勇気を出して「推し」の漫画家に会いに行った男性 「いつも読んでます!」と伝えたら、相手は……

東京で暮らし、働く男性たちは、日々何を見て何を思いながら過ごしているのでしょう。イラストレーターでライターのズズズ(zzz)さんが、自身の「何でもない今日」をイラストともに切り取ります。今回のテーマは「創作漫画の祭典」。


創作漫画の祭典 in 東京ビッグサイト

 何かに夢中になっている人は見ていてとても気持ちが良く、幸せになります。

 日曜日、私(ズズズ。イラストレーター、ライター)は東京ビッグサイト(江東区有明)にいました。東京ビッグサイトは仕事の展示会でよく訪れます。平日の殺伐とした雰囲気の中、各社が新製品を発表したり、新規顧客を獲得したりと「仕事」のイメージが強い場所です。

 しかし、初めて見る日曜日の東京ビッグサイトは違いました。

 10~50代くらいの幅広い年齢層の人々が会場の前で楽しそうに会話をし、紙袋にたくさんの本を入れて歩いていました。その顔はみんな充実感があふれています。会場入り口の看板にはこう書かれていました。

COMITIA(コミティア)

東京ビッグサイトで開かれた「COMITIA(コミティア)」に来場(画像:ズズズさん制作)



 コミティアはオリジナルの創作漫画の即売会です。

 コスプレイヤーなどが集まる有名なコミケ(コミックマーケット)は原作のある漫画をアレンジする2次創作がメインですが、こちらのコミティアは1次創作、つまり完全オリジナルの作品が並ぶという違いがあります。

 コスプレはむしろ禁止されており、コミティアの規模はコミケの10分の1くらい。

静かな熱気が充満する会場へ

 会場に入ると場内一面に所狭しと机と椅子が並べられており、趣味で漫画を描く人、漫画家として生計を立てている人などプロアマ問わず多くの作家がそれぞれの作品を発表している。

 誰もが自分の作品に自信を持ち、多くの人に知ってもらいたいと思っている。テレビアニメ化や実写映画化までされた『映像研には手を出すな』の大童澄瞳氏のようにここから有名になっていく作者もいる。

 そう、ここにはファンタジー、恋愛、旅行記、日常系エッセイ、スポーツ、SF、成人系などさまざまなジャンルの、まだ流通で出回っていない漫画が存在する。

 決して騒がしい会場ではなく、むしろイベントにしては落ち着いている印象ですが、会場内には音で表せない静かな熱気が充満していました。

こんなにも多くの人が創作をしている

 少しでも目立たせようと大型のポスターを置く人もいれば、布やPOPで机を装飾したり、売り子を立てたりなど工夫を凝らしたスペースを見るのも楽しい。

 仕事やプライベートの知り合いで漫画を描いている(創作している)という人には滅多に出会うことはありませんが、世の中にはこんなにもたくさんの人が創作をしているのかと驚かずにはいられません。

 私がこの会場に来た目的は、SNSで読んでいる漫画の作者が「コミティアに参加します!」と告知していたことがきっかけでした。

 こんな面白い漫画を描いている人に会うことができるのかと思うと何が何でも行ってみたいと思えたのです。

大好きな作品の作者に初対面!

 その漫画は、東京で暮らす会社員のもとに人の言葉を話すキツネとタヌキがやってきて一見ほんわかしたやりとりを展開する内容です。しかし、主人公の男性の生活に目を向けると仕事やプライベートに悩みながらも成長していくという点で自分との重なりを感じ、静かな中に棘(とげ)のある魅力的な作品だと思ったのです。

 一直線にその作家さんのスペースに向かう。先客と何やら話し込んでいて、何度もお辞儀をする感じの良い男性がいた。

 私の番が来ると緊張して言葉が出ませんでした。勇気を振り絞って「いつも漫画楽しく読んでます!」と伝えると作家さんは「ありがとうございます。う、うれしいです!」と言って何度もお辞儀をしていた。

 気づけばほかにも待っているファンがいたので、邪魔にならないよう早めに退散することにします。漫画を購入して大切にリュックにしまう。ほんの一言二言の会話でしたが、私は言い知れぬ満足感を覚えていました。

 なんだがとても充実した気持ちになるとともに自分も素敵な作品を制作してこのようなイベントに参加してみたいと思いました。楽しく創作している人のポジティブな熱気が自分にも伝染し、そう思えたのかもしれません。

作品を通して思いが通い合う。素敵な体験にグッときた(画像:ズズズさん制作)



 作品を制作して発表して、それを見た誰かが自分のもとへ会いに来てくれる。逆に面白いと思ったものの作者に会える。そんな幸せなことはあるだろうか。

 みんな、自分は確かにここにいるぞと静かに、熱く燃えている。大人になってもワクワクしていたい。伝えたい思いがある。楽しいと思えることをしたい。青春は決して学生だけのものではない。

 こんなにも素敵なイベントがあるのかと思わずにはいられませんでした。

次のヒット作もきっとここから生まれる

 それからその作家さんは商業誌での連載が決まり、自分のことのように心からうれしく思えたのを覚えています。また私自身もコミティアに参加し、多くの人と出会い、交流し、感謝し、世界が広がるきっかけとなりました。

 コロナの影響で多くのイベントが中止を余儀なくされています。このコミティアも例外ではなく何度か中止となり、危機的な状況に陥りました。

そんな中、2020年、主催者が開催継続に向けたクラウドファンディングを実施したところ、目標金額3000万円を開始8時間で達成し、8日目には1億円を突破するという快挙を成し遂げました。

 多くの人からとても愛されているイベントであるということが伝わる結果でした。

 次回は2021年6月6日(日)の開催です。多くの漫画家がそれぞれの思いを込めて、俺は、私はここにいるぞと熱く燃えている。音楽にインディーズの世界がある通り、漫画にもあるのです。

 世の中には『ワンピース』『鬼滅の刃』『進撃の巨人』などたくさんの面白い漫画が存在します。しかし、普段商業漫画しか読まないという人も一度コミティアに行ってみてはいかがでしょうか。

 今まさに世に出ようとしている新しい才能にきっと出会えるはずです。


【画像】支援金「1億円」を突破! 自主制作漫画の祭典とは?

画像ギャラリー

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