今月28日から開催、今さら聞けない「東京国際映画祭」に参加すべき9つの理由
2019年で32回目を迎えるアジア最大級の映画祭「東京国際映画祭」の魅力について、ライターで編集者の冨田格さんが解説します。あまり知られていないその魅力 2019年10月28日(月)に「TOHOシネマズ六本木ヒルズ」(六本木6)をメイン会場として開幕する「東京国際映画祭」は1985(昭和60)年に始まったアジア最大級の映画祭で、2019年で32回目を迎えます(第3回までは隔年開催)。 映画祭のイメージ(画像:写真AC) その長い歴史や規模の大きさのわりに、東京で暮らす人たちにとって身近な存在とは言い難いのが正直なところ。「毎年必ず参加する」という常連が一定数いる一方、その存在すら知らないという人も決して少なくないでしょう。 30年以上も続く毎年恒例のイベントとなると、開会式やレッドカーペットの模様がニュースやワイドショーで流れるくらいで、マスコミが大きく取り上げることもありません。映画祭に何度か参加している僕でも特に意識を向けないと「いつの間にか終わってしまった」という感じで過ぎてしまう年も珍しくありません。むしろカンヌやベルリン、なんならトロントや釜山など海外の映画祭の情報の方が入手しやすい状況はいかがなものだろう、と思っていました。 東京国際映画祭といえば、2019年のラインナップ発表記者会見で特別招待作品「男はつらいよ お帰り 寅さん」の山田洋次監督に、「ここが東京映画祭なんだという特徴というかフィロソフィー(哲学)を持ってほしいな、早くそこにたどり着いて発見してほしいなという思いを抱きながら参加したいと思います」と皮肉られたことが報道され、映画関係者から評価が低いというイメージが強調されてしまいました。 山田監督のように、世界各国の有名映画祭を経験した映画関係者は物足りなさを感じるのかもしれません。しかし一映画ファンとして参加し、楽しんだ経験のある者としては、ここでしか得られない楽しさがあると感じます。 毎年の「秋の恒例行事」と意識しないのはあまりに勿体ない東京国際映画祭の魅力を今回、ご紹介していきます。 映画祭じゃないと体験できない3つの魅力とは?映画祭じゃないと体験できない3つの魅力とは? 東京では毎年様々な映画祭が開催されています。とはいえ、「映画祭なんて行ったことがない」という人も多いでしょうから、まずはどの映画祭にも共通する「映画祭ならではの楽しみ」から。 六本木ヒルズの外観(画像:写真AC)1.映画好きが集まって観る空間の居心地の良さ 毎日上映される封切り作品と違い、ひとつの作品が映画祭で上映される回数は1回~3回くらいと非常に少ないです。つまり事前に予定を確認し、時間を合わせてわざわざ見にくる観客がほとんどということ。そういった「映画愛」が強い人たちは、集中して作品と向き合うので独特の雰囲気が醸成されます。映画上映後に拍手が起こることが多いのは、「映画愛」ゆえのことでしょう。 2.「ここでしか見られない」「二度とスクリーンで見る機会のない」作品に出会える 映画祭で上映される作品の中には、日本で劇場公開されたり、DVDや配信などでは見る機会のない作品も少なくありません。つまり、映画祭で見なければ一生見る機会がない可能性もあるということです。世界中でヒットするような作品以外にも、素晴らしい映画はたくさんあります。何より大切なのは、世間の評価ではなく、その映画があなたの心にフィットすること。有名ではないけれど、自分にとって大切な一本の映画に出会えるかもしれない、そんな期待も映画祭ならではの楽しみです。 3.上映後の監督など関係者が登壇してのトークイベントで直接質問できる 映画祭では、上映後に監督やプロデューサーなど作品関係者が登壇してトークショー(ティーチイン)が開催されることも珍しくありません。その作品のテーマや、撮影中の裏話などのトークの後には、必ずと言っていいほど観客との質疑応答の時間が設けられています。今見た映画について疑問に思ったことを、監督やプロデューサーに直接質問できる機会なんて、まずありえないこと。これも映画祭の大きな魅力です。 東京国際映画祭でしか味わえない3つの楽しみ東京国際映画祭でしか味わえない3つの楽しみ 映画祭じゃないと体験できない魅力に加えて、アジア最大級と称される「東京国際映画祭」は、ここでしか味わえない楽しみがたくさんあります。中でも注目のポイントを3つご紹介しましょう。 1.レッドカーペットに有名映画人が登場する 毎年、マスコミの報道がもっとも集まるのが映画祭の開幕を飾るレッドカーペット。六本木ヒルズのけやき坂にレッドカーペットが敷かれ、そこを映画祭に参加する監督・プロデューサー・俳優などが六本木アリーナに向けて歩いていきます。東京国際映画祭でもっとも華やかな瞬間です。六本木ヒルズアリーナには、例年当日配布の整理券で入ることができるため、世界の有名監督や役者たちを近距離で見られます。 2.アジア映画の「今」を実感出来る 香港、中国、韓国、台湾に続き、近年はインド、タイ、マレーシア、ベトナム映画なども日本で公開される作品が増えていますが、東京国際映画祭が始まった1985(昭和60)年当時は、香港映画以外のアジア映画が劇場公開される機会はとても少なかったのです。東京国際映画祭は第一回からアジアにこだわり、アジア各国の秀作を上映する企画を続けてきました。アジア各国の作品を日本に紹介し続けてきたという意味でも、近年のアジア映画ムーブメントを作り上げたことに大きな影響を与えたと言えます。 3.規模が大きい映画祭ならではの企画が多い 小規模の映画祭の場合、ひとつの会場で2~3日の会期中に10数本の作品を上映するというパターンが多いのですが、東京国際映画祭は桁違いに規模が大きく上映作本数も膨大です。2019年の東京国際映画祭の上映作品は、150本を超えています。公開前の新作から世界各国の秀作、国内外のクラシックムービー、アニメーションなど各企画部門別に多様な作品が上映されます。 東京国際映画祭ビギナーが気軽に楽しむ3つのコツ東京国際映画祭ビギナーが気軽に楽しむ3つのコツ 東京国際映画祭を「なんとなく過ぎてしまう」存在にしておくのはもったいない、と考えている理由をご理解いただけましたでしょうか? とはいえ、初めて参加するのは結構心理的なハードルが高いため、ビギナーが気軽に楽しめるコツを伝授します。 東京ミッドタウン日比谷の外観(画像:写真AC)1.雰囲気を味わうつもりで、ひとつのプログラムに参加してみる 「まずは映画祭の雰囲気を味わいたい」という人には、カジュアルな気持ちで1本だけ選んで参加することをお勧めします。映画祭ならではの雰囲気を実感してみることから始めてはいかがでしょうか。その雰囲気を楽しいと感じられたら、2020年からはワクワクしながら映画祭の情報を待ちわびるようになるでしょう。 2.華やかさ・ファンの濃度・楽しみたい雰囲気に合わせて作品選択 「東京国際映画祭に少し興味を持ってきた」という人には、複数の企画上映から2~3作品を選んで参加することをお勧めします。映画祭らしい華やかな作品を観たいなら、劇場公開が控えている新作が上映されるプログラム「特別招待作品」。上映後に行われる監督登壇のティーチインを体験したいなら「コンペティション」「ワールドフォーカス」「アジアの未来」「日本映画スプラッシュ」などを。なかなか見る機会のない古典に触れたいなら、「日本映画クラシックス」「アメリカ議会図書館 映画コレクション」も用意されています。 3.まずは無料プログラムに参加するのもあり 「もっと気軽に映画祭に参加したい」という人には、東京ミッドタウン日比谷(千代田区有楽町)の日比谷ステップ広場で開催される「東京国際映画祭×11月3日はビデオの日 屋外上映会2019」をお勧めします。「この世界の片隅に」「ラ・ラ・ランド」「スパイダーマン:ファーフロムホーム」「ボヘミアン・ラプソディ」「トイ・ストーリー」など近年のヒット作や、名作ウェスタン映画が野外上映されます。入場無料なので事前にチケットをおさえる必要がないため、「時間がたまたま空いたから」という気軽な気持ちで訪ねてみることもできます。 「第32回東京国際映画祭2019」は、10月28日(月)から11月5日(火)までの8日間の開催です。たくさんの上映作品の中から、あなたにフィットする1本をぜひ見つけ出してください。
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