自分の居場所がまるわかり 乗車のお供「カーナビ」が普及したワケ

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自分の居場所がまるわかり 乗車のお供「カーナビ」が普及したワケ

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県庁坂のぼる

フリーライター

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いまや誰もが気軽に使っているネットの地図情報サービス。その進化の背景にはGPS、カーナビ、正確な地図の存在がありました。フリーライターの県庁坂のぼるさんが解説します。

普及は1994年頃から

 東京で働くビジネスマンは十数年前まで、ポケットサイズの地図帳をカバンに入れていました。客先を尋ねる際には、地図帳を片手に目的地へ。しかし、目印になる施設がない住宅地ではよく迷ったものです。

 そんな苦労も、2011年にGoogleマップが開発されたことで瞬く間に解消されていきました。

 また、Googleマップを始めとする地図サービスは近隣店舗などの情報を教えてくれるため、目的地に向かう途中で現金自動預払機(ATM)を使ってお金を下ろしたり、買い物もスムーズに行えたりします。

 というわけで、現在は個人が地図や地域の情報を得られるわけですが、その始まりはカーナビゲーション(以下、カーナビ)からでした。

カーナビのイメージ(画像:写真AC)



 カーナビの低価格化が始まったのは1994(平成6)年頃からで、普及当初は信じられないような未来感がありました。なにしろ、自分の運転しているクルマの現在地がわかるというシステムが壮大だったからです。

 カーナビやスマートフォンで現在地がわかるのは、人工衛星から得られた情報を使った衛星利用測位システム(GPS)によるもので、もとはアメリカが軍事用に開発しました。

 かつては「民生用のGPSは軍事用より精度を低くしているので誤差がある」という情報を真に受けて、「カーナビは役に立たない」と語っていた人は少なくありませんでしたが、1990年代半ばの時点で既にかなり高い精度となっていました。

成功の背景にあった住宅地図大手の技術

 カーナビの普及が進んだ理由はその位置情報だけでなく、正確な地図の存在が欠かせません。その立役者となったのが、地図情報会社の最大手・ゼンリン(北九州市)です。

 現在も国内で唯一、全国の住宅地図を製作しているゼンリンは、47都道府県すべての住宅地図の発行を始めた1980(昭和55)年に、手作業での地図作製の限界を見極め、コンピューター化に着手しています。

 それまで熟練した職人が手作業で製作していましたが、全国展開のためには規格と品質の統一が不可避でした。もちろん当時は地図作製ソフトが存在せず、完全にゼロからのスタートだったのです。

 そこから4年後となる1984年、同社は早くもコンピューター編集で東京23区版の住宅地図を製作しています。

 これを販売したところ、データ版での販売を求める要望が相次ぎ、最初は磁気テープでの販売だったものの、その後CD-ROMとなりました。

ゼンリンの東京本社がある千代田区神田淡路町(画像:(C)Google)



 三菱電機からの要望でこの頃製作されたのが、カーナビ用の地図ソフトでした。この先行投資は実を結び、ソニーはカーナビ「NVX-F10」を1993(平成5)年、それまでの半値に近い21万円(希望小売価格)での売り出しに成功。これを契機にカーナビの普及が始まると、需要は一気に高まります。ハードは各社がしのぎを削ったものの、地図ソフトはゼンリンなくしては成立しませんでした(『経済界』1994年11月22日号)。

 こうして安さとともに精度の高さで普及していったカーナビ。それを越える機能が、誰もが手にするスマートフォンの中にあるのです。道が複雑な東京では、いまやなくてはならない存在と言えます。

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