コロナ禍で変貌する就職活動 オンライン面接で「学歴重視」は加速するのか?

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コロナ禍で変貌する就職活動 オンライン面接で「学歴重視」は加速するのか?

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金平奈津子

フリーライター

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新型コロナウイルスの感染拡大で、就職活動の主流になりつつあるオンライン面接。その現状について、フリーライターの金平奈津子さんが解説します。

オンラインで採用して、会わずに業務へ

 就職活動の光景は、東京の風物詩のひとつです。シーズンともなると、ターミナル駅には慣れないリクルートスーツに身を包んだ学生たちが多く見られます。そして4月初頭には、これまた緊張した面持ちで年配者とランチタイムを過ごす彼らの姿も。

 しかし在宅勤務が普及しつつある現在、そうした姿も過去のものになりつつあります。2020年の時点で早々と導入していた企業では、新入社員が最初から在宅勤務というところもありました。

 ある企業ではこんな話も。

「新入社員がパソコンの前であいさつして、そのまま研修、業務に入ってもらったのですが、一部の管理職以外はいまだ誰も彼に会ったことのある人はいません」

 同様のことは今後、日本のあちこちで増加するでしょう。

 ここで気になるのは、企業の採用面接の動向です。いくら業務を在宅勤務にしても、選考段階では顔を見なければ話になりません。しかし採用段階も在宅勤務で完了するという企業が増加しているのです。

就職活動のイメージ(画像:写真AC)



 21世紀になり、就職活動にインターネットが欠かせないものになったことはよく知られています。多くの企業では就職情報サイトを通じて学生にエントリーしてもらい、会社説明会などの情報を流す方式を採っていました。

 しかしインターネットを使っても説明会、あるいは面接は実際に顔を合わせないとわからないというのが常識でした。

オンライン就職活動は2021も続くか

 しかし新型コロナウイルスの感染拡大のために、2020年は多くの企業がオンライン面接を導入しました。感染拡大で急きょ導入されたこともあってか、学生と企業の双方に戸惑いがあったことは否めません。

 2020年6月に公表された立教大学・中原淳教授の研究室が行った調査では、1次面接で95.6%、最終面接でも58.1%がオンライン面接を実施したことが示されました。ところが、希望していた就職、採用活動が「実現できている」としたのは、学生が21.7%、採用担当者は33.1%で、採用する側・される側の双方ともに、戸惑っていたことが明らかになっています(『東京新聞』2020年6月12日付夕刊)。

 問題山積のなかで行われた2020年のオンライン就職活動ですが、2021年も継続しなくてはいけないのでしょうか。

就職活動のイメージ(画像:写真AC)



 実際にオンライン面接を実施している企業を見ると、緊急避難的にというより、むしろ2020年よりスムーズに実施可能であると考える企業が多い印象です。ある企業では、その理由を在宅勤務に対する「慣れ」だと表現します。

「在宅勤務を導入した2020年は年配社員を中心に戸惑いがあったのは事実です。役員面接をオンラインで行った際には、受験者が慣れていないのか、背景に日常生活がそのまま映ってしまうというハプニングも起きましたが(笑)、マニュアルも整備したので今後は問題なく実施できるでしょう」

 また別の企業の人事担当者からは、就活生に対して気持ちが楽になったという人もいます。

「これまでは何度も面接に足を運んでもらって不採用にすることもありました。なかには上京する人もいたので、時間と費用を使わせるのが心苦しかったのですが、オンラインであればその心配がなくなります」

マナーや人柄が見えづらいオンライン面接

 在宅勤務がメインになっている企業では、採用面接もオンラインだけで完結させることに可能性と自信を持っているところも多いようです。ただ、やはり画面の向こうでの受け答えになるため、入退出時のマナーや細かな人柄までは判断が難しいと考える人事担当者も多いようです。

「合否の判断材料が、面接よりも大学名とエントリーシートに記入された情報になりがち」

という企業もあります。

 もちろん大学間の序列は常に存在しますが、面接にこぎつけてその壁を打ち破ることが困難になっている側面もあるのです。

就職活動のイメージ(画像:写真AC)



 企業にとっても、在宅勤務における業務の流れや社員間の交流の実施はこれからも課題となります。

 是非はともかく、現在敬遠されている雑談・飲み会から新たなビジネスのアイデアが生まれるのは、ごく一般的なことです。それらは在宅勤務ではカバーしきれません。

 世の中が激変するなかで、採用する側も、される側も試行錯誤はまだ続きそうです。

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