都内「タピオカ店」と「老舗カレー店」 コロナ禍を生き残れたのは、どちらだったのか?

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都内「タピオカ店」と「老舗カレー店」 コロナ禍を生き残れたのは、どちらだったのか?

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星谷なな

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新型コロナ禍で特に影響を受けた業界のひとつが飲食店。それぞれが“生き残り”をかけて感染予防対策と集客に腐心しました。2019年に一大ブームを巻き起こしたタピオカドリンクの店と、長く続く老舗のカレー屋さんは、苦境にどのように対峙したのでしょうか。ライターの星谷ななさんがリポートします。

「タピオカは失速した」は本当か?

 タピオカドリンクを飲むことを称する、「タピる」。

 2019年、ユーキャン新語・流行語大賞にノミネートもしたこの単語を覚えているでしょうか。女子高生が、OLが、はたまたおじさんが、タピオカ店に長い行列を作り、太めのストローで力一杯吸い上げ、真っ黒い粒のモチモチ感を楽しみました。

 加熱するブームと並行してウェブメディアなどでは“ポスト・タピオカ”議論が盛り上がり、レモネード、チーズティー、台湾カステラなどに熱い視線が送られましたが、結局タピオカ一強は変わらず。

 この“タピオカ・バブル”、いつまでも続くのでは、と見られた矢先の2020年春、新型コロナウイルスの感染拡大で多くの飲食店が苦境に立たされたました。

 タピオカ店の閉店が相次ぐ、とのニュースもありました。世間では、「ポスト・タピオカの出現を待たず2020年、タピオカは失速した」との論調がもっぱら。でも、本当にそうなのでしょうか。

タピオカ店と老舗カレー店など、さまざまな飲食店がコロナ禍での対策を迫られた(画像:写真AC)



 振り返れば、2019年のタピオカブームはすごいものでした。

 渋谷、原宿のタピオカ専門店に大勢の人が詰めかけて、「6時間待った」とSNSに投稿した人もいました。大手コンビニ、ハンバーガー店、ドーナツ店など、異業種の企業もタピオカ販売に乗り出したことで流行を後押したのは間違いないでしょう。

 東京商工リサーチ(千代田区大手町)がまとめたタピオカ取扱店の動向調査によると、財務省の貿易統計で2019年1~7月のタピオカおよびタピオカ代用物の輸入量は約6300t。2018年1年間の輸入量約3,000tをわずか半年で倍以上も上回ったといいます。

「ニューノーマル」に乗って需要獲得

 ノリに乗って2020年に突入。しかし、すぐに新型コロナの感染が拡大し始め、その影響は今も続いています。

 苦境に陥った各飲食店。生き残り策として、これまでイートインのみだったお店も、テイクアウトを開始し、デリバリーなども取り入れ、ニューノーマル、つまり新しい飲食店の形が広がっていきました。

ブームは去ったと思われていたタピオカ。実はコロナ禍で参入企業は増えていた(画像:写真AC)



 しっかりその波に乗ったのがタピオカ店。実は、このコロナ禍でも、タピオカに参入する企業数は増えたのだとか。新型コロナでテイクアウト需要が高まり、すでに持ち帰り形式だったタピオカはスタートダッシュに成功しました。

 さらに人気タピオカ専門店がデリバリーを開始したため、「在宅勤務の合間にタピオカ」とオフィスで働いていたときと同じ感覚でありつけるようになりました。

 新型コロナで家に閉じこもりがちになる人が多かったところ、いつも食べていたもの、飲んでいたものが手軽に手に入ることは、コロナ禍の不安を多少とも払拭(ふっしょく)することに貢献したかもしれません。

 コロナ禍でタピオカは、一過性の飲み物から定番の飲み物になるチャンスを得たようにすら思えます。

今や懐かしささえ感じる「かつての日常」

 このコロナという厄災は、さまざまな新しい価値観をもたらした一方で、たくさんの大切なものを奪っても行きました。

 会社帰りになじみの店で食べる地鶏、うまい焼酎、陽気な店主や従業員との会話――。どんなにいいもの、いいサービスを提供し続けても失われてしまうものがあることを、コロナは私たちに教えたように思えます。

「新しい日常」が定着していっても、以前の生活の楽しさを忘れられるわけではない(画像:写真AC)



 いいものを長く残すというのは実は大変な苦労が必要だったのです。

 経済的、人手不足などでテイクアウトなどを導入できずに店を閉めたという話も聞きました。テイクアウト、デリバリーなどニューノーマルに乗っかれなければ今後は生き残れないのでしょうか。

テイクアウトも宅配もしない老舗店

 先日、筆者は東京・荻窪にある老舗のカレー店で食事をしました。食べログのカレーランキングで1位を取り、全国どころか海外からも客が訪れるほどの有名店です。

 テイクアウト、デリバリーを行わないこの店の味を楽しむためには、客同士の距離を取りながら順番待ちの行列に並ぶことが必要です。

 1時間半待ち、アルコール消毒をしてようやく入店。店内には4人がけテーブル三つに1組ずつ、カウンターも1席分、間隔を開けて座っていました。

 従業員の女性からは「食事中は会話をしないようにお願いします」と言われているので、店内に流れるジャズを聴きながら手間暇かけた絶品タンカレーをいただきました。

守り続けたい「オールドノーマル」の価値

 タンはホロホロ、カレーも家庭では絶対に出せない味わいで、1時間半待った価値以上の味でした。

 コロナ前から入店を待つ行列が長く長く伸びる店でしたが、コロナ以降は客同士の間隔を開けて営業するため、回転率は落ちているはずです。しかし、それでも客は待ち続けます。

「この店の味が好きだから」。これに尽きるのです。客は感染マナーを守って入店し、食事をする。店側も感染させないための対策を行い、回転率よりも客の命を考えて営業していたように感じます。

 客と店のお互いの思いやりが、コロナ禍を生き残るもうひとつの方法なのかもしれません。

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