ドイツ人流の時間節約術、それを支えるカギは「冷たい食事」だった

東京暮らしで、日々時間に追われている女性は多いのではないでしょうか。日本人と共通点が多いといわれるドイツ人流の時間の節約方法を、東京理科大学教授でドイツ文学者の今村武さんに聞きました。


ドイツの人たちの簡単に食事を済ます習慣「カルテス・エッセン」

 仕事に、家事に、育児。東京暮らしで、日々時間に追われているという女性は、少なくないことでしょう。時間の節約の仕方は人それぞれですが、海外の人たちはどのように時間を節約しているのでしょうか。日本人と共通点が多いといわれるドイツ人の興味深い時間の節約法を、東京理科大学教授でドイツ文学者の今村武さんに聞きました。

「カルテス・エッセン」のイメージ(画像:写真AC)



 今村教授に話を聞いたのは、その著書『食事作りに手間暇をかけないドイツ人、手料理神話にこだわり続ける日本人』(ダイヤモンド社)を目にしたのがきっかけでした。

 記者は元国際線CAで、外国籍の友人が少なからずいますが、北や中央ヨーロッパ出身の人たちの家庭での夕食が質素であることを感じていました。パンとスープだけということも珍しくなく、「北欧は税金が高いから、生活が苦しいのだろうか」と勝手に心配していたものです。

 ドイツ人は概して食生活が質素であると、同国での長期留学やホームステイ経験のある今村教授も指摘します。その理由のひとつに「料理に時間をかけないため」であることを挙げます。

 日本でも近年、「時短」「作りおき」「簡単」をテーマとする料理本が多く出版されていて、料理に時間をかけないように工夫している人たちが数多くいます。しかしそれを「手抜き」と受け取られて残念な思いをした女性もいるのではないでしょうか。

 ドイツの人たちの家庭での食習慣に「カルテス・エッセン」というものがあります。ドイツ語で「冷たい食事」という意味です。夕食を指す場合が多く、「これがドイツの人たちのゆったりとした、豊かな時間を生み出す要素になっているのです」と今村教授はいいます。

 カルテス・エッセンの一般的な内容は、パンとバター、そしてサラダ。それにプラスしてハムやチーズがあることも。買ってきてそのまま皿に盛りつけ、調理の必要がないため、時間がかかりません。使うお皿の量も少なく、食洗機の普及率が高いため、片付けも素早くできます。

 買い物や献立を考えるのに時間を要することもありません。そのため、食後は家族そろって団欒の時間をゆったりと過ごせるというわけです。ちなみに、欧米人は食材をまとめ買いしておくのが一般的で、日本人のように鮮度にこだわってこまめにスーパーに行かない文化があります。

ゆったりと時間を過ごすことを大事にするドイツの人たち

 今村教授が「カルテス・エッセン」を好む理由をドイツ人の人たちに尋ねたところ、以下の回答が多かったそうです。

・夕食に温かいもの、ボリュームのあるものを食べるのは、胃に負担がかかる
・料理にあまり手間をかけたくない、ほかのことに貴重な時間を費やしたい
・キッチンが汚れるのが嫌

ドイツはパンの種類が豊富。写真はイメージ(画像:写真AC)



 ドイツには、「朝は皇帝のように、昼は王のように、夜は貧者のように食べなさい」ということわざがあり、夜は軽く済ませた方がいいという、健康に関わる古くからの教えがあります。

「3食全て冷たく、簡素な食事をしているわけではなく、昼に肉料理などボリュームたっぷりの温かいものを食べます」(今村教授)

 ドイツの学校の授業は基本的に午前中だけで、子どもたちは昼食を食べずに下校するため、両親のどちらかが昼に家に戻ってきて温かな昼食を用意することも多いそうです。

 毎晩パンにサラダ、と似通ったものを食べていて、よく飽きないものだと思う人も多いことでしょう。今村教授曰く、ドイツの人たちは比較的気に入ったものを繰り返し食べる傾向があるそうです。

 さらには、パンもチーズもソーセージも実に多彩で、パンにおいては世界一種類が豊富と言われているほど。その組み合わせを変えて異なる味わいを楽しめるのも、飽きがこないことに関わるそうです。

 また、ドイツ人がゆったりと時間を過ごすことを好む人たちであるというのは、記者もよく感じるところです。日本人は旅行へ行くと、ひとつでも多くの文化遺産や観光地を巡ろうとする人が多いですが、ドイツの人たちは異なります。

 1日観光に費やしたら、次の日は緑豊かなガーデンでゆっくりと読書を楽しむ、という過ごし方をする人たちによく出会いました。庭で本を読むなら、何も外国に来てやらなくてもいいのでは、と思ったりもしましたが、彼らにとって環境を変えてゆったりと過ごすこともまた旅の楽しみのひとつなのです。

「ドイツの人たちは自然をこよなく愛し、緑溢れた森林や草原に出かけ、おしゃべりを楽しむのが一般的休日の過ごし方です。そういった時間的ゆとりを共働き家庭にもたらすのがドイツ流食卓術なのです」(今村教授)

家事分担していない国の1位は日本

 日本では、冷たい食事より温かい食事の方が体に良い、生野菜は身体が冷えるので温野菜や煮野菜の方が身体に良い、といった説もあります。野菜嫌いの子どもも多く、いかに野菜を子どもに食べさせるか四苦八苦しているお母さんも多いことでしょう。

自然豊かなドイツの風景(画像:写真AC)



 文化の違いからドイツのように「カルテス・エッセン」を毎日実行するのは難しい面もありますが、「ひとつのアイデアとして、生活に取り入れてみるのも良いのではないでしょうか」と今村教授。その著書のなかに、ガス器具メーカーのリンナイの調査で家事分担していない国の第1位が日本であることが書かれていました。

 食事、洗濯、掃除、育児においてまだまだ妻が負担することの多い日本。毎日ではなく週何日かでも「カルテス・エッセン」を実践してみるのも良いかもしれません。


ドイツの食習慣「カルテス・エッセン」(5枚)

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