22年営業終了 神保町「三省堂書店」はなぜ読書好きから尊敬を集めるのか

店舗建て替えによる、三省堂書店神保町本店の営業終了が話題となっています。同地区を代表する三省堂書店はなぜ多くの読書好きから尊敬を集めているのでしょうか。フリーライターの大居候さんが解説します。


「売れ筋ベスト10」はもはや名物

 三省堂書店神保町本店(千代田区神田神保町)が建て替えのため、2022年3月で営業を終了することを発表し、話題となっています。

千代田区神田神保町にある三省堂書店神保町本店(画像:(C)Google)



 1881(明治14)年に創業し、書店のなかでは老舗のひとつのして挙げられる三省堂書店。現在の本店ビルが建設されたのは1980(昭和55)年のこと。同社の創業100周年を記念しての建て替えでした。

 建て替え当時、約1000坪という売り場面積は都内でも最大級に数えられ、以来、神保町本店は本の街・神保町のランドマークとして、また日本を代表する書店として親しまれてきました。

 今回の建て替えは、完成から40年あまりを経た老朽化によるものです。計画では隣接する第2・3アネックスビルを含めて、2025~2026年には新たなビルが完成する予定となっています。

 三省堂神保町本店が日本を代表する書店として信頼されてきた理由のひとつが、同店の発表する「売れ筋ベスト10」で、他店ではあまり目につかない本が入っているのが特徴です。

 本を選ぶスタッフが経験に基づき、話題前の価値ある本を発掘。それを1階の目立つところに平積みして展開する――そんな「仕掛け」に優れた書店として、同店は業界内からも注目を集めてきました。

 例えば、英単語暗記本の定番『Duo』(現在は『Duo3.0』)は業界内でも話題になっていませんでしたが、同店で火がつき、全国に広がって定番となりました。

 もちろん売れ筋ベスト10だけでなく、本店1階にはジャンル別の売れ筋も陳列されています。書店がインターネット書店より大きく優れているのは、

「偶然の本との出会い」

があるからですが、神保町本店は正にその機会を多く与えてくれる書店なのです。

マイナー本の在庫も確保

 また、決して売れ筋ではない本の在庫もきっちり揃っています。

 筆者のようなフリーライターは「急ですが、明日○○さんを取材してください」という依頼をよく受けます。そのようなとき、資料を急きょ集めなければならないのですが、当人の著書が容易に手に入らないことがままあります。インターネット書店には在庫はあるが、取材に間に合わない……そんなときでも、同店には1冊だけ在庫があることが多いのです。

三省堂書店神保町本店の所在地(画像:(C)Google)



 そうした信頼と実績の積み重ねでしょうか。同店を取り上げた『エコノミスト』(毎日新聞出版)1996年4月9日号の記事にこんな一節を見つけました。

「昼時などは新刊書を中心とした一階の混雑はすさまじい。通路は満員電車なみである。明治のほかに日大もあるので、相変わらず学生の街のような気がしていたが、時間帯にもよるが、ビジネスマンのお客のほうが多いとのこと」

 25年前の記事ですが、今も文章で店内の風景を記すと同じようになります。それだけ、話題の本、本当に面白い本に出会える信頼が神保町本店にはあるのです。

1997年「お客様サービス担当課」設置

 同店が単に面積が広いだけの書店ではないことを示すのは「書店サバイバル戦争」が盛んだった1990年代後半の状況を見ると、よく理解できます。

 1990年代後半、都内では1997(平成9)年8月のジュンク堂書店の池袋進出をはじめ、ブックファースト渋谷店、リブロ池袋店など大型書店の駅前出店が相次いでいました。

豊島区南池袋にあるジュンク堂書店池袋本店(画像:(C)Google)

 この背景にはバブル崩壊後に家賃が下がったことに加えて、文化施設である書店が貸主から好まれたこと、また新刊発行点数の増加で店舗が大きくないと新刊書籍を並べることが困難という事情が絡み合っていました。

 書店にとっては、熾烈(しれつ)なサバイバルを生き残るため緊張感が絶えない時代でしたが、各書店が独自色を売りにするようになり、書店巡りの楽しさが増した時期でもあります。

 そんな最中の1997年6月に、三省堂書店では「お客様サービス担当課」を新設。これは、店長を経験したベテラン社員を配置し、特定の本に関する問い合わせだけでなく、「こんなテーマの本を探している」といったものにも対応していました。

書店による「情報発信」の重要性

 このように、在庫を豊富にそろえて本を売るだけではなく、「こんな本がある」という情報発信を常に行ってきたのが神保町本店です。

千代田区神田神保町にある三省堂書店神保町本店(画像:(C)Google)



 今、インターネットに押されて書店業は斜陽産業になっていると指摘されますが、神保町本店がにぎわいを見せているのは、これに尽きるでしょう。

 昨年来、コロナ禍の中で面白い本を求める人は増加し、各地の書店もにぎわいを見せています。そうしたなかでの建物の建て替えです。新しいビルがどんなワクワク感を与えてくれるか、今から期待してやみません。


【1997年撮影】神保町本店の「ミステリー本売り場」

画像ギャラリー

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