外食は必ず復活する――2020年「流行グルメランキング」が語る大きな可能性とは

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外食は必ず復活する――2020年「流行グルメランキング」が語る大きな可能性とは

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有木真理

ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員

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ホットペッパーグルメ外食総研がこのたび、全国の20~30代の男女2075人を対象に行った「流行グルメ2020」の結果を発表しました。その結果からどのようなことがわかったのでしょうか。同総研上席研究員の有木真理さんが解説します。

コロナ禍で訪れた食のボーダレス化

 2020年も師走に入り、大変あわただしい時期となりました。

 新語・流行語大賞の発表や、2020年のトレンド振り返り、2021年のトレンド予測などがメディアをにぎわすなか、筆者(有木真理)が上席研究員を務めるホットペッパーグルメ外食総研(リクルートライフスタイル)でも、毎年恒例となる「流行グルメ」ついて調査を行いました。

 2020年の流行グルメを解説するにあたって避けて通れないのが、新型コロナの感染拡大です。この影響で、食の傾向は大きく前進したと考えられます。

 人々のライフスタイルはコロナ禍で変わりました。食の在り方も同様で、変化の主な要素は外食、中食、内食のボーダレス化です。

 緊急時代宣言で外食産業は休業が要請され、消費者も外出制限が要請されました。そのような状況を踏まえて、2020年の流行グルメの最大の特徴を挙げるとすれば、「目新しいものがなかった」ことです。

 そして調査上位にランクインしたものを分析すると、大きくふたつの特徴が見られました。

特徴のひとつめ「非日常感の再現」

 ひとつめは「非日常感の再現」です。新型コロナの影響で外食の回数は減りましたが、外食で経験したことのあるメニューを自宅でも楽しもうとする消費者が増えました。

 上位にランクインした三つをまずは解説しましょう。2020年流行グルメ第1位に輝いたのは、「バスクチーズケーキ」です。

バスクチーズケーキ(画像:Cake.jp)



 バスクチーズケーキはスペインで定番のスイーツですが、日本では2018年に東京の白金(港区)に専門店がオープン。行列を作ったことで、新しい感覚のチーズケーキとして注目を集めました。

 その後専門店が続々と増え、主要コンビニエンストアで発売されたことで大衆化が進み、大きなブームとなりました。昨今はそれを自宅で再現し、SNSで発信する消費者が増えています。

 第2位は「キャンプ飯」、第3位は韓国発祥の「ダルゴナコーヒー」です。

 キャンプ飯はその名の通り、キャンプのようなアウトドアで楽しむ食事。2020年は密回避のなかでも楽しめる活動としてキャンプやBBQが再注目されましたが、その食事も注目されました。スモークなど本格的なグリル機などを使い、ベランダでキャンプ気分を味わう消費者も増えたようです。

 ダルゴナコーヒーはカフェや専門店のテイクアウト商品でしたが、どちらも「自宅で作った」というコメントとともにSNSに登場する回数の多いグルメでした。

 第1位から3位までのグルメに共通しているのは、「手間がかかる」「作り方が難しい」と思われていることですが、自宅で過ごす時間が増えたことでレシピサイトやYouTubeなどで作り方を検索し、出来上がったものをSNSにアップするという行動が増えました。

特徴のふたつめ「プチぜいたく」

 2020年の流行グルメのもうひとつの特徴は「プチぜいたく」です。

 これを代表するランクインは、4位の「食パン」、6位「フルーツサンド」、8位の「バナナジュース」など。いずれも「ちょっとぜいたくだが手に入りやすい」価格帯のグルメです。

 食パンについては高級食パンの専門店が全国に出店し、1本1000円程度の商品が飛ぶように売れました。フルーツサンドも、こだわりの高級フルーツやクリームをふんだんに使った、断面がSNS映えする商品に注目が集まりました。

色とりどりのフルーツサンド(画像:大丸松坂屋百貨店)



 また、手に入りやすいフルーツの定番・バナナについては、バナナジュース専門店がオープンしたことに加え、1本800円から2000円までの商品まで登場し、注目を集めました。

ブームの裏にはSNSの影響

 このようなものがランクインした背景にはどのようなことが考えられるでしょうか。ホットペッパーグルメ外食総研では、コロナ禍で食べ物や食生活の意識変化について調査を行いました。

「コロナ禍での食生活の意識変化」についての調査結果(画像:リクルートライフスタイル)

 第1位に「娯楽が減ったので食べ物でちょこっとぜいたくをしたくなった」と回答した消費者が34.7%。同アンケートの4位には「非日常が味わいたくなった」と16.8%の人が回答という結果が出ており、ランキング結果が出る裏付けとなりました。

 ランキングのTOP10に入ったグルメを再度見ると、9位「スムージー」、10位「いちごあめ」と、2020年を象徴する「目新しさのある」グルメは少なかったものの、いずれも外で楽しんでいたものを「自宅で楽しめる」「再現性のある」ものがランクインしました。

 以前自粛傾向は続くなか、ブームとなった裏にはSNSの影響が大きいと言えます。

見直される「外食の価値」

 今後に関して、どのような流れがやって来るのでしょうか。筆者は、自粛期間が長引いたことで「外食の価値」が見直されていくと考えます。

 外食の価値とは、その時、その場所に行かなければ味わうことのできない体験にあります。

 料理、サービス、空間の価値だけではなく、そこで生まれるコミュニケーションなど、人と人がつながる価値。店に向かうまでのロケーション、接客してくれたスタッフ、隣に座っていた別のグループの客、すべての偶然が重なり、外食の価値となるのです。

家では味わえない外食のイメージ(画像:写真AC)



 外食の価値と付帯サービスによる売り上げ向上で、外食産業に携わる人たちがさらに商売繁盛となり、幸せであふれることを願ってやみません。

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