな」と感じます。

 そこにさらに、担当者から「よりガツンと濃厚な味わいが口いっぱいに広がります」と、おすすめされていたトッピング「マヨネーズ」(プラス30円)を加えたところ、エッジの効いた味わいはもはや「フルスロットル」状態に。

 昼食を食べに来たはずが、「ビール飲みたい」という感情が生まれてしまい、戸惑いを覚える始末でした。コストパフォーマンスとしては、牛丼(並盛350円)が優勢ではありますが、牛肉が得意ではない人や、豚丼がなくなって悲しみにくれている人たちの救世主になり得るメニューなのではないでしょうか。

松屋の「豚めし」は池袋でなら食べられる

 松屋フーズホールディングス(武蔵野市中町)が展開する「松屋」でも2004(平成16)年、やはりBSE事件のタイミングで「豚めし」が登場し、2011(平成23)年、惜しまれつつ販売を終了しています。

 とはいえども「豚めし」は、完全には消滅していません。池袋サンシャイン通り店の2階でだけは「豚めし」が注文可能なのです。松屋フーズホールディングスによると「実験的な実施」という同店は、全国で1店舗だけのレア業態。「牛めし」よりも安い290円(並盛/2019年7月現在)で提供されているのも大きなポイントです。

「豚めし」の文字でいっぱいな「松屋」池袋サンシャイン通り店の外観(高橋亜矢子撮影)



 加えて、「全店舗で提供されているメニュー」という視点に切り替えると、塩ダレのたっぷりかかった豚肉のどんぶりであれば、レギュラーで楽しむことも可能です。

 その名も「ネギたっぷりネギ塩豚肩ロース丼」(並盛490円)。かつては「ネギたっぷりネギ塩豚カルビ丼」として販売されていましたが、2019年2月19日(火)から、肉の種類が変わりました。ほんのり焦がしのかかった、厚みのある豚肉の上にネギがたっぷり。塩と胡椒の味がガツンと効いたどんぶりです。

 なお、初めて、ネギ塩豚のどんぶりが松屋に登場したのは2011(平成23)年のこと。その後、一旦販売を終了したものの、ユーザーからの反響が大きかったため、再販が決定し、現在に至るといいます。

5月に開催された「松屋ビビン丼対決」では僅差で豚が勝利

「松屋」にはもうひとつ、今後の動向に注目したい豚のどんぶりがあります。それは豚の「ビビン丼」(並盛490円)。レギュラーメニューだった時期もありましたが、2017年8月に一旦販売を終了。その後は、期間限定メニューとして登場しています。

豚の「ビビン丼」(高橋亜矢子撮影)



 味は、牛めしや豚めしの和風テイストとは大きく異なる、韓国テイスト。キムチやきんぴらを混ぜ、コチュジャンで味付けられた豚肉と、ネギ、海苔、半熟卵がごはんの上にのっており、甘辛い刺激と、卵のまろやかさとのバランスがたまらない一品で、こちらもやはり、根強いファンの多いメニューです。

 2019年5月には、「松屋ビビン丼対決」と題した、豚肉の「ビビン丼」と牛肉の「ビビン丼」との対決企画も開催され、僅差で豚の「ビビン丼」が勝利。加えて、松屋の公式ツイッターによると、2019年7月現在、池袋のアゼリア通り店などの全8店舗でのみ、試験的に販売が行われています。

 同社の広報担当者によると「『松屋ビビン丼対決』は、かなり反響がありました」とのこと。「今後については、店舗スタッフの負担を加味しながら、検討していきます」としています。

吉野家では、依然、レギュラーメニューとして君臨!

 さいごに。大手牛丼チェーン3社のうち、唯一現役で「豚丼(ぶたどん)」を提供しているのが吉野家です。2004(平成16)年3月に初登場したあと、2011(平成23)年12月に一旦は販売を終了。ですがユーザーからの要望に応え2016年4月、復活を遂げました。

 スタンダードなもの(並盛350円)以外にも、「キムチ」「チーズ」「半熟玉子」などのトッピングも楽しめてバラエティ豊か。「吉呑み」を実施している店舗では、「豚皿」(300円)も楽しめます。

 ……つまり、「いちばん気軽に楽しめる」という視点で見るならば、唯一現役続行中の吉野家の「豚丼」に軍配を上げるのが妥当なのでしょう。ですが、全部実食してみて思うのは、全部それぞれに、それぞれの良さや美味しさがあるということ。

 どの店にも、独自の豚肉のどんぶりがあることは、選択肢の豊かさにつながっているように思います。ぜひ、その時々の用途や趣向を踏まえながら、さまざまな「豚肉のどんぶり」を楽しんでみて欲しいです。

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