熱心過ぎる親が子に背負わす「教育虐待」、まず親が捨てるべきは何か?

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熱心過ぎる親が子に背負わす「教育虐待」、まず親が捨てるべきは何か?

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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中学受験が珍しくなくなった一方で、親の過度な期待が子どもを追い詰め、「教育虐待」につながる危険性も指摘されています。元塾講師で、子どもの教育問題に幅広く携わってきたライターの中山まち子さんが、中学受験との向き合い方を紹介します。

東京では中学生の4人に1人が私立へ

「我が子をより良い教育環境で学ばせたい」と願う親は昔も今も変わりません。

 しかし、親がヒートアップした結果、2016年8月には名古屋市で、中学受験をめぐり父親が子どもを刺し殺すという悲惨な事件も起きています。子どもの学歴をコントロールしようとした末に起きた悲劇です。

中学受験をする小学生が増え、塾通いは低年齢化している(画像:写真AC)



 文部科学省の「平成30年度学校基本調査」によると、2018年度の東京の私立中学に通う生徒は7万4504人になり、東京都の中学生徒数30万85人のうち約4人に1人が私立中学に通っていることになります。

 このように東京では中学受験は珍しいことではなく、一度リーマンショック後に下降した中学受験熱が再燃しています。

 その背景には大きくふたつの理由が挙げられます。ひとつは、少子化に伴いひとりの子に教育費をかけられること。もうひとつは、センター試験廃止や私立大学の定員厳格化による不安で子どもを大学付属中学に早めに入学させたい親が増えていることです。

 私立中学だけではなく、進学実績を上げている公立中学一貫校への受験をする小学生も増えています。

 しかし、現実を見ると中学受験の準備は低年齢化しており、必ずしも子どもから自発的に受験を希望しているとは言い切れません。親が率先して中学受験への道を作ると「教育虐待」につながる危険性もあるのです。

 今回は、子どもの心を潰さない中学受験との向き合い方を紹介していきます。

「あなたのため」が子どもをつぶす

 都市部での中学受験に向けた塾通いは低年齢化し、小学3年の2月からスタートするのが一般的です。入試問題の難化に対応するためにも、この時期から塾通いを始めるのが理想的だといわれています。

 実際に塾講師として働いていたので分かりますが、少子化のため塾業界も生き残りが激しく、生徒を早い段階で集めるために通う学年が年々下がってきている面も否めません。

 正直、9歳の子どもがひとりで中学受験をする、しないを決めるのは難しく、「仲の良い友達が受けるらしい」という周囲からの影響や、親からの「中学受験した方が将来の選択肢が増える」の言葉で決めることが多いです。

 子ども本人も「親の言うことなら間違いない」と思い、塾通いや家庭学習量を増やしていきますが、子どもの辛さを理解せずに親が一方的にのめり込む恐ろしさもあります。

 テストを受ければ全て数値化して返却されます。思っていたより点数が取れていなければ、子どもに不満をぶつけます。これが教育虐待です。

 教育虐待をする親は周囲から「教育熱心な親」「子どものために教育資金を惜しまない親」と思われ、批判されることはありません。しかし、家庭内で子どもは毎日のように親からの怒りの言葉を浴び、助けも求められずに追い詰められていくケースが少なからずあるのです。

学歴コンプ解消に子どもを使ってはいけない

 自分の学歴コンプレックスを子どもで果たそうとする親は少なくありませんが、これは子どもを潰す代表的な親でもあります。

親の熱意が子供のプレッシャーになることも(画像:写真AC)



 中学受験の成功は、親の手柄にもなり自己満足度も高いです。子どもを自己所有物と勘違いし、「もっと勉強を」「友達と遊んじゃダメ」と無理強いして大切な子どもを潰してしまいます。

 学歴コンプレックスを抱えている親でも、偏差値ではなく学校の雰囲気などで子どもに合う合わないを見ることができる親なら、教育虐待に陥る可能性は低くなります。

 自分のエゴを捨て、あくまで子ども視点で考えることが出来るかどうかが中学受験をする上で大切なポイントです。

親子で文化祭や説明会へ

 偏差値にとらわれて学校選びをする失敗してしまうので、必ず親子で学校に足を運んで、在籍中の生徒、先生の雰囲気を確認しましょう。取り寄せたパンフレットだけで判断すると、子どもが入学後に「こんなはずじゃなかった」とズレが生じることがあります。

 文化祭の一般公開日や、受験生向けの学校見学会を積極的に利用して、より子どもに合う中学校を見つけてください。ここでも、親が通わせたい学校ばかり選ぶと子どももプレッシャーを感じたり、意欲が低下したりするので注意しましょう。

 市販の中学受験ガイドを子どもに渡し、気になる学校のページにふせんを貼ってもらったり、学校名をメモしてもらったりすると子どもの好みの学校が見えてきます。

 もしそれが親の望む学校と違っても「こんな学校なんて認めない!」など頭ごなしに否定するのは絶対にやめましょう。子どもに対して否定的な言葉を口にすると、自分の殻に閉じこもってしまいます。

子どもの体力に合わせた受験勉強を

 周囲の同級生が塾通いを始めたと耳にすると、親は焦ってしまうものです。しかし、塾に通いには体力が必要なので、単に学年で決めたり、周囲に合わせたりするのではなく、子ども本人の体力に合わせて決めるようにしましょう。子どもの体力を奪うと、日常生活にも支障をきたすので気を付けてください。

 塾の往復で時間が取られる、宿題のために睡眠時間を削る、という問題はよく起きます。親が「多少無理させても」と考えていると、遅かれ早かれ子どもは体調を崩してしまいます。

 送迎時間が長くない塾や宿題量が妥当な塾を探すことが、子どものためです。「何が何でも小学3年の2月から塾へ!」と考えるのではなく、中学受験コースを設けている通信教材を利用したり、季節講習会に参加したりするなど段階的に通塾に向けた準備をしていくことも可能です。

 ストレスを抱えて家族が疲弊する受験ではなく、子ども主体に中学受験をしていくようにしましょう。そのためには、まず親のエゴを捨てることが大切です。

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