大学全入時代でも「門前払い」は健在! 東大から電通大まで実施する二段階選抜の実情とは

  • ライフ
大学全入時代でも「門前払い」は健在! 東大から電通大まで実施する二段階選抜の実情とは

\ この記事を書いた人 /

中山まち子のプロフィール画像

中山まち子

教育ジャーナリスト

ライターページへ

有名大学受験に関するキーワードとして知られる「門前払い」。その現状について、教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

大学全入時代と言われて久しいが……

 全国各地で大学が新設されたり、少子化が加速したりと、現在は、誰でも大学に進学できる「大学全入時代」と言われています。もちろん、全ての大学が入りやすくなったわけではありません。全国的な知名度を持つ大学や医学部などの専門性の高い学部学科は、相変わらず「狭き門」のままです。

 国公立大学の2次選抜は記述式問題や小論文が課せられるため、募集人員を大幅に超える志願者が受験した場合、採点に時間がかかります。結果、合格発表日までに余裕を持って合否を判定するために1次選抜となる「大学入学共通テスト」の結果で絞り込みをする必要があります。

 東京大学(文京区本郷)を始めとする一部の国公立大学は、昭和時代から変わることのない「二段階選抜」を行い、志願者をふるいにかけています。

令和になっても「門前払い」は健在

 大学入試に関するキーワードとして、多くの人が「門前払い」「足切り」という言葉を耳にしたことがあるはずです。

文京区本郷にある東京大学(画像:写真AC)



 新聞やニュースでは「足切り」という表現が不適切であるとして、「二段階選抜」を使っています。その意味は、選抜試験で一定の基準に達しない受験者を1次選抜(2020年までは大学入試センター試験、2021年からは大学入学共通テスト)により切り捨てることです。

 結果、志願する大学の2次選抜を受けることなく「不合格」となる恐れもあり、国公立大学を第1志望としている受験生は1次選抜合格の通知が届くまで、落ち着かない日々を過ごすことになります。

「門前払い」を行わないときもある?

 二段階選抜実施の有無については、各大学が夏ごろに発表する入試要項に記載されていますが、同じ条件で実施し続けるとは限りません。門前払いの代名詞である東京大学でも毎年実施するわけではないのです。

 一般的な大学は「倍率が〇〇倍以上になった場合」とその条件を明記していますが、東京大学は、文科一類から文科三類までは募集人員の約3.0倍、理科一類と理科三類は約3.5倍、理科二類は約2.5倍に志願者数が達した場合、二段階選抜を実施するとしています。

 しかし2021年の文科二類の志願倍率は2.9倍。そのため、志願者全員が2次選抜を受けられました。

国立市中にある一橋大学(画像:(C)Google)



 このように、志願者数によっては門前払いをしないこともあるため、受験生はさらに落ち着かない状況が続きます。

「門前払い」のもたらす結果

 国公立大学の二段階選抜といえば、都内では東京大学や一橋大学(国立市中)を始めとする旧帝大や難関大学、医学部で行われているイメージが強いものの、実際はそうではありません。

 2021年前期日程では国公立大学で2139人、そして中期・後期日程では4151人の不合格者が出ました。前期日程の1次不合格者数が多かったのは東京大学で、東京都立大学(八王子市南大沢)が続きました。

八王子市南大沢にある東京都立大学(画像:(C)Google)

 特に東京都立大学の前期志願者数は2020年より435人も少ない4775人でしたが、1次選抜の不合格者は445人に上りました。この数字は2020年より多かったことから、

・志願者が少ないから合格しやすい
・2次選抜へのハードルが下がった

ではないと証明されました。

他の都内大学の動向は

 東京大学の2016年入学者試験を始めとして、後期日程を止める大学が増えており、「狭い門」はさらに狭くなっています。

 都内の大学で、後期日程があり、二段階選抜実施の予告をしていたのは一橋大学と東京都立大学のほか、東京医科歯科大学(文京区湯島)、お茶の水女子大学(文京区大塚)、電気通信大学(調布市調布ケ丘)でした。

文京区大塚にあるお茶の水女子大学(画像:(C)Google)



 お茶の水女子大学は二段階選抜の実施を見送りましたが、他の4校では1次選抜での不合格者が出ました。

 特に二段階選抜を予告していなかった電気通信大学は「後期日程の出願者数が募集人員の8倍を超えた場合、二段階選抜を行う」と募集要項に記載。結果として480人の不合格者が出ました。

 電気通信大学の後期試験は国私立の難関理系大学を狙う受験生も出願するため、全体的にハードルが高くなります。他大学とは異なり実施初年度ということもあってか、結果として500人近い不合格者が出たと考えられます。

大学全入時代とは無縁の国公立大学

 二段階選抜を実施している国公立大学は必ずしも旧帝大や難関大学、そして医学部だけではありません。

調布市調布ケ丘にある電気通信大学(画像:(C)Google)

 確実に志望校の合格を勝ち取るためには、その年の平均点を考慮しつつも、大手予備校などが出している偏差値や大学入学共通テストの得点率より高い成績を残す必要があります。

「大学全入時代」が叫ばれても、国公立大学へのハードルは低くなっていないのです。

関連記事