メイド激減で昔のアキバが戻ってきた? 9月下旬、宣言解除前の秋葉原を歩く

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メイド激減で昔のアキバが戻ってきた? 9月下旬、宣言解除前の秋葉原を歩く

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山本肇

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オタクの聖地・秋葉原。コロナ禍以前はいつ行っても「芋洗い状態」でしたが、現在はどのようになっているのでしょうか。フリーライターの山本肇さんが歩きました。

駅前に散見される空きテナント

 コロナ禍以前、「観光公害」という言葉が流行しました。その意味は、観光客が増え過ぎて、住人などが不便をきたすというもの。東京でそれが著しいのは秋葉原でした。

 ところが、コロナ禍でそんな状況は一変。秋葉原の光景も大きく変わっています。インバウンド(訪日外国人)が2020年後半に途絶えたこともあり、街を訪れる人の数が激減。あらゆる業種で撤退を決める店が現れました。

 その結果、最近の秋葉原は駅前に空きテナントが見られるようになっています。

現在の秋葉原の様子(画像:山本肇)



 2021年9月には、街を象徴する建物のひとつである「肉の万世」秋葉原本店(千代田区神田須田町)もビルを大手不動産会社に売却していたことが明らかになりました。同店は今後も営業を続けるとしていますが、コロナ禍以前はビルの全フロアが肉料理店だったものの、現在は一部店舗の営業を休止しています。

 そんな不景気な話題ばかりが聞かれる秋葉原ですが、緊急事態宣言がようやく明けることで、復活するのでしょうか。そんな視点で街を散歩してみることにしました。

JR駅の利用者は約4割減

 訪れたのは9月下旬の平日。改札を出た第一印象は、まだ人であふれていないというものでした。ある程度のにぎわいはありますが、以前の「芋洗い状態」から比べるとやはり減っています。

現在の秋葉原の様子(画像:山本肇)

 2021年7月に発表された2020年度のJR東日本の駅別利用者人員で、秋葉原駅は第11位となりました。詳細は次の通りです。

・定期外:6万8507人
・定期:8万7594人
・合計:15万6102人

比較のために、コロナ禍以前の2019年度のデータも見てみましょう。

・定期外:12万9173人
・定期:11万8860人
・合計:24万8033人

 駅利用者が4割近く減っているわけですから、店舗が減っていくのは当然です。ワクチン接種が進んだことの結果に、今後期待が寄せられます。

買い物の予定がない人たちの群れ

 街は元気がありませんが、駅前に立っていた男子グループに話を聞くと

「特に用がなくても、秋葉原は楽しい」

といいます。大学も講義の半数近くはリモートになり、買い物でインターネット通販を利用することも多く、欲しいグッズは大抵はインターネットで買っているとのこと。

「それでもなんとなくみんなで集まって、店のグッズや同人誌を見たりして1日を過ごせる街は秋葉原しかありません。ひとりでブラブラしていることも多いですよ」

 元来、秋葉原の街はお金を使わずブラブラしているだけでも楽しめる街でした。現在でも、この魅力は失われていないようです。実際のところ、専門性店でも、複合商業施設「ヨドバシAkiba」でも、カップルや2~3人のグループであれこれと楽しそうに会話しながら商品を眺めている人たちが見られました。

現在の秋葉原の様子(画像:山本肇)



 だからといってモノが売れている様子はなく、話を聞いたグループも「特に買い物の予定はない」といいます。コロナ禍で経済の先行きが見えないなか、買い控えの傾向が増えているのでしょうか。

 それを象徴しているのが中央通りのラオックス秋葉原本店(千代田区外神田)です。近年、インバウンド需要を受けて電器店から外国人観光客の免税店へとかじを切った同店。この情勢で店舗を維持できているのは称賛に値します。しかし、店の壁にある広告用モニターは消灯したままでした。

 中央通りだけをブラブラしても、秋葉原の様子はわかりません。やはり見るべきは中央通りに並行する裏通りです。裏通りは今もPCパーツを売る店や飲食店が多く集まっています。

 しかし近年はメイド喫茶と、そこから派生した風俗店の客引きが列をなして、一種、秋葉原のディープさといかがわしさが混在していました。これまで何度も、警察による取り締まりと、ほとぼりが冷めた頃の店の復活とが繰り返されています。

通りを歩いたら意外な光景が……

 2021年6月には、千代田区と地元住民による防犯団体「AKIBA安全・安心プロジェクト」が結成され、東京五輪を前に警視庁が繁華街の悪質な客引きの取り締まりを強化したことが報じられています。

 しかし、その後の復活はいつものこと。東京五輪も終わり、いかがわしさがそろそろ戻っているのかと思ったら……なんと激減していました。

 夏を挟んで、約3か月ぶりに様子を見に行きましたが驚きです。一時は1m間隔でメイド服などを着た女性たちが並んでいましたが、今やほとんどいないのです。

現在の秋葉原の様子(画像:山本肇)



 あの雰囲気はもはや消滅。もちろん一般的な通りに比べて「メイドさんが多い」という印象はあるものの、メイド喫茶以前の「なにか面白い店に出会えるかもしれない」雰囲気の方が戻りつつあります。

 なお。最近の状況を通りに立っていたメイドさんに聞こうとしたところ、「お店に来てくれたら話しますよ。今、飲み放題をやっているんですけど」とのこと。向こうが一枚上手でした。とほほ。

 2020年、裏通りに風俗店まがいの案内所ができて騒ぎになりましたが、あれは何だったのでしょうか。取り締まりの影響がまだ続いているのか、はたまた人の流れが減った秋葉原は、そうした業種にとって魅力的な土地ではなくなったのでしょうか。

変わらずおいしかった老舗ラーメン店

 裏通りから末広町駅方面に向かって、多くの店舗がありますが、こちらも以前に比べて人の数は多いとはいえません。ならば店も閑散としているのかと思えば、どの店も客の出入りはあります。筆者はUSBケーブルが欲しかったので、買い物をしながら店員に尋ねてみると、こんな話が。

「コロナの前に比べると景気は悪いですね。でも、次第にお客さんが戻ってきている感じはあります。やっぱり通販だと商品が届くまで安心できないですからね」

 実店舗で自分の目を使って購入したいという意識は、インターネット通販の需要が高まった今でも失われていないようです。

現在の秋葉原の様子(画像:山本肇)



 歩いていたらおなかがすいてきたのでなにか食べることに。やはり秋葉原で食べるものといえばカレーかラーメンです。ということで、電気街の時代からあるとんこつラーメンの老舗店へ。

 この店は秋葉原にラーメン店どころか、飲食店が少なかった時代に、何十分も行列する有名店でした。最近はラーメン店も増えたことで、比較的スムーズに入ることができましたが……数年ぶりに訪れたら、なんと店内の客はゼロ。かつてのにぎわいを知っている身としては驚きです。

 そんなムードですするラーメン。味は変わらず素晴らしかったのが幸いでした。筆者は秋葉原の1日も早い復活を願ってやみません。緊急事態宣言が明けたら、現役も元秋葉原ファンも一度足を運んでみませんか? また違った魅力が発見できるかもしれませんよ。

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