東京にはたったの1駅? 全国で増える「道の駅」が都内にない理由
1990年代から数を増やしてきた道の駅。その魅力と東京に道の駅が増えない理由について、旅行ジャーナリストのシカマアキさんが解説します。1993年スタートの道の駅、今では1,200近くも存在 全国に続々と増える「道の駅」は、その数1,194ヵ所(2022年2月9日現在) しかし、日本最多の人口を誇る東京都には、道の駅はいまだ1ヵ所しかありません。北海道では127ヵ所もあり、ダントツのトップ。岐阜県が56ヵ所、長野県が52ヵ所、新潟県が42ヵ所と続きます。最小では、東京都の隣県である神奈川県も4ヵ所のみ。 和歌山県古座川町の「道の駅 一枚岩 モノリス」(画像:シカマアキ) 道の駅は、1991 年(平成3年)10 月から山口県、岐阜県、栃木県での社会実験を経て、1993年(平成5年)2月に国によって「道の駅」登録・案内制度が創設されたのが始まりです。同年4月、全国103の施設に「道の駅登録証」が付与されました。 当初100あまり、30年近くで1,200近くまで増えた道の駅。なぜ東京都には1ヵ所しかないのでしょうか。道の駅の登録要件、また、近隣などにある道の駅の上手な使い方なども合わせて紹介します。 都内唯一「道の駅 八王子滝山」は車がなくても日帰り圏内 東京都唯一の道の駅「道の駅 八王子滝山」は、2007年(平成19年)4月1日オープン。東京都八王子市滝山町の東京都道169号線沿いにあります。オープン当時、初代駅長に作家・芥川龍之介の孫である交通評論家の芥川麻実子さんが就任したことでも話題となりました。 東京都八王子市の「道の駅 八王子滝山」(画像:写真AC) 24時間使える無料の駐車場やトイレ、情報発信コーナーのほか、農産物直売所「ファーム滝山」が特に人気です。300年以上の歴史ある伝統の「江戸野菜」の一種である八王子野菜をはじめ、果物など東京ならではの旬の農産物が手に入ります。地元八王子の養鶏場で生まれた卵を使ったカステラ、畑で採れた新鮮なローズマリーやトウガラシなどをイタリア産エクストラバージョンオリーブオイルで漬け込んだ「太陽のオリ―ブ」などの人気商品も多々。 その他、東京のブランド豚「東京X」のもつ煮など惣菜を販売する「はちまきや」、抹茶ドリンクやわらび餅などが美味しい和カフェ「滝山茶屋」、八王子の搾りたて牧場牛乳を使ったジェラートが絶品のミルクアイス「MO-MO」など。八王子の製麺所直送のそばやうどん、おひつご飯などを提供するフードコート「彩食庵」は子どもから大人まで楽しめるスポットです。 東京都内にありながら、新鮮な食材を買い物したり食べたり存分に楽しめる場所です。高いビルに囲まれた都会の喧騒からしばし離れ、身も心もリフレッシュできます。都内からの日帰りトリップにもおすすめ。 道の駅 八王寺滝山には、中央自動車道八王子インターチェンジから車で約5分。また、車がなくてもアクセスでき、京王八王子駅とJR八王子駅からバス「ひよどり山トンネル経由戸吹行き」に乗って所要約20分、「道の駅八王子滝山入口」で下車し、徒歩3分です。 東京都内に道の駅が増えないのは〇〇が理由?東京都内に道の駅が増えないのは〇〇が理由? しかし、東京都内に道の駅がいまだ1ヵ所しかないのは、どうしてでしょうか。その理由は、道の駅の「基本コンセプト」が、関係ありそうです。 国土交通省によると、道の駅の基本コンセプトとして「休憩機能」(24時間、無料で利用できる駐車場・トイレ)、「情報発信機能」(道路情報、地域の観光情報、緊急医療情報などを提供)、「地域連携機能」(文化教養施設、観光レクリエーション施設などの地域振興施設や防災施設)の3つが挙げられています。 広大な広さと施設数を誇る「道の駅 新潟ふるさと村」(画像:シカマアキ) 東京都内で特に問題になるのは、24時間オープンしかも無料の駐車場やトイレでしょう。駐車場代が高い都内において、誰でも使える無料の駐車場を設置するのは難しいものがあります。しかも、道の駅の登録要件として「十分な容量を持った駐車場」がしっかり明記されています。地価が高い都内では、駐車場の敷地確保は決して容易ではありません。さらに、24時間誰でも使えるトイレも、都会ならではで、防犯上の問題が出てきます。 隣の神奈川県にある道の駅は、4ヵ所。清川村、南足柄市、箱根町、山北町と、いずれも県西部かつ郊外にあり、川崎市や横浜市などと離れています。関西の都市圏にある大阪府にも10ヵ所の道の駅があるものの、いずれも郊外。全国にある大半の道の駅には、広大な駐車場があります。東京都内で道の駅を作ろうとしても、この「土地の確保」が障害となってしまうのです。 1日楽しめる道の駅が続々登場、ご当地絶品スイーツも多い 全国に2,000もある道の駅。東京都を含む関東にも181駅あります。週末になると、車で駐車場が満車になる人気の道の駅も多くあります。 道の駅は、「道」と付くことから、国道や都道府県道といった道路沿いに位置しています。無料駐車場完備のため、車で行くのがやはり便利。しかし、近所の住民が徒歩や自転車などで通って利用するケースも多くあります。近年、道の駅がブームであることから、鉄道の最寄り駅などから路線バスで行ける道の駅も増えています。 和歌山県にある「道の駅 白崎海洋公園」のみかんソフトクリーム(画像:シカマアキ) 直売所やフードコートのほか、Wi-Fi完備、ドッグラン併設、体験施設もあるなど、1日遊べるテーマパークのような道の駅も多くあります。さらに「道の駅限定」といったこだわりのオリジナル開発商品、旬のフルーツ狩り、さらに近年は災害が多いことから広い敷地を生かした防災拠点としての整備なども進められています。 ドライブのついでに、また、遠方へ旅行に行った際に立ち寄る場所としても最適です。お土産選びはもちろん、ご当地ならではの食材、スイーツなどに出会える可能性大。もし買い過ぎた場合にはその場で梱包して自宅へすぐ宅配できるシステムも整っています。登場から30年あまり経った「道の駅」はその数が20倍に増え、駅ごとの特色もますます多岐にわたっています。
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