東京に4度目の緊急事態宣言、影響は?
上半期が終わり、2021年も折り返しを迎えました。2020年に引き続き、新型コロナウイルスは収束することなく、世の中に多大な影響を及ぼしています。
東京都に対しては、7月12日(月)から4度目の緊急事態宣言が発令されることになりました。ライブやコンサートを含む大規模イベントは、上限5000人かつ収容率50%以下での開催という対策が盛り込まれています。
8月の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2021」が中止となったことから、夏に向けてさらに影響が波及することも考えられます。
そのような状況下で折り返した2021年。業界全体の動きではなく、楽曲のヒットの出方やシーンはどのように変化しているでしょうか。
2020年は世の中の変化に伴い、音楽のシーンも大きく変化した年でした。
YOASOBI、瑛人、LiSA、NiziU、BTS、あいみょん……2020年の年間チャートはヒット曲にあふれた。では2021年は?(画像:写真AC)
同年はじめに新型コロナウイルスが感染拡大し始めたことにより、アーティストの活動の仕方やその形が変化すると同時に、リスナーの生活の仕方も大きく変わりました。
それにより、人々と音楽の関係性や存在感に変化が訪れました。動画プラットフォームが拡大するようになってから、音楽は聴くだけでなく使うものになりつつあると指摘されることがありましたが、その動きに拍車がかかったのです。
配信ライブの急成長、YoutubeやTikTokといった動画投稿サイトの存在感など、音楽業界のトップニュースの様相が大きく変化しました。
TikTok発、紅白出場まで上りつめた例も
YouTubeやTikTok、Instagramで楽曲を動画とともに投稿したことをきっかけに注目を集め、全国区の知名度を得た例は枚挙にいとまがありません。
アプリの存在自体は知られていたものの利用者に偏りがあったり、それまで音楽ヒットの発端になる印象など全くなかったTikTokやInstagram。このような場所からのヒットは、珍しさや新しさから一般層にも注目されました。
瑛人の「香水」がTikTokで利用されることによって大ヒットし、NHKホールで行われている紅白歌合戦に出場するまでとなったことがその一例です。
NHK紅白歌合戦の会場となるNHKホール(画像:写真AC)
楽曲自体の魅力がヒットを生み出したのは言うまでもありませんが、爆発的にヒットし一躍“時の人”にまでなったのには、全く新しいヒットの仕方であったというプラットフォームの視点での面白さもあったことでしょう。
一方で2021年は、昨年あったような大きなトピックが少ないように感じます。
billboardの上半期楽曲ランキングを見てみると、そのラインナップはAdo、BTS、LiSA、YOASOBIと、2020年の勢いをそのまま引き継いでいるような印象をおぼえます。
2020年に頻出したような、知名度が低いアーティストが突然幅広い世代に大ヒットするという様子は、上半期が終わった現時点では比較的少なく留まりました。
とはいえ、TikTokを見てみると、「寄り酔い」「グッバイ宣言」「サクラウサギ」(いずれも曲名)など、いまだ活発にヒットが生まれる場としての役割を担っています。
「ヒットのあり方」に大きな変化
しかし、TikTokからのヒットという点での新規性がなくなったことや、一度ヒットを飛ばしたアーティストの2作目であることなど、一般層が触れるニュースとしての新しさが薄れたため、2020年よりもヒットの印象が薄くなっているのではないでしょうか。
あるプラットフォームでは人気を獲得しているにも関わらず従来の「ヒット」の印象とは異なる理由はそれだけではありません。近年、ヒットのあり方自体が変化しています。
一斉に特定の楽曲に注目が集まることをヒットとするならば、それが生まれ得る場は以前よりも増加傾向にあります。
2018年頃に米津玄師が大ヒットすると、もともとボカロPであったことからボーカロイドにも焦点が当てられるようになりました。
2021年7月、ユニクロ・UTとのコラボ生配信ライブに出演したYOASOBI(画像:The Orchard Japan)
YouTubeなどを通じてボカロPや動画サイトで活躍するクリエイターにも注目が集まった流れを汲(く)むように、2020年には小説を音楽にするというコンセプトでボカロP、Ayaseを中心人物とするYOASOBIがTikTokやYouTubeを起点に大ヒットしました。
その後、TikTokやYouTubeからヒットが豊富に輩出され続けていることは言うまでもありません。
さらに、流行(はや)りの起点はインターネットだけになったかと言えばそうではありません。
今なお多大な影響力を持つテレビ
アニメタイアップの形で2020年はLiSAが一躍有名になり、2021年は映画タイアップ(『花束みたいな恋をした』)から有名になりTikTokなどにも飛び火する形でAwesome City Clubの「勿忘(わすれな)」が注目を浴びています。
アルペンのタイアップ企画に登場したAwesome City Club(画像:アルペン)
YouTtubeやTikTok、Instagram、そしてテレビやストリーミングなど、音楽が注目されるプラットフォームはいくつも存在しています。
これからは、プラットフォームによって棲(す)み分けが生じていくのかもしれません。現にTikTokでの音楽ランキングとそれぞれのストリーミングサービス、そしてbillboardなどの音楽チャートをそれぞれ見比べてみると、そのラインナップが大きく異なっていることがわかります。
ヒットは、今や各プラットフォームに細分化されるものになりました。幅広く知られることだけがヒットであるとは限らなくなってきているのでしょう。
それでもなお広く知名度を獲得することをヒットとするならば、それは純粋な音楽の力だけでは無しえないことになってきているかもしれないと筆者は考えます。
今でも強い影響力を持つのは、テレビタイアップです。テレビ離れが進んでいることは近年しばしば指摘されていますが、視聴者層の偏りは他のプラットフォームよりも少ないでしょう。
以前は楽曲やアーティストのヒットが先にあってその後タイアップにつなるという図式がありましたが、現在では特定の層の注目にテレビ制作サイドが目を付けてタイアップにつながり、そこから広く大きなヒットが生み出されるという構図が見られるように思います。
動画・映像と切り離せなくなった音楽
また、動画の影響力も強く存在します。YouTubeを日常的に利用する人が増えたため、ミュージックビデオ(MV)やリリックビデオの影響力は無視できるものではありません。今では、多くのアーティストがMVを公開しています。
音楽の良しあしだけでなく、きっかけとなるものの質や訴えかけ方が以前よりも重要視されるようになっているのです。
このように、音楽のヒットをめぐる話題は多くの音楽以外のプラットフォームへの言及を避けられない状況となっています。音楽が介入できるプラットフォームが増加したからに他なりませんが、裏を返せば、音楽を中心にしては音楽のヒットは生み出されにくくなったと言い換えることもできます。
引き続き情勢に振り回されている2021年。上半期は2020年と大差ないように見えた音楽ヒットの様子でしたが、後半戦は一体どのような話題が待ち受けるのでしょうか。