「トイレの花子さん」が消える? 公立学校で進むトイレ洋式化、いったいなぜなのか
昨今、公立学校のトイレの洋式化が進んでいます。その背景にはいったい何があるのでしょうか。エデュケーショナルライターの日野京子さんが解説します。学校の怪談でなくてはならない和式トイレ 怪談は日本の「夏の風物詩」です。昭和・平成初期は心霊現象や霊能力者の登場する番組が数多く放送されていました。 霊能力者とタレントが闇に包まれる心霊スポットに出掛け、タレントが絶叫して逃げる――そんな光景に、視聴者、特に子どもはえたいのしれないものへの恐怖を感じていました。そんな記憶が残ってる人も少なくないことでしょう。 宜保愛子(1932~2003年)はそのような番組から生まれたスターで、「心霊番組 = 宜保愛子」というイメージが定着しました。 現在、地上波の心霊番組はめっきり減りました。一方、YouTubeなどの動画サイトでは知名度のあるタレントが怪談や心霊に特化したチャンネルを作っており、人気を集めています。 和式トイレ(画像:写真AC) さて、そんな怪談のなかでもメジャーなのが「学校の怪談」です。 小学校や中学校には各校独自の七不思議があり、全てを知ると呪(のろ)われるというのがお決まりのパターン。そのなかでも特に知名度の高いのが、学校のトイレに出るとされる「トイレの花子さん」さんです。 そんなトイレの花子さんが出るのはもっぱら和式トイレ。洋式トイレに比べて和式トイレには怪談に合う独特の怖さがあります。 都内公立学校の洋式化率は全国2位都内公立学校の洋式化率は全国2位 さて、実際の東京都内の公立学校では残念ながら(?)トイレの洋式化が進んでいます。 洋式トイレ(画像:写真AC) 文部科学省が2020年9月30日に発表した「公立学校施設のトイレの状況について」によると、東京都の公立学校の洋式化は全国2位の71.1%でした(2020年9月1日現在)。なお全国で60%を超えているのは、 ・北海道:63.5% ・茨城県:66.6% ・栃木県:61.4% ・千葉県:60.6% ・神奈川県:70.5% ・富山県:79.3% ・山梨県:63.9% ・兵庫県:60.9% ・沖縄県:68.4% となっています。全国1位は富山県で、79.3%と断トツです。 洋式トイレの普及率が今後も上昇するワケ 東京都は全国2位といっても各自治体内での差は大きく、荒川区では99.4%と、ほぼ洋式化を達成している一方、小金井市は38.4%にとどまっています。全国平均が57%ということを考えると、東京都内の一部の自治体ではまだまだトイレの洋式化が進んでいない実情が浮き彫りになりました。 東京都の洋式トイレの普及率は高く、今後さらに上昇する可能性があります。なぜなら、和式だと子どもがトイレを我慢したり、数少ない洋式トイレに集中したりという問題点があるからです。 老朽校舎のイメージ(画像:写真AC) また和式トイレは、新型コロナウイルスやノロウィルスなどの感染予防の観点からも課題を抱えています。そのため普及率が低い自治体ではこうした問題を解決する必要があり、今後も洋式化が進むと予想されます。 トイレの花子さんにとっては歓迎すべき状況ではありませんが、学校のトイレは清潔感のある進化を遂げています。 トイレの変貌で学校の七不思議も変わるかトイレの変貌で学校の七不思議も変わるか 暗さや独特の臭いなど、トイレは元々ある種「異空間」のような場所です。 それゆえ、子どもに恐怖心を与え、想像が膨らむような怪談が生まれてきました。 「学校の怪談」のイメージ(画像:写真AC) 怪談界のアイドルであるトイレの花子さんも、洋式化が進む現在、ずいぶんと居心地が悪いでしょう。 時代の変化によって学校の施設は様変わりしますが、子どもの想像力で、これまでとは異なる怪談が令和時代に誕生するのも面白いかもしれません。
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