猫派も納得? 犬の散歩が人間にとって実に「ワンダフル」なワケ
街中で犬を散歩させている人をよく見かけますが、皆さん嬉しそうです。いったいなぜでしょうか。サンポマスターの下関マグロさんが解説します。「犬の散歩の楽しさ」とは何か 住宅街などを歩いていると、犬を散歩させている人たちをよく目にします。高級住宅街を歩けば高級そうな犬に出会い、庶民的な下町を歩けば庶民的な犬に出会うのです。 下町で、通りすがりの人が犬に近づいて話しかけながら触っているのを見るたびに、筆者(下関マグロ)はうらやましいなぁと思っています。 先日、『裁判長! ここは懲役4年でどうすか』などの著書で知られるフリーライターの友人、北尾トロが『犬と歩けばワンダフル』(集英社)という本を出しました。読んでみたところ、犬の散歩について興味深い記述が……。 もともと北尾トロは猫派で、犬にはずっと怖いイメージがあったそうです。その原因は、子供のころ野良犬に追いかけられておしりをかまれたからだといいます。ズボンをかじられた程度なのかもしれませんが、以来、犬に警戒心を抱きながら生きてきたそうです。その警戒心が解けたのは、義母の家で飼われている柴犬「ハナ」の散歩係をやるようになってから。 そういえば、北尾トロがツイッターなどでハナを散歩させている様子を見たことがあります。というわけで、実際にハナを散歩させながら、「犬の散歩の楽しさ」について、北尾トロに聞いてみようと思いました。 北尾トロの義母の家は東京の外れ、東村山市にあります。少し先はもう埼玉県。ハナの散歩を始めたとき、北尾トロは長野県松本市に住んでおり、東京で仕事があるときには義母の家に泊まっていたそうです。しかし連泊することも多く、単に泊めてもらうのも気が引けるので「なにか手伝いを」ということで始めたのがハナの散歩でした。 ハナと一緒に東村山を歩く花とともに東村山を歩く というわけで、ある日の午前中、ハナと北尾トロの散歩に同行させてもらいました。 小さな手提げバッグを持った北尾トロがハナにリードをつけて散歩に出掛けます。義母の家は同じような外観の一戸建てが並んでいる一角にありました。いかにも犬を散歩させている人が多そうな町です。 朝と夕方1日2回の散歩をするハナ。1回あたりの散歩時間は約40分(画像:下関マグロ) ハナが義母の家にやってきたのは今から11年前。義母が連れ合いを亡くしたのがそのきっかけだったといいます。 「義母ももともと猫派で、それまで犬を飼ったことはなかったんだけど、ペットショップで売れ残っていたハナを見つけたんだとか。でもそのときは買うでもなく、そのまま帰ってきたんだけど、しばらくしてもう一度ペットショップに行くとまだ売れ残っていたので、それで飼おうと思ったらしいよ」 と北尾トロ。番犬になればいいし、散歩をさせて運動不足を解消しようということだったようです。 犬も人間も散歩は「情報収集」 前述の『犬と歩けばワンダフル』によれば、5年ほど前からハナの散歩を始めたとあります。最初から楽しかったでしょうか? 「いや、最初は楽しいとは思わなかったよ。犬を運動させればいいんだと思って、自分が好きなコースを歩いていただけだったからね」 それが楽しいと思うようになったのは、どうして? 「犬って散歩しながら情報収集してるんだよ。匂いを嗅いで、他の犬が通ったのを確認して、そこにおしっこしするんだよね、そういうのがわかって、自分のペースではなく、ハナが行きたいほうに歩くようになったら、なんだか楽しくなってきたの」 散歩はハナが先を歩き、北尾トロが後をついていく感じです。歩くコースはいくつかあるのだそうですが、だいたいハナの歩きたい方向へ行くのだとか。早速、ハナは地面をクンクン嗅ぎながら歩き始めます。 11歳になるメスの柴犬「ハナ」。まだ冬毛が残り、もこもこしているのだと北尾トロさんは言う(画像:下関マグロ) 北尾トロは、ハナの排便や排尿などを始末しながら進みます。小さな手提げバッグにはそれらを処理する道具が入っています。 歩いていると、散歩中の他の犬に会いました。軽くあいさつして、犬同士も近づくとハナがほえ始めました。さっとリードを引いて、ハナを下がらせる北尾トロ。この犬にはこの日初めて会ったようでした。 「ハナのほうがビビッてほえたんだと思うよ。犬にとって散歩は情報収集って言ったけど、人間も同じで、顔見知りの飼い主同士で立ち話をして、町の情報を仕入れるのも楽しさのひとつだね」 散歩の終盤には水飲みとおやつ散歩の終盤には水飲みとおやつ 水は、公園の水飲み場までやって来たときに与えるようです。 「最初は自分だけが飲んでいたんだけど、飲みたそうにしていたので、やってみたら飲むんだよ。それで毎回、飲ませるようになったんだよね」 と、自分の手に水を入れてハナに飲ませています。 ハナに水を飲ませる北尾トロさん(画像:下関マグロ) 水を飲ませた後はおやつタイムです。手提げバッグにはおやつも入っているようで、出して食べさせています。ここから家に戻るようです。この日は多めに歩いたそうで、出発から1時間ほど経過していました。 いい話し相手になっているハナ 家に戻っているとき、北尾トロは新しい住宅が並ぶあたりでこんなことを言いました。 「ちょっと前までこのあたりは畑だったんだよ。あっという間に家が建って、売れるのかなと思ったら、あっという間に完売したよ」 こうして家が建てば、以前畑だったなんて想像できないねと筆者が続けると、 「義母の家だって、もともと畑だったらしいよ」 とのこと。そうか、こうしてもともと畑だったところに住宅が建ち、犬が散歩するようになるんだね。 「きょうはキミがいるからやらないけれど、いつもはハナに話しかけるんだよ。例えば、こんなことがあったんだけど、どう思う? みたいにね。もちろんハナが何かしゃべるわけではないんだけど、そうやってちょっとした愚痴なんか聞いてもらうことで癒やされているわけよ」 と、北尾トロがポツリ。 ハナと北尾トロさん(画像:下関マグロ) 筆者は、あーなるほどねと返します。 「ほら、動物ってさ、セラピー効果があるって言うじゃない」 そうか、仕事なんかで嫌なことがあったら、犬を散歩しながら犬に話してみればいいんだ。人間と違ってなんでも話せそうですし。 犬を散歩させている人にはさまざまな理由があると思いますが、北尾トロの場合はどうやら自分が癒やされるためだったようです。皆さんは犬の散歩、好きですか?
- おでかけ
- 東京