一歩間違えば炎上も? 「一般人あるある」ネタが最近、妙に増えたワケ

街中や身近な知り合いにいそうな一般人の仕草・言動をマネする「一般人あるある」ネタが最近SNSなどで人気です。ただし一歩間違えば“炎上”するケースも? フリーライターの苫とり子さんが最近のトレンドをリポートします。


TikTokも人気を後押し?

 総務省の2019年版「通信利用動向調査」によると、東京はインターネットおよびスマートフォンの利用率が47都道府県中1位。ネットの普及により情報へのアクセス機会が平等に得られるようになったとされる今日でも、東京の感度の高さは他都市を上回っているようです。

 とりわけ、もはや日常的なコミュニケーションツールのひとつとして定着しているのがSNS。その中でも近年10~20代の若者が集い、ありとあらゆるブームを生み出しているのが、ショート動画プラットホーム「TikTok」(ByteDance株式会社、日本支社:東京都・新宿区)です。

ショート動画が投稿できるSNS「TikTok」では、音楽やダンスだけでなく「あるあるネタ」も人気のジャンル(画像:Bytedance)



 2020年は新型コロナウイルスの影響で外出自粛を余儀なくされたことから、自宅での配信・視聴が楽しめるTikTokの動画は例年よりも盛り上がりを見せていました。

 TikTokは15秒から1分ほどの短い動画を配信できる中国発のサービスで、2017年に日本でリリースされました。

 これまでもTwitter社が運営する「vine」と呼ばれる同様のサービスが一時期人気を博しましたが、社内改編に伴いわずか数か月でサービス終了。2020年1月に「byte」として復活するものの、すでに若者の心を捉えていたTikTokの勢いにはまだ追いつけていない状態です。

 何よりTikTokが他の動画配信サービスと一線を画しているのは、既存の楽曲をBGMとして自分の動画で流せるということ。

「巷(ちまた)にいる女」シリーズ

 音楽聞き放題サービス「AWA(アワ)」と業務提携しており、TikTok内に追加された楽曲はどれでも自由に使うことができます。ただ面白いことに、TikTokでこれまで流行(はや)った楽曲は、誰もが知る有名アーティストの曲だけではありません。

 2020年大みそか放送の「第71回NHK紅白歌合戦」に初出場が決まったシンガーソングライター瑛人さんの「香水」は、リリースから約1年後に TikTokから有名になりましたし、 動画で自身の楽曲を発信していたひらめさんの「ポケットからきゅんです」というオリジナルヒットソングもTikTokから世に放たれました。

 基本的にはこれまでBGMと振り付けを合わせた他の人もパロディーしやすい動画が人気を博していましたが、サービスのリリースから3年という月日が経った今、どんどんと動画の内容も多様化しています。

 その中でも最近よく目にするのが、「あるあるネタ」を盛り込んだモノマネ動画です。その代表格となるのが、女性お笑いタレントとしても活躍する丸山礼さん。

 丸山さんはお笑い芸人ロバートの秋山竜次さんのモノマネで知名度をアップしましたが、TikTokでは「世間にいそうな一般人」のモノマネ動画を中心に披露しています。

 動画数は多くないものの、そのフォロワー数は何と30万人以上。「#巷(ちまた)によくいる女」シリーズとして、「明日の予定を聞いた上で無茶言う女」や「大学のプレゼンテーションで自分のノリが発表に支障をきたしてしまう女子大生」など、実際に目撃したことがあるかのような一般人のモノマネがフォロワーに受けているようです。

一般ユーザーも人気ネタ発信

 他にも、俳優の小栗旬さんに似ているということで話題となったお笑いコンビ「土佐兄弟」の土佐有輝さんの動画も人気。土佐さんは「#高校生シリーズ」として、学校にひとりはいるような男子高校生や先生のモノマネ動画を投稿しています。

 特に視聴回数が多いのは、「寝てる生徒起こしてその後の振る舞いがやたら明るくて逆に怖さ植えつけてくる先生」というタイトルが付けられた動画。しゃべる言葉も優しく笑顔なのに、最後の最後に真顔でひと言「やれよ」と生徒に突きつける先生の姿は、誰もが一度は見たことがあるのではないでしょうか。

 さらに丸山さんや土佐さんのようにテレビにも出演しているタレントだけではなく、モデルや俳優を本業としながらもTikTokを中心に限りなく一般人に近い目線で“一般人の”モノマネ動画を投稿しているユーザーも人気を集めています。

 例えば、21歳の岩田まあり さんもそのひとりです。岩田さんは女優が本業というだけあり、確かな演技力でよくいる女職人やコンビニ店員のモノマネを披露。

 友達がお店にやってきて思わずテンションが上がる店員や、男性の職人との会話でコミュニケーション力を発揮する、新人なのにベテラン感のある女職人の仕草が、妙にリアルで実際にその現場を目撃したわけじゃないのになぜか“あるある”に感じてしまう不思議さがあります。

 他にもピン芸人なかむた さん演じる、無印良品のアイテムに囲まれて丁寧な暮らしを送っていそうな「無印男子」や、岡山出身のみなへび さんがモノマネした「彼氏の周りにおったらだるい女友達」。

 西日本で一番仲のいい兄妹を名乗る橋本兄妹がコント形式で届ける、「クビやで」が口癖の新人に厳しいバイトリーダーの女性と後輩の男の子のバイトあるあるなど、「こんな人いるいる!」と笑えたり、自分が過去に経験した嫌な人とのやり取りを思い出してまったりと、共感度の高い動画が多いのです。

「一般人あるある」過去には炎上も

 思い返してみれば、一般人モノマネの先駆け的存在ともいえる芸を披露していたのは、柳原可奈子さんの「ショップ店員のモノマネ」だったように思います。

 柳原さんが一躍有名になったのは2007(平成19)年ですが、彼女の芸風と似ている横澤夏子さんも2010年代になってテレビ出演が相次ぎました。

「2019年春季交通安全キャンペーン」で魔法使いに役としてスペシャルムービーに登場するなど、幅広い活動を見せる柳原可奈子さん(画像:日本自動車工業会)



 これらの一般人モノマネはなぜ面白く感じるのでしょうか。

 それはモノマネをする人たちの観察力が高く、「何となくこの人をどこかで見たことがあるな」という自分の気持ちを言葉や演技で的確に表現してくれるからでしょう。

 有名人・著名人を模したモノマネは特定の人物を見ればすぐにわかりますが、一般人モノマネの場合は“実態”がありません。ゆえに普通の人であればその特徴がわかりづらいのですが、一般人モノマネをしている人たちは自分が日常で関わる人のちょっとした仕草をつぶさに観察しています。

 だからそのあまりにも細かすぎる指摘にじわじわと込み上げてくる笑いがあるのだと思います。

 ただ、観察力が高いということはイコール、他人を斜めから見る人と勘違いされることも。面白いと思って何の配慮もなく一般人のモノマネをすれば、「これは自分のことかもしれない」と見た人を傷つける場合があるのです。

 例えば、2018年に「午後の紅茶」を販売するキリンビバレッジ(中野区中野)が、同商品を飲んでいそうな女性を「午後ティー女子」と名付け、女性を揶揄(やゆ)するようなツイートをしたことで世間からバッシングを受けました。

最近のコンテンツが炎上しないワケ

 ですが、今回挙げた一般人モノマネで支持を集めている人たちの一般人モノマネ動画は、皮肉めいた部分があるにもかかわらず、炎上することはほとんどありません。

 それは彼らがどこか愛情を持って対象となる人物をまねしているからこそ、笑えるのと同時に何だか愛らしく見えてくるからです。

 岩田まあり さんやなかむた さんの動画もそうですが、一度バズった動画が反響を受けてシリーズ化しているのもその証拠。モノマネされるほどの癖がある人も彼らの手によって、いつの間にか人気者になる。

 ぺこぱさんの「誰も傷つけない笑い」が注目されるように、どんな人も肯定する一般人モノマネが若者の心を捉えているのかもしれません。


【画像】「あるあるネタ」注目の3組

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