「凶悪事件」を題材にしたゲームが東京で流行し始めているワケ

  • ライフ
  • 国際展示場駅
  • 新宿駅
  • 東京ビッグサイト駅
  • 池袋駅
  • 渋谷駅
  • 立川駅
「凶悪事件」を題材にしたゲームが東京で流行し始めているワケ

\ この記事を書いた人 /

中村圭のプロフィール画像

中村圭

文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナー

ライターページへ

殺人事件を題材にしたアナログゲーム「マーダーミステリー(Murder mystery game)」が、東京でも徐々に注目を集め始めています。新宿や渋谷、池袋、立川など、主要エリアには専門のボードゲームカフェがオープンするほど。ゲームの魅力について文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが解説します。

注目のアナログゲームに新ジャンル

 今、にわかに話題となっているゲームジャンルが「マーダーミステリー(Murder mystery game)」です。

 マーダーミステリーとは、その名の通り殺人事件を題材にしたアナログゲーム。プレイヤーは犯人を含む物語の登場人物となって、物語の中で起こった殺人事件の犯人を捜したり、犯人ならば逃げおおせたり、自分の望む結末を目指して物語を体験していきます。

 没入型推理ゲームと言えるものでしょう。

殺人事件を題材にしたアナログゲーム「マーダーミステリー」とは何か?(画像:写真AC)



 それぞれのプレイヤーにはストーリーに沿ってさまざまな設定が与えられます。また、犯人捜し以外にも、個々に設定された秘密のミッションの達成があったりします。

 基本的には会話で情報集めをするため、誰と協力するとよいか、誰をだませばよいのかなど、自分の立ち位置を考えつつ周りの人と会話を進めるコミュニケーションゲームでもあります。

 みんなで集めた情報や証拠をまとめ、犯人を推理していく様は以前から人気の「人狼ゲーム」やリアル謎解きゲームとも共通し、さらにロールプレイ(演じる)要素をハイブリッドしたゲーム性があるのがこのマーダーミステリーと言えるでしょう。

 ボードゲームのようにシナリオやカードがパッケージで販売されることが多いのですが、最近はオンラインでも開催されるなど、広がりを見せています。また、「JOLDEENO(ジョルディーノ)」(立川市錦町)や「Rabbithole(ラビットホール)」(新宿区西新宿、渋谷区渋谷、豊島区西池袋ほか)など、マーダーミステリー専用のボードゲームカフェも生まれています。

都内に新店舗、人気の理由は

 マーダーミステリーの特徴のひとつは、一度参加してしまえばその作品のトリックが分かってしまうため、 1回のみの推理を楽しむものになっていることです。

 もちろんネタバレは厳禁です。この一期一会感も人気の理由かもしれません。

 一度体験したゲームにおいては、トリックを知っているためにプレイヤーになることは難しいですが、ゲームを円滑に遂行するためのゲームマスター(GM)になることは可能です。GMならば他にプレイしている人たちを見て、自分たちのプレイのときとは違う展開を楽しむことができます。

 ストーリーの展開上、基本的に各ゲームに設定されている人数を守らなければいけなく、設定人数が5人なら5人の人を集めなければなりません。また、ひとつのゲームのプレイ時間がおおむね2~4時間程度と長く、アナログゲームとしては比較的時間を要するゲームの部類と言えるでしょう。

東京ビッグサイトで開かれ得た、アナログゲームの祭典「ゲームマーケット東京2021秋」の様子(画像:中村圭)



 誰でも手軽に遊べるボードゲームやカードゲームなどと比較すると、プレイできる前提がやや厳しいとも言えます。しかし、決められた人数で長時間プレイすることから、みんなでひとの演劇を作り上げるような感覚も生まれます。マーダーミステリーえはプレイを公演と呼ぶことからも、その感覚がうかがわれるところでしょう。

 広義のマーダーミステリーではリアルの公共スペースや施設を使って行われるイマーシブシアターなども含まれ、まさに演劇型ゲームと言えます。

 現在、マーダーミステリーは中国で爆発的な人気となっており、日本でも徐々に人気が高まってきている状況です。そのため、出版社やゲームメーカーなどさまざまな国内企業の注目が高まっています。

ビッグサイトでの展示会も盛況

 2021年11月20、21日には東京ビッグサイト(江東区有明)でアナログゲームの祭典「ゲームマーケット東京2021秋」(通称ゲムマ)が開催されましたが、春開催の前回に続き、マーダーミステリーブースは人だかりができるほどの活況でした。

 マーダーミステリーを製作・販売している企業やサークルも多く、熱狂的な固定ファンが付いているサークルもいるほどです。

 今回の出展の中で注目したいブースやゲームを挙げましょう。

『週刊少年ジャンプ』などを発行している大手出版社の集英社(千代田区一ツ橋)は、マーダーミステリーを「本の世界に入り込んで、あなたが主人公になれる新しい遊び」と捉え、「集英社マーダーミステリーエクスプレス」という新レーベルを立ち上げました。

「ゲームマーケット東京2021秋」の集英社のブース(画像:中村圭)



 ゲームパートはマーダーミステリーの製作を多く手掛けているチームRAMCLEARが監修しています。同レーベルの作品には、ゲームマスターや事前準備は一切不要、ストーリーを漫画で表現、スマホで証拠品を管理する新システム、といった三つの特徴があり、初心者でも遊びやすいシステムになっています。

 特にストーリーの漫画表現では出版社の強みをいかんなく発揮しています。今回リリースされたタイトルはふたつ。

 ひとつめは、テレビ番組ロケのために絶海の孤島「ゲッコウ島」に集められた4人が、テレビプロデューサー殺人の犯人を捜し、島からの脱出を図る「ゲッコウ島サバイバル」。

 もうひとつは、タイムカプセルを掘り出すために久々に集まった高校時代の仲間たちの前に現れた、6年前に転落死した少女を救うためのタイムリープミステリー「君のいないリライト」(6人用)です。

新タイトル続々、注目作品は?

 またゲームクリエイター集団のグループSNEは、ゾンビを題材にした往年のホラー映画のような世界観を楽しめる「マーダーミステリー ・オブ・ザ・デッド」など人気のマーダーミステリーを発表していますが、今回、ミニサイズの「Murder Mystery Mini Series ウェンディ、大人になって」を発売しました。

 ボディを破壊されたAIウェンディとともに、奇妙な実験施設に閉じ込められたプレイヤーが脱出するストーリー。ゲームのサイズが小さいため持ち歩きしやすく、密談要素がないなど簡素化していますが、プレイ時間約120分としっかりしたマーダーミステリーを楽しむことができます。

 その他にも「死体と温泉」、「時をかけるトライアングル」も販売しました。

グループSNEの「マーダーミステリー・オブ・ザ・デッド」など(画像:中村圭)



 ストーリーゲームレーベルPOLARISの第1弾は、マーダーミステリー「RED LINE」でした。

 激化する吸血鬼と人間の対立を描いた世界観の中で、未来を決めるために集められた5人が展開するストーリー。プレイヤーは東京・新宿のバーに集められた吸血鬼の設定です。

 パッケージの中のアイテムをひとつひとつ開きながらプレイし、俳優・声優によるキャラクターボイスも収録。300通りの物語の結末が用意されています。また、こちらもGMは不要で、初心者でも楽しめるようになっています。

 また、今回のゲムマのマーダーミステリーブースで中心的な存在だったStudio OZON(中野区中野)では「ひぐらしのなく頃に」をマーダーミステリー化しましたが、今度は「うみねこのなく頃に」の製作が決定しました。

大手出版社も参画、高まる期待

 今回のゲムマを見てもボードゲームには集英社だけではなく、講談社や小学館など大手出版社が関わるようになってきています。

 コンテンツのクロスメディアの観点からも、マーダーミステリーはさらに注目されていく可能性があります。新たなゲームエンターテインメントとしての期待が高まっていると言えるでしょう。

 興味のある方はぜひマーダーミステリーを手に取ってみたり、専門店で楽しんでみたりしてはいかがでしょうか。

関連記事