シェアサイクル需要増の今こそ考えたい 「自転車安全利用五則」という基本事項と例外事項【連載】シェアサイクルだよ人生は(5)

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シェアサイクル需要増の今こそ考えたい 「自転車安全利用五則」という基本事項と例外事項【連載】シェアサイクルだよ人生は(5)

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石坪マナミ

シェアサイクル愛好家

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都心部を中心に注目を集め始めている新たな交通手段、シェアサイクル。その魅力をもっと多くの人に広めたいと意気込むシェアサイクル愛好家の石坪マナミさんが、東京の街をシェアサイクルで華麗に駆け抜け、現状や課題、そして将来展望についてリポートします。

「自転車安全利用五則」守れている?

 コロナ禍で、自転車の需要が伸びています。

 人口の多い都心エリアでよく見かけるのが、電動自転車を使ったシェアサイクルです。サービスを利用しようと思ったら自転車がなかったというケースが増えているものの、注目度は日に日に高まっています。

ちょっとした移動に便利なシェアサイクルは、コロナ禍も背景に急速に需要が伸びている(画像:写真AC)



 しかし、日常的な自転車人口の増加は便利さの反面、事故の危険というネガティブな側面もあります。自転車は気軽で便利な素晴らしいツールであるがゆえに、ときにはその安全についても考えなければありません。

 警視庁のサイトには、内閣府の交通対策本部が定めた「自転車安全利用五則」が掲載されています。

・1:自転車は、車道が原則、歩道は例外
・2:車道は左側を通行
・3:歩道は歩行者優先で、車道寄りを徐行
・4:安全ルールを守る
・5:子どもはヘルメットを着用

 皆さんはどのくらい守れているでしょうか? 確かに以前と比べて、ふたり乗りや並進(並んで走ること)は見かけませんし、子どももヘルメットをちゃんと被っています。

「歩道は例外」の「例外」が悩みのタネ

 ただ実際、自転車に乗っていると、

・1:自転車は、車道が原則、歩道は例外
・2:車道は左側を通行
・3:歩道は歩行者優先で、車道寄りを徐行

を100%順守するのは困難です。とりわけ「1」は「例外」をどう判断すべきか、なかなか難しいところです。

 車道に自転車専用通行帯がないときは歩道を走ってもよいのですが、現実では自転車専用通行帯があっても歩道を走る自転車は少なくありません。

自転車専用通行帯(画像:写真AC)

 一体なぜでしょうか? それには日本の道路事情が影響しています。

 都心の道路には極めて狭い路側帯があったり、車と接触しそうなほど狭い自転車専用通行帯があったりするのは珍しくありません。そうした道路事情ゆえ、都心には自転車が歩道を走らなければならないところが多いのです。

 このことからも、自転車に乗るときには改めて「道路では歩行者優先」を意識し、安全な利用に努めなければなりません。

現実のデータを冷静に見る

 私たちが今後、より安全な自転車の利用に努めるためには、理想だけではなく、現実的なことを考える必要があります。

自転車専用通行帯(画像:写真AC)



 日本交通安全教育普及協会(千代田区東神田)が発行する『交通安全教育』2021年5月号に掲載された、国土交通省道路局道路交通安全対策室・浜田禎さんの「自転車関係事故件数のコロナ禍前との比較」によると、2020年における全都道府県での自転車の死傷事故は前年に比べて減少しているものの、東京都は死亡事故が増加した10都県のひとつになっています。

 2020年の東京都の死傷事故は前年度より4825件(約16%)減少したのに対し、死亡事故は24件(約18%)増加しています。

 このうち、自転車を第一当事者(最初に交通事故に関与した車両等の運転者または歩行者のうち、当該交通事故における過失が重い者)とする死亡事故は7件で、前年比約78%の増加となっています。

 皆さんはこの現実をどう捉えますか? 具体的な数値を知っていれば、自転車をより安全に利用しようとする意識は高まるのではないでしょうか。

これからの時代、自転車保険は必須

 東京都では既に自転車保険が義務化されており、ほかの自治体でも導入の動きがありますが、知らない人のほうがまだ多数派です。ちなみに需要の高まっているシェアサイクルは、借りている時間は保険があります。

ステーションに並んだシェアサイクル(画像:写真AC)

 この保険ですが、近年では多くの保険会社が商品として取り扱っています。年に数千円の負担でいざというときの備えになるわけですから、安心を買う意味でも加入は必須といえるでしょう。

 シェアサイクルをきっかけに、自転車の魅力に気付く人が増えるのは歓迎すべきことです。でもその影で、マナーの普及がおざなりになることは避けたいものです。

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