五輪中なのに外出自粛……在宅ばかりの30代男性が、夜な夜な「ベランダ」でしているコトとは

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五輪中なのに外出自粛……在宅ばかりの30代男性が、夜な夜な「ベランダ」でしているコトとは

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ズズズ

イラストレーター、ライター

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東京で暮らし、働く男性たちは、日々何を見て何を思いながら過ごしているのでしょう。イラストレーターでライターのズズズ(zzz)さんが、自身の「何でもない今日」をイラストともに切り取ります。今回のテーマは「夜のベランダ」。

道路を見下ろすと仕事帰りの会社員が

 お風呂上り、ベランダを吹き抜ける夜風が心地良い。

 住宅街の明かりが点々と灯っていて、手すりにつかまって足元の道路を見下ろすと仕事帰りの会社員が歩いています。夜空を見上げるとどんよりと重たい雲の間からたまにまん丸い月が見えます。

ベランダに出てみる。東京も夜の住宅街はしんと静まり返っている(画像:ズズズさん制作)



 57年ぶりのオリンピック開催で沸く東京。とはいえ新型コロナウイルス感染拡大の影響で外出自粛が呼び掛けられていたり、オリンピック自体が無観客開催になったりで、開会中の今も自宅で過ごす時間の方が長いという都民は多いかもしれません。

 気晴らしで街へ出る代わりに最近は、自宅マンションのベランダで過ごす時間が増えました。ベランダはほんの1畳くらいの広さで、室外機の他にはキャンプ道具を収納している大型のボックスがあるのみです。

 2020年春の本格的な感染拡大と外出自粛要請に伴い、周りではベランダで過ごす時間を充実させようと椅子や机を置いたり、照明の装飾を施したり、はたまたベランダ菜園に挑戦したりとベランダ活用の話を聞くようになりました。

 しかし、私は細かいことには向いていないので質素です。

ベランダで非日常を感じるワケ

 照明や椅子を置いても風で乱れたままにしてしまったり、砂ぼこりをかぶって過去の遺跡のようになってしまったりと悲惨な光景が想像できます。実際、以前キャンプ用のチェアを置いていたときも雨風でボロボロになって使い物にならなくなってしまいました。

 また、ベランダは災害時の緊急脱出の用途もあり、共用部という括(くく)りになることもあるので使い方にはそれぞれの物件の条件を確認した方が良さそうです。

 収納ボックスに腰掛け、用意したアイスコーヒーをひと口。そして少しの間、ぼーっとする何だか少しぜいたくな時間。自分の部屋とは壁1枚を隔てているだけなのにちょっとした非日常を感じます。

 遠くの方で救急車の高いサイレンの音が響いて、次第に低くなって消えていく。足元の道路を自転車で駆け抜けていく学生たちの笑い声が聞こえる。

 もしもコロナが無かったらこの辺りの住宅街でもオリンピック開会中はもう少しにぎやかだったのかもしれませんが、今は不思議なほどシンとしています。ただそれが、逆に居心地よかったりもするのですが。

 腕に違和感を覚えると蚊が血を吸っていました。虫よけスプレーをするのを忘れていて、すぐに全身に噴射します。

 自然の音を堪能した後はイヤホンをして音楽を聴きます。

 月がきれいな夜はドビュッシーの「月の光」を聴くとかなり癒やされます。歌詞のある曲だとEVISBEATSの「いい時間」や星野源の「ばらばら」など、なるべく楽器は控えめで歌詞と外界の音が混ざり合って聞こえるような曲を選ぶと、空間が遮断されずに中和されます。

音楽視聴以外におすすめなこと

 リラックスするにはこの“空間を遮断しない”という点がおそらく重要で、大音量で周りの音をかき消すような音楽であれば、ベランダでなくても良いような気がするのです。

 でもたまにリラックスよりも発散をしたいとき、NUMBER GIRLの「透明少女」やアジアンカンフージェネレーションの「リライト」など激しめの曲を選んで、周りの迷惑にならないよう配慮しながら、全力でギターを弾く真似と口パクをしたこともあります。

 東京の夜景が自分だけのステージになったようで気持ち良かったです。

 他のマンションから同じようにベランダ時間を過ごす人が見ていたら怖いかもしませんが、ほんのたまになので許してください。

 他の過ごし方は、定番ですが読書です。

 ベランダは夜だけでなく、朝も気持ちが良いもので、休日の朝、ベランダに洗濯物を干した後、その場でやはり大型ボックスに腰掛けながらトーストを食べて牛乳を飲みます。

 風に揺られる洗濯物を横目に読みかけの本を開きます。気のせいかもしれませんが、自然の光が紙面を照らして、いつもよりスムーズに読書ができるような気がして、あっという間にお昼近くまで時間が過ぎていることもあります。

 時間に余裕のある日であればそのまま近くの量販店で焼き鳥などの総菜とビールを買ってベランダで一杯といった過ごし方もできます。

 少し前にベランダでちょっとしたアウトドア気分を楽しむ「ベランピング」という言葉がありましたが、バーベキューは煙やにおいが発生し、複数人で実施してしまうと話し声がどうしても聞こえてしまうので、匂いや煙が出ないもので静かにひとりで迷惑のかからないように実施するのがポイントです。

 もちろんスピーカーで音楽を流すのはもっての他です。

「今日も良い1日だったな」

 外出自粛が要請される前までは、気持ちを切り替えたかったり非日常に身を置きたいときは、例えば朝はカフェのモーニングに行ってみたり、仕事帰りに映画館や銭湯に立ち寄ったりしていたので、こんなに身近なベストスポットに気付くことがありませんでした。

 新型コロナが私たちにもたらした、ほんのささやかな副産物です。

腰掛けになる収納ボックスと、アイスコーヒーを1杯(画像:ズズズさん制作)



 いくつか過ごし方を紹介しましたが、最終的に私は何もこだわらずに収納ボックスに腰掛けて15分くらい音楽を聴いてまた日常に戻るというところに落ち着いています。

 外出自粛で我慢が続いているのに加えて、本格的な夏の訪れで蒸し暑いも多く、心身が疲れてしまう日もあるかと思います。そんなとき、もしも夜に涼しい風が吹いていたり、朝起きてまだ過ごしやすい気温だったりした日には、ベランダに出て過ごしてみてはいかがでしょうか。

「あぁ、今日も良い1日だったな」、「よし今日も頑張るか」、「あれ? あんなところに中華料理屋があったのか。今度行ってみよ」。そんな前向きな気持ちになれるかもしれません。

 ベランダで過ごす時間はとても気持ちが良いものです。

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