天下の東大入学をフライングゲット? 5年目迎えた「推薦入試」、しかし裏にはシビアな現実があった
東大推薦、一般入試との学力差は? 最後のセンター試験も終わり、国公立大学を目指す受験生は前期日程の2次試験に出願し、入試本番に備えています。各大学の2次試験は2020年2月25日(火)から実施されますが、東京大学の2020年度推薦入試の合格者は、それに先立つ2月12日(水)に発表されます。 東京大学の赤門。多くの受験生がここの門をくぐることを夢見て勉学に励んでいる(画像:(C)Google) 2016年度入学者選抜試験から導入された東京大学の推薦入試は、今回で5回目となります。世間では、 「推薦・AO入試組は、一般入試組の学生と学力差がある」 としばしば指摘されますが、東大では学力に開きはあるのでしょうか。 理科類の医学部医学科にも推薦枠理科類の医学部医学科にも推薦枠 東大では推薦入試を始めるにあたり、後期日程の募集を廃止し、全学部100人の募集定員をそのまま推薦入試の定員に据え置きました。 東大の一般入試は学部への出願ではなく、文科1類、理科3類といった科類の試験を受け、1学年から2学年前期までは教養学部に属することになっています。ほかの大学とは異なり、2学年の後期から成績や進学希望を踏まえて各学生が専門学部や学科を選択するシステムです。 東大キャンパスのすぐ近くにある東京メトロ南北線の東大前駅(画像:写真AC) 一方、推薦入試では最初から志望する学部への出願が可能となっており、「この学部に行きたい」と強い思いを持つ高校生に門戸を開いているという特徴があります。 ただし、教養学部のように理系と文系の専門学科が混在している学部も多いため、各学部によって合格者それぞれに相当する科類を指定し、教養学部に所属することになります。 学部ごとの募集定員は規模によって振り分けられており、最多が工学部の30人、最少は薬学部と医学部の5人となっています。しかし、医学部に関しては医学科が3人、健康総合科は2人と募集定員が定められています。そのため入試を受ける段階で学びたい専門分野が決まっていない受験生には、推薦入試は不向きと言えるでしょう。 センター受験が必須、2019年度の合格者は最少センター受験が必須、2019年度の合格者は最少 東大推薦入試の募集要項や求める学生像を見ると、学業成績がよく科学オリンピックや国内外でのコンクール受賞歴、論文作成などハイレベルなものになっています。 しかしながら、推薦入試の志願者数は1回目の173人を皮切りに、この5年間は大きな変化もなく推移しています。 書類審査の1次選考を通過した学生の数も、最多を記録した2019年度入学者選抜が149人、最少は2017年度入学者選抜の127人で、いずれも募集定員を超えています。それにも関わらず、最終合格者数は初年度の77人以降は減少し、19年度の合格者は過去最少の66人にとどまっています。 センター試験を受けるため会場に向かう受験生たちのイメージ(画像:写真AC) 東大の推薦入試の最大の特徴は「センター試験の受験が必須」という点です。大学は医学部医学科の志願者は900点満点中780点、そのほかの学部でもおおむね8割以上取れることを必要最低限の学力と公言しています。入学後の授業についていけるだけの学力を求めているのです。 つまり、書類選考を通過し、毎年12月中旬に行われる面接で好印象を与えたとしても、センター試験の結果次第では涙をのむ学生がいるということを意味しているのです。このため、世間一般で指摘される一般入試組と推薦組の学力差はほぼないと考えられます。 「あわよくば」など通用しない狭き門「あわよくば」など通用しない狭き門 東大の推薦入試では、国内外の大会での受賞歴が求められるなど、短期で通過できるものではありません。早い段階から推薦をにらんで対策を練る必要もあります。ただ単に「合格したいから」という思いや「学校の内申書が良い」という短絡的な考えでは突破することは不可能です。 学生自身が意欲を持って、将来的にわたって継続して研究したいテーマや分野を見つけることが重要といえるでしょう。「情熱をかけて取り組みたいことは何か」と自問自答し、興味と結びつくコンクールに積極的に参加するといった行動力も必要です。 東大としては、東大に入ったことで満足せず、自ら学び行動するハイレベルな学生を欲しているのは間違いありません。推薦入試は大学入学後に研究したい分野がすでにある学生には魅力的ですが、壁を越えるにはかなりの力量が求められます。 学生ひとりだけではなく、高校での指導や協力も不可欠です。東大の推薦入試に関しては合格を勝ち取るために中長期的な計画を立てる必要があるのではないでしょうか。
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