東京1日トリップは人気漫画に学べ! 『1日外出録ハンチョウ』が魅せる、粋な食べ方・遊び方
街やエリアごとに個性それぞれ、見どころいろいろ。とてもじゃないけど1日では楽しみ切れない「東京」を、あえて1日で満喫するとしたら? そんな迷いのヒントになりそうな漫画が『1日外出録ハンチョウ』。見どころ多過ぎな東京を短時間で満喫『1日外出録ハンチョウ』(講談社)とは、人気漫画『賭博破戒録カイジ』に登場する名脇役・大槻ことハンチョウを主人公にしたスピンオフ漫画です。 原作を萩原天晴氏が、漫画を上原求氏と新井和也氏が担当しており、“協力”という立場で「カイジ」の作者である福本伸行氏が関わっています。 「ハンチョウ」の作画や独特な言葉遣いは「カイジ」作品に酷似しており、まるで福本伸行氏がひとりで描いているようにすら感じます。しかし、描かれる内容は「カイジ」と大きく異なります。 「カイジ」の魅力は、命や大金を賭けた手に汗握る戦いでしょう。一方「ハンチョウ」は、平凡な1日をハンチョウ自身がいかに楽しむかを描く日常系の漫画なのです。 2017年発売『1日外出録ハンチョウ(1)』(画像:講談社) ハンチョウは地下労働施設という場所で、まるで奴隷のように働かされている中年の男性です。 そんなハンチョウの心の支えは「1日外出券」。1日外出券とは、労働施設で一定期間働き対価を支払った者にだけ与えられる、24時間だけ好きなように外出できる権利です。 ハンチョウは「カイジ」の中ではずる賢い敵キャラでしたが、「ハンチョウ」では外出を心から楽しむ少年のように描かれています。私たちにとっては日常とも思えるちょっとした外出が、ハンチョウにとっては待ちに待った特別な日なのです。 ハンチョウが1日外出券で向かう街のほとんどは東京です。新橋や銀座などの街を満喫するハンチョウを見ていると、自分も一緒に外出しているような気分になれます。 今回は、ハンチョウが1日外出券を利用した際に取った行動と、そのときに訪れた東京の街を紹介します。ハンチョウの行動とともに東京の街を知れば、東京の新たな魅力を発見できるかもしれません。 「1日外出録ハンチョウ」の魅力「1日外出録ハンチョウ」の魅力『1日外出録ハンチョウ』の魅力は、思わず笑ってしまうようなユニークな表現と、見ているだけでお腹が空いてしまう食事シーンでしょう。ハンチョウの外食先の選び方や、料理を自分好みにアレンジする様子に感化された読者も多いのではないでしょうか。 またストーリーは基本的に1話完結型のオムニバス。1日の外出は、実在するひとつの街の中で行われます。「ハンチョウ」は街の楽しみ方を教えてくれる漫画でもあるのです。 平日昼間、新橋でビールをゴクゴク! 記念すべき第1話、ハンチョウの1回目の外出先として描かれた街は、サラリーマンであふれ返る平日の新橋でした。 ハンチョウは、「サラリーマンの聖地」と呼ばれる新橋へ(画像:写真AC) 悠々と向かった先は立ち食いそば店で、お昼どきということもあり店内はせわしなくそばをすするサラリーマンで繁盛していました。 そこに現れたハンチョウ。立ち食いではなくあえてテーブル席を選び、まずは揚げ物などの単品をいくつも注文して優雅なランチをスタートさせます。 極めつけには生ビールを注文。周りの会社員男性(サラリーマン)たちが飲酒できない状況を楽しむかのように、ハンチョウは大ジョッキをお代わりまでするのです。 これだけではハンチョウはただの働いていない体たらくな中年男性のように見えますが、実はひとつのトリックがあります。 立ち食いそば店に入店する前に、わざわざスーツを購入して着用していたのです。これによりハンチョウは、まるで会社の重役がその特権を利用して昼間から好き放題ビールを飲んでいるかのように見せかけました。 周りのサラリーマンたちのうらましそうな表情をお供に、ハンチョウはビールを楽しむのでした。 サラリーマンの聖地でサラリーマンの聖地で『1日外出録ハンチョウ』でサラリーマンの街として描かれる新橋。なぜ、新橋は「サラリーマンの聖地」と呼ばれるのでしょうか。テレビ番組で目にする会社員たちへの街頭インタビューはたいてい新橋駅前で行われていて、見たことがあるという視聴者も多いはず。 その最たる理由は、アクセスの良さゆえだと考えられます。 JR東日本だけを見ても新橋は、京浜東北線・根岸線、東海道本線、山手線、横須賀線・総武線快速・成田線――といった主要路線の停車駅です。 京浜東北線は埼玉・大宮から神奈川・大船までをつなぐので、新橋まで埼玉や神奈川でも1本で行けます。 東海道本線なら小田原や熱海を停車駅に擁するので、神奈川の西南部や静岡までも直通で行かれます。 神奈川、千葉、埼玉をつなぐ便利な新橋駅(画像:写真AC) さらに横須賀線・総武線快速の乗り入れを活用すれば、千葉県からも1本で移動できます。もちろん、山手線を利用すれば都内どこへでもスムーズにアクセス可能です。 「ハンチョウ」第1話では昼の新橋が描かれましたが、この街がさらなる本領を発揮するのはやはり夜。 銀座や汐留からもほど近く、おしゃれなレストランがあるかと思えば、昔懐かしい赤ちょうちんのともる居酒屋もまだまだ現役。たった1日の外出では回り切れない誘惑がただよいます。 これほどたくさんの選択肢がある中で、あえて立ち食いそば店での昼からビールを選んだハンチョウの心中を探るためにも、昼・夜どちらも訪ねてみたくなる街です。 銀座のアンテナショップを堪能!銀座のアンテナショップを堪能! また別の1日外出でハンチョウが向かった先は銀座でした。この街で堪能するのは、百貨店内の高級レストランか、ミシュランガイド星付きの寿司店か……。と思いきや、全国各地のアンテナショップを堪能するのでした。 大分県のアンテナショップでは足湯に浸かっています。このお店は実在する「おおいたアンテナショップ 温泉座」がモデルだと言われています。 「おおいたアンテナショップ温泉座」、2018年撮影(画像:SARABiO温泉微生物研究所) 東京交通会館(千代田区有楽町)の地下1階に構える実際の店舗は、無料で足湯を利用できると評判。ビニールソックスまで用意されているため、靴下やストッキングをはいたままでも入れるのがポイントです。 ご存じの通り銀座や有楽町の周辺には、大分県以外にも各道府県のアンテナショップが集中的に出店しています。 これは東京・八重洲にかつて、都内における地方観光のプロモーション拠点であった国際観光会館があったため、現在は取り壊されて、跡地には超高層ビル・グラントウキョウノースタワー(千代田区丸の内)が建っています。 たった1日しか時間が無くても、各地のアンテナショップを回ればちょっとした国内旅行を楽しんだ気持ちになれるかも――? ハンチョウに教えられることは実にさまざまです。 ハンチョウに学ぶ東京の楽しみ方 とにかく独自の視点で東京の外出を楽しみ尽くすハンチョウ。私たちが見落としているだけで、実は東京には何気ない路地ひとつ取っても深い魅力があるということを、ハンチョウは教えてくれるのです。 今まで行ったことのないエリアはもちろん、何度も訪れたことのある街でも、少し視線を変えるだけで、新たな発見と感動があるのかもしれません。 もしあなたが「1日外出券」を手に入れたら、どんな街をどんなふうに巡りますか?
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