赤坂御所、迎賓館、映画の聖地。今最もホットな四ッ谷・赤坂を歩く 地形の謎にも驚いた!
天皇陛下の住む赤坂御用地や、トランプ大統領との首脳会談が行われた迎賓館など、注目を集める赤坂界隈。実は、赤坂御所と秋篠宮邸の間は「谷」で隔たれていることを知っていますか? 地形散歩ライターの内田宗治さんが解説します。赤坂御用地の中はどんな地形? 都内で今、最もホットな場所が四ッ谷、赤坂界隈ではないでしょうか。新天皇の住む赤坂御用地と、トランプ大統領との首脳会談が行われた迎賓館の敷地が広がっているからです。 赤坂御用地に隣接する迎賓館本館と主庭。国賓を接待する本館内部も見学できる(2019年5月、内田宗治撮影) 赤坂御用地は東西約1キロ、南北約600メートルあり、皇居の半分近くの広さがあります。 赤坂御用地内の北端近くにあるのが、天皇陛下とご家族が以前から暮らす「赤坂御所」。即位にともない東宮御所から赤坂御所へと名称が変わりました。皇居の「吹上仙洞御所」(譲位した天皇の御所)の整備が完了するまで当面の間、赤坂御所に住まわれるそうです。 赤坂御用地には秋篠宮邸もあります。こちらは敷地内の南東の端近くにあり、赤坂御所とは対角線のほぼ反対側どうしの位置関係です。 JR中央線「信濃町駅」は新宿寄りの方に改札口がひとつあるだけですが、仮に四ッ谷寄りにもうひとつ改札口があるとしましょう。まったく想像上のことですが、天皇陛下は信濃町駅で電車を降りて、その改札口を出て明治記念館の中を通り抜ければ、駅から徒歩5分ほどでご自宅の赤坂御所玄関にたどり着けてしまいます。 同様に秋篠宮邸は、東京メトロ赤坂見附駅から徒歩8分。おふたりの邸宅は、直線距離で約500メートル離れていて、地図で見る限り赤坂御用地内は迷路のように曲がりくねった細い道が多いので、実際に歩けば15分近くかかりそうです。 なぜこうなるかというと、おふたりの邸宅の間に旧赤坂川の谷があるためです。 赤坂川の支流も含めた谷をはさんで天皇陛下の住まい(赤坂御所)は北側の丘の上、秋篠宮の住まいは南側の丘の上。いずれも丘の上の好立地の場所なわけです。なお南側の丘には、三笠宮邸、高円宮邸など皇族の方々の邸宅も立っています。 現在の赤坂御用地は、迎賓館の場所と共に紀州徳川家の上屋敷でした。この付近で赤坂川に支流が合流し、当時そうした地形を利用して池の多い庭園としたようです。 実際に旧赤坂川沿いの道を歩いてみよう実際に旧赤坂川沿いの道を歩いてみよう それでは、赤坂御用地周辺の旧赤坂川の谷を歩いてみましょう。中央線「信濃町」~「四ッ谷」間にあるトンネルのすぐ信濃町側に、線路をくぐる車道があります。この道が旧赤坂川の跡です。下流側にあたる南へ約100メートル行くと赤坂御用地の鮫が橋門になり、川はここで御用地内に入っていました。 赤坂御用地の鮫が橋門。ここから旧赤坂川が敷地内へと流れていた(2019年5月、内田宗治撮影) 残念ながら赤坂御用地へは入れませんので、引き返して先ほどの線路のガードから北の上流側へ向かいます。川は低い所を流れるのでその谷沿いに遡る形です。行く手の左右は丘なので、それらの丘へ上る鉄砲坂、観音坂、東福院坂といった歴史深い名の坂が現れます。 ガードから道なりに8分ぐらい歩くと、左手に須賀神社の看板が目に入ります。そこを左に折れると目の前に階段が現れ、上り切った所にあるのが須賀神社です。 ここは大ヒットアニメ映画『君の名は。』(新海誠監督、2016年公開)でポスターなどにもよく使われた場面のモデル地で、今でもアニメの聖地巡礼に訪れる人をたくさんみかけます。最近はアジアからの外国人ファンの姿が目立ちます。 この付近一帯の谷が旧赤坂川の源流でした。谷の道はこの先、円通寺坂という坂道となり、上りきった峠にあたる所で新宿通りに突き当たります。東京メトロ丸ノ内線四谷三丁目がすぐ近くです。 赤坂御用地から下流方面も見ておきましょう。赤坂見附交差点とホテルニューオータニの間に、皇居の外濠のひとつにあたる弁慶濠が水をたたえています。江戸時代、外濠を造成する際、この赤坂川や紀尾井町清水谷公園方面からの流れを堰き止めて弁慶濠を造ったとされています。赤坂川は都市化の進展で消滅してしまいましたが、こういう所にかつての川ゆかりの濠があるわけです。 赤坂見附交差点付近の弁慶濠から眺めると、濠の水面の方が交差点よりも高い位置にあり、江戸時代に川を堰き止めた工事を実感できます。旧赤坂川はこの先、現在の外堀通りを虎ノ門方面へ流れ、東京湾へと注いでいました。現在、溜池山王駅の名などで残っている「溜池」も、江戸時代には飲料水用に使うために、赤坂川を堰き止めたものです。 迎賓館は見学可。宮殿前のカフェで休憩も 赤坂御用地のお隣の迎賓館は、2016年から通年一般公開(本館、和風別館、庭園)されるようになっています(国賓などの接遇使用日前後のほか休館日あり、本館・庭園見学一般1500円など)。 庭園は事前予約なしで入ることができ、迎賓館本館を目の前に臨む「ガーデンカフェ」ではお茶やケーキを楽しむことができます(不定休あり)。 本館は明治42年建築で国宝に指定されているものの先日トランプ大統領の接遇にも使用されるなど現役の建物です。 同大統領との首脳会談の会場となった「朝日の間」、共同会見場となった「羽衣の間」など実際に入室することができ、こうしたニュース映像が身近に感じられると共に、その豪華な装飾にはまさに圧倒されることでしょう。
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