コロナ太りの実態とは
ダイエットや健康は、今や誰にとっても注目のキーワードです。近年は「正月太り」「夏太り」などをテーマにしたテレビ番組や雑誌の特集をよく目にします。
そんななか、多くのメディアで最近取り上げられているのが「コロナ太り」です。
このコロナ太りの実態に迫ろうと、筆者(有木真理)が上席研究員を務めるホットペッパーグルメ外食総研では、2020年11月に調査を行いました。
緊急事態宣言が発令された2020年4月以降、体形に変化があったか否かを質問したところ、男性の27.2%、女性の34.6%は変化があったと回答。そのうち、「太った」と答えたのは男性が19.1%、女性が24.5%。一方で「痩せた」と答えた男性は8.1%、女性は10.1%となりました。
コロナ太りと言われるわりには、太った消費者と痩せた人の差があまり大きくなかったため、筆者は意外性を感じました。
コロナ禍で問われる自己管理能力
外出自粛とリモートワーク中心の仕事で、通勤やレジャーといった日常的な活動が制限されているため、消費カロリーは当然減り、体重は増えがちです。そのような人たちが圧倒的に多いと予測していましたが、結果はそうではありませんでした。
「コロナ太り」のイメージ(画像:写真AC)
日常的に運動習慣がある人たちは通勤時間が無くなったことで、時間を創出し、ランニングや筋トレなどの軽いワークアウトを日常的に取り入れたため、体重の減少につながったと考えられます。オンラインヨガやオンラインクロスフィットといったワークアウトもこの1年で大きなブームとなり、さまざまな関連アプリも登場しました。
また、コロナ禍でビジネス上の会食も減ったこともあり、食生活をコントロールして体重減少につなげた人もいるでしょう。
いずれにせよ、コロナ禍の生活変化が計30%前後の消費者に影響を及ぼしたことになります。このことからも、食生活がいかにライフスタイルと密着しているかが分かります。
人々の食生活はどのように変化したのか。
消費者の食生活ですが、具体的にどのように変化したのでしょうか。今回の調査では主要な30種の食品を挙げ、2020年4月以降の「食生活において増えたこと」を調べました。
その結果、男性は
・1位:水分をとる頻度
・2位:インスタント食品を食べること
・3位:野菜を食べること
女性は、
・1位:自炊の頻度
・2位:水分をとる頻度
・3位:菓子、スナック類を食べること
となりました。
「水分」「野菜」「自炊」はいつの時代にも登場する健康キーワードですが、どちらかと言えば背徳的な「インスタント」「菓子、スナック類」といったキーワードもランキングされています。
スナックを食べるイメージ(画像:写真AC)
健康と背徳、この真逆のキーワードが上位に入ったことはとても興味深い結果と言えます。これは、健康に気を使いたいし、体重増加も気になるが、「おうち時間」が増え、いつでも食べ物に手が伸ばせる環境ゆえに、「つい食べてしまう」といった、ある意味人間らしい心理と行動の表れなのでしょうか。
今後一層求められる自己管理能力
中でも「太った」と答えた消費者の解答だけを切り出すと、食べる量が増えた食品の上位に「菓子」「揚げ物」「麺類」といった、一般的に太りやすいとされている食材が列挙していることも共有したいポイントです。
食品メーカーや中食(総菜やコンビニ弁当などの調理済み食品)・外食の事業者が、自宅で楽しめる商品やテイクアウト商品などの開発を強化したことで、魅力的な「おうちごはん」が増えたことも要因とひとつとしてあげられます。
体重が減ったと答えた人は、おうち時間が増えたことで栄養のバランスを考えた食事をとる機会が増えたことも要因と考えられます。
ランニングをするイメージ(画像:写真AC)
今後コロナ禍が落ち着いても、リモートワークなどを始めとする生活様式の一部は残るため、消費カロリーは低下したまま。そのなかでセルフコントロールの重要性を強く感じます。
「オンライン」「リアル」が融合する生活へ
おうち時間が増える新しいライフスタイルでは、「低カロリー」かつ「健康的」だけど、口さみしさを紛らわせてくれる食べごたえのあるおやつや、小腹が減ったときに食べられるミニタイプの麺など、リモートワーク向けの魅力的な商品の誕生が期待されます。
しかし外出の楽しみは何物にも代えられません。そのため、コロナ禍が落ち着いたら「オンライン」と「リアル」の2軸をうまくハイブリッドすれば、生活はより充実するでしょう。
コロナ後の外食イメージ(画像:写真AC)
自由に外出し、自由に人と接し、自由に外食や旅を楽しむ――そんな当たり前な生活が戻ってくることを願ってやみません。