最終処分場からビッグな大仏まで マイナーでも魅力満載「日の出町」を巡る【連載】多摩は今(5)

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最終処分場からビッグな大仏まで マイナーでも魅力満載「日の出町」を巡る【連載】多摩は今(5)

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鳴海侑

まち探訪家

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東京都の多摩地域西部に位置する日の出町。その知られざる魅力と実力について、まち探訪家の鳴海侑さんが解説します。

町の西半分に町の施設が立地

 30の自治体で構成される多摩地域。その中にはふたつの「町」があります。そのうちひとつが多摩川の西にある「日の出町」です。

日の出町(画像:(C)Google)



 あまり聞きなれない町名かもしれませんが、町内には多摩地域にとって重要な施設やユニークなスポットがいくつもあります。

 日の出町という町名は町内にある「日の出山」(標高902m)からとられています。町の西半分は山地でいくつもの沢があり、沢が合流する場所に町役場(日の出町平井)をはじめ、町の施設が多く立地しています。

 また、町の東半分は沢が集まって川幅の広くなった平井川に沿って人家が集まり、川より離れたところには工業団地や大型商業施設が立地しています。

石灰石と縁が深いエリア

 町内へのアクセスはクルマが楽ですが、JR青梅線の福生駅あるいはJR五日市線の武蔵五日市駅から発着する西東京バスでもアクセス可能です。以前は鉄道でもアクセスできましたが、現在は廃線になっています。

 廃線になった鉄道路線は五日市線岩井支線と名付けられており、武蔵五日市駅から跡をたどることができます。この区間は五日市線の建設を支援した浅野セメント(現在の太平洋セメント)で使う石灰石を運ぶために敷設され、1971(昭和46)年まで旅客輸送が、1982年まで貨物輸送が行われていました。現在も石灰石の採掘は続けられており、現在はトラックによる輸送が行われています。

 石灰石の工場がある平井川の沢は登っていくと日の出山に通じます。山の中腹には温泉施設「生涯青春の湯 つるつる温泉」(同町大久野)があり、そこまではバスでアクセスできます。ここで運行されるバスでは変わった車両が運行されています。それが蒸気機関車を模したトレーラーバスです。

「青春号」と名付けられたこのバスはエンジンや運転台があるけん引車と客車の被けん引車で構成されています。似たようなもので連節バスがありますが、運転台と客室が一体的にできている連節バスとはことなり、運転台と客室部が完全に仕切られています。

機関車型バス「青春号」(画像:写真AC)

 このトレーラーバス、車体構造が特殊なのもさることながら、免許も通常のバス運行に必要な大型二種免許の他にけん引二種免許というものが必要な特殊なバスです。そのため、路線バスのトレーラーバスは現在ここ以外では運行されていません。大変珍しく、ぜひ温泉や日の出山の登山の際には乗ってみたいバスです。

山中には「ロン・ヤス関係」象徴する施設も

 続いて、セメント工場やつるつる温泉のある平井川沿いから1本北の沢(北大久野川)へ目を移します。

 するとこちらの沢には峠を介して青梅市の吉野梅林近くに通じる道が通っています。そして、沢の中腹にあるのが「日の出山荘」(同町大久野)です。この山荘は故・中曽根康弘氏の別荘だったもので、中曽根康弘氏が首相を務めていた際には当時アメリカ大統領だったロナルド・レーガン氏が招かれ、日米首脳会談が行われた場でもあります。

日の出町大久野にある「日の出山荘」(画像:(C)Google)



 この頃の日米関係は緊密で「ロン・ヤス関係」と呼ばれ、日の出山荘はまさにその象徴でもありました。ロナルド・レーガン元大統領のほか、旧ソ連の指導者・ゴルバチョフ氏など各国の要人が訪れています。現在は中曽根氏から日の出町に山荘が寄付され、一般公開されており、入園料を払えば見学可能です。

 ふたつの沢をつなぐように武蔵五日市駅方面から南北に伸びるのは秋川街道で、こちらは北に向かえば二ッ塚峠を越えて青梅市の市街地へ行くことができます。

生活を支えるごみの最終処分場も活躍

 この峠にあるのが多摩地域にとってはとても重要な施設、「二ツ塚処分場」(同)です。多摩地域で排出されたごみの最終処分場で、可燃ごみの残さや破砕された不燃ごみが埋め立てられています。

日の出町大久野にある「二ツ塚処分場」(画像:(C)Google)

 現在処分場は40%以上が埋め立てられていますが、この処分場が埋め立てられてしまうと次の処分場の確保は難しいとされています。そのため、多摩地域から出るごみは減量が求められており、有料ごみ袋の導入や廃棄物を活用したエコセメントの製造が行われています。また、処分場周辺の環境保護も重要な課題で、徹底した安全管理が行われています。

 二ツ塚処分場のほかにも、日の出町には既に埋め立てを完了した「谷戸沢処分場」(同町平井)があります。こちらも周囲の環境への影響を監視しながら、埋め立てた土地の一部をグラウンドやサッカー場、消防ヘリの離着陸場として活用しています。

 このように、日の出町は多摩地域にとってはなくてはならない場所でもあるのです。

都内で2番目にできたイオンモール

 最後に、日の出町でも平地の多い東側に目を移してみましょう。

 町役場の北東に秋川霊園という大きな霊園があり、隣接して「塩澤山寳光寺(えんたくざんほうこうじ)」(同町平井)があります。このお寺の敷地内にあるのが2018年に建立された鹿野大仏(ろくやだいぶつ)です。

 この大仏は東日本大震災を契機に以前からあった大仏建立の構想が実現したもので、高さは鎌倉の大仏を超える12mと大変大きなものです。大仏の建立に併せて山が切り開かれており、入園料を払って500mほどの坂道を登っていきます。遠くからはそれほどの大きさには見えない大仏ですが、登っていくと巨大さがわかるようになってきます。

 そして大仏の足下にたどり着くと、その大きさに驚くとともに大仏が見下ろすように日の出やあきる野の景色を楽しむこともできます。

 この大仏のほか、日の出町の東側には東京都内で営業している4つのイオンモールのなかで2番目となる2007(平成19)年に出来た「イオンモール日の出」(同)があります。車で来館する人が多く、テナントもイオンモールでよく見られるテナントが多くあります。そのため東京から離れた地方都市の郊外に来たかのような気分になります。

日の出町平井にある「イオンモール日の出」(画像:(C)Google)



 ここまで駆け足で日の出町のいまを紹介してきました。種類の異なるユニークな施設が多く、また多摩にとってはなくてはならない自治体であることも見えてきたと思います。どんな場所か気になった人はぜひ一度、のどかでも中身の濃いこの町を訪れてみてください。きっと楽しめるはずです。

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