牛丼大手「すき家」が、なぜかいきなり「カーネーション」を売り始めたワケ
牛丼とカーネーション、どんな関係が 日本を代表する牛丼チェーンといえば、「吉野家」「松屋」「すき家」の御三家。安さ自慢の牛丼なら味もサービスも似たり寄ったり……と思いきや、それぞれに個性があり、客層も異なるので面白いです。 中でも全国1934店(2020年3月末時点)と店舗数で他の2社を圧倒するのが、ゼンショーホールディングス(港区港南)が展開する「すき家」。このすき家が2020年5月8日(金)から10日(日)までの3日間、東京をはじめ全国の店舗で「カーネーション」の花を販売するといいます。 全国1934店舗を展開する「すき家」がカーネーションを売る理由とは?(画像:ゼンショーホールディングス) 牛丼店とカーネーション、あまり関係のなさそうな両者ですが、販売開始にはどのような理由があるのでしょうか。 新型コロナ禍の生花生産者を応援したい ゼンショーホールディングス広報室の森みず葵(みずき)さんによると、背景にあるのはやはり新型コロナウイルス感染拡大の影響。 すき家も、店内で座れる席の数を減らしたり、イートインは朝5時から夜20時まで、それ以外の時間帯はテイクアウトだけにしたりと、いろいろの対応に追われているといいます。 そうしたなか展開する、今回の「カーネーション販売」。これは来る5月10日の「母の日」に合わせた企画です。 すき家で販売するカーネーションは、赤色とピンク色(画像:写真AC) 森さんいわく、「母の日関連のイベントが中止になったり、街のフラワーショップが休業したりしたことで、行き場をなくし廃棄の危機にあるカーネーションが大量にあります。それらを少しでも消費者のお手元に届けたいと、今回の実施を決断しました」。 外出自粛によって家族で過ごす時間が増えるなか、「大切に育てられたカーネーションを贈って日頃の感謝を伝えてほしい」と森さん。販売店舗は全国の約700店。各店100本限定で用意するとのことです。 苦境に立つ生花生産者への支援と「母の日」という季節催事をうまく抱き合わせたこの企画ですが、これを展開するのが吉野家でも松屋でもなく「すき家」であった理由も気になるところ。 そこには、同店ならではの強みが大きく関係しているようでした。 吉野家でも松屋でもなく、なぜすき家か吉野家でも松屋でもなく、なぜすき家か すき家ウェブサイトを閲覧すると、同店の強みとして言及されているのが「ファミリーやグループのお客さまにも気軽にご利用いただけるよう、テーブル席を設置」しているという点。 「吉野家はサラリーマンや独身男性をメインターゲットとし、都心の駅前やビジネス街に立地していることが多い。一方、すき家は郊外ロードサイドが多く、そういった立地ではファミリー層をメインターゲットとしている」(「プレジデントオンライン」2019年8月27日配信記事)。 この記事が指摘するように、すき家は創業までさかのぼれば吉野家や松屋に比べて後発ですが、「サラ飯」の代表格・牛丼のファンをファミリー層へと拡大したという“実績”がその後の強みにもつながっていることが分かります。 江戸川区東小岩にある、すき家柴又街道小岩店。ドライブスルー設備を備えた店舗は都心にも(画像:(C)Google) そうした経営戦略を鑑みれば、今回の「カーネーション販売」も納得がいくでしょう。 普段から家族で慣れ親しんでいた利用客らが、外出自粛の今、自宅でもその味を楽しもうかとテイクアウトのために立ち寄り、「そうか、次の日曜日は母の日だったのか」と思い出して、ささやかな手みやげとして1本、カーネーションもついでに買っていく――。 一見、関係の薄そうな牛丼とカーネーションは、「家族」というキーワードでひとつにつながっていました。 誰にも買いやすいよう、1本100円で販売 逆にカーネーションを買うついでに牛丼もテイクアウトしていくという利用客が集まれば、新型コロナの影響で客足が鈍るすき家側にとっても、売り上げ面でいくばくかのメリットはあるでしょう。 しかしどちらかといえば、やはり社会貢献と企業ブランディングの意味合いが強そうです。 店頭販売するカーネーションは1本100円(税込み)。「一般的な市場価格より抑えられているのではないでしょうか」と森さん。若い学生がひとりで訪れることもある同店、「誰でも手に取りやすくしたかった」と、値段設定の理由を説明します。 2020年の「母の日」は、いつも以上に家族で過ごす意味を感じられるかもしれない(画像:写真AC) もし、駅前のフラワーショップが休業していたら、2020年は「牛丼店」でカーネーションを買って帰るというのも面白いかもしれません。 家族の時間が増えた今、あらためて母の日を皆でお祝いすることは、なるほど例年以上に意味のあることのように思えます。
- ライフ