歩くだけで息が切れる? 板橋区の「超でこぼこ地形」を走破してみた【連載】分け入っても低い山(4)
ビルばかりが立ち並ぶ東京23区にも、実はいくつも山があるのをご存じでしょうか。ただし高さが「低い」という条件付きですが……。というわけで、低山評論家の二上山小鹿さんがあなたをゆる~くナビゲートします。「板橋アルプス」を縦走 都心の山を歩く「都市登山」。そんな都市登山に慣れた、脚力に自信のある人なら、ぜひ試してほしいのが都心にある山の縦走です。縦走とは山の尾根伝いにいくつかの山頂を通って歩くことです。 そんななか今回目指したのは、板橋区の諏訪神社富士塚(下赤塚富士、板橋区大門5)から東武東上線の東武練馬駅方面。このルートは、板橋区の起伏を存分に楽しむことができるルートなのです。 今回の移動中の風景(画像:二上山小鹿) 登山前にインターネットでルートを確認していたら、この山々の連なりを「板橋アルプス」と表現している人がいました。とてもキャッチーですので、ぜひ普及してほしい言葉だと思いました。 ここで筆者からひとつアドバイスがあります。今回の縦走、もし脚力に自信がない場合は楽な方法を探しましょう。このエリアは路線バスも多いですが、より便利なのはシェアサイクルです。板橋区では2019年からシェアサイクルを導入。自転車は電動のため、辛くなったら自転車を借り、そしてまた返却して歩くということもできます。 断崖、堀、湿地帯に囲まれていたエリア まずは、諏訪神社富士塚から威容を誇る森で知られる赤塚公園の方向へ。公園は断崖の険しさを備え、元々は赤塚城と呼ばれた城跡もあります。 赤塚城は室町時代の武将・千葉自胤(よりたね)によって築かれた城で、武蔵野台地の段丘の端にあります。現在は憩いの場になっている板橋区立郷土資料館(赤塚5)前の池は元々、城の内堀でした。 断崖と堀、そして北は湿地帯という要害(攻防上で重要な地点)は、荒川の水運や鎌倉道の陸運を抑える絶好の立地だといわれています。 赤塚城跡周辺の地形(画像:国土地理院) しかし戦国時代を通じて戦乱の舞台になることはなく、豊臣秀吉の小田原征伐によって千葉氏は所領を没収されて滅亡したため、赤塚城は廃城となりました。 そうした経緯もあってか、城の遺構の保存状態は良好で、城好きに知られる名所でもあります。 起伏に富んだ自然美を楽しめる起伏に富んだ自然美を楽しめる スタート地点である下赤塚富士塚から歩き始めたら、まずは赤塚公園に立ち寄って断崖絶壁を上から眺めましょう。そこから先のルートは自由です。ただ、なるべく車通りの多い幹線ではなく、細い道を選んで歩きましょう。 というのも、周囲の家々の間には階段で上るような道が突然現れたり、切通(山や丘を切り開いて通した道路)があったりと、変化に富む地形が見られるからです。そうした道をうろうろしつつ、城跡の東側を走る東京大仏通りへ至ると道は平たんになります。 東京大仏通り(画像:(C)Google) 坂があったり台地が広がったりしている光景は、起伏に富んだ自然美を感じさせてくれます。 今回の登山ではあちこちの道に迷い込みながら歩いてみましたが、東京大仏通りから、南に続く赤塚中央通りへと連なる幹線が尾根の平たんなところを進んでいるのに対して、周囲の住宅地の道路は起伏が多い印象です。そんな道の様子の違いも観察していると楽しいでしょう。 起伏の多い小道もよいですが、幹線沿いはロードサイド風味の店舗も続いていて、23区にもかかわらず郊外の雰囲気があります。 正直なところ、駅からも離れたこのエリアは東京人でも用がなければ足を踏み入れないでしょう。池袋の影響が強く、まだ都心という雰囲気がある板橋区役所駅や大山駅周辺に対して、このエリアは空も広く、密を避けて安心して歩けます。 東武練馬駅周辺もでこぼこ地形東武練馬駅周辺もでこぼこ地形 そんな道を歩くこと1時間。 縦走路はやがて、目的地の東武練馬駅前へと至ります。この駅と周辺もまた、起伏に富んだ地形を観察できるスポットです。駅前のイオン板橋ショッピングセンター(徳丸)の周辺は急坂になっています。 イオン板橋ショッピングセンター周辺の様子(画像:二上山小鹿) また駅前も平たんかと思えば、駅の隣の居酒屋などが入るビルは2階から入るような設計。そして駅そのものもホームの池袋寄りは道路が下を走っていて、起伏に富んだ地形につくられた駅であることがわかります。 今回の登山ではここを終点にしましたが、健脚であればまだまだ道は続きます。東武練馬駅を越えて進めば、練馬区の北町浅間神社(下練馬富士、練馬区北町)に登山することもできます。 また、東武練馬駅方面へ向かわずに東へ進めば、これまた都市登山の興味をそそる、どんぐり山公園(板橋区中台)という名前の公園があります。ここも、断崖絶壁がそそる光景ですのでおすすめです。 地形や地域の歴史をまとめて楽しめる都市登山。そのロングルートとして板橋縦走はおすすめです。
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