「恋愛」こそ人生の最重要だった時代……柴門ふみ著『恋愛論』はいかにして生まれたのか
2020年12月14日
ライフ1990年代初頭、人々の関心は「恋愛」に注がれていました。その時代を象徴するかのような1冊が、恋愛漫画の名手・柴門ふみによる『恋愛論』です。このベストセラー本はいかにして誕生したのか? フリーライターの小西マリアさんが平成史をたどります。
恋愛書籍が飛ぶように売れた
価値観の変化や経済的事情。理由はさまざま、個人の事情があるのでしょうが、気がつけば個人の人生の中で「恋愛」を最も重要な要素だと考える時代は過去のものになっています。
でも、そんな時代だからこそ、ふと考えるのが、個人の感情である恋愛が最重要視され、さまざまな文化や商売の原動力になった時代があったということです。あれは、いったい何だったのでしょう。
1990(平成2)年頃、世の中では恋愛をテーマにしていた書籍が飛ぶように売れていました。
鴻上尚史『恋愛王』、二谷友里恵『愛される理由』、風間研『大恋愛』……。難解な哲学書であるロラン・バルトの『恋愛のディスクール・断章』も10刷を越えていました。
そうした中で特に「あの本、読んだ?」と話題になっていたのは柴門ふみの『恋愛論』(PHP研究所)でした。
柴門ふみといえば、『東京ラブストーリー』などで知られる恋愛漫画の超売れっ子。2020年12月現在も、TBSテレビ系で絶賛放送中のドラマ『恋する母たち』の原作者です。
90年代初頭の華やかな東京の街を舞台にドラマ化された「東ラブ」は、バブル時代のトレンディードラマの代表格となり、以降、柴門ふみを指して「恋愛の教祖」といったふたつ名が広がっていくわけです。
となると、当時を知らない人は「『東京ラブストーリー』がヒットしたから関連本として『恋愛論』を出したのか」……と思いそうですが、そうではありません。
『東京ラブストーリー』のドラマの放送が始まったのは1991年1月、対して『恋愛論』がPHP研究所から刊行されたのは1990年7月。
そう、世間が「柴門ふみの恋愛に対する視点は面白いなあ」と話題にしていたところに、ドラマが始まって大ヒットに至ったというわけです。
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