「GoTo停止」は関係なし? 近年自宅でアウトドア気分を味わう人が増えているワケ

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「GoTo停止」は関係なし? 近年自宅でアウトドア気分を味わう人が増えているワケ

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中村圭

文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナー

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新型コロナウイルスの第3波の影響で外出がためらわれるなか、室内レジャーとして注目を浴びているのが家の中でアウトドア気分を味わう「家キャン」「部屋キャン」です。文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが解説します。

「Go To トラベル」全国一斉に一時停止

 そろそろ冬休みが待ち遠しい時期になってきました。例年なら旅行やさまざまなイベントが楽しみですが、新型コロナウイルスの第3波が収まらず、いつも通りの冬休みにはなりそうもありません。

 政府も12月14日(月)、観光支援事業「Go To トラベル」を12月28日(月)から2021年1月11日(月)まで全国一斉に一時停止することを決定しています。

 北海道を代表する冬の一大イベント「札幌雪まつり」は中止が決定しています。このまま拡大し続ければ、また非常事態宣言が出る可能性も否定できません。リスクを考えれば「密」を避けて、基本的にステイホームの冬休みとなりそうです。

外出自粛に注目「家キャン」「部屋キャン」

 しかし、せっかくの休みですから、いつもと違うレジャーを楽しみたいと考えるのも当然です。

 春先のコロナによる外出自粛期間、家の中にテントを張ったりしてアウトドア気分を味わう「家キャン」「部屋キャン」をする人が見られました。「へやキャン」と言う言葉自体は元々、人気マンガ・アニメ「ゆるキャン△」(あfろ著、芳文社「COMIC FUZ」連載)で使われ、作品内で部屋でキャンプしていた訳ではありませんが、一部には浸透していました。

家キャンのイメージ(画像:写真AC)



 今は収納袋から出すだけで立ち上がる便利なテントがあり、家の中でも簡単に設営することができます。また、ネイティブ・アメリカンのテントのようなかわいいティピーテント(ワンポールテント)も出回っています。テント以外にもランタンやテーブル、シェラカップ、カトラリーなどさまざまなキャンプギアを持ち込むと雰囲気が出ます。

 キャンプギアは洗練されたデザインのものが豊富で、機能性も良いため、日常使いするファンが増えているほどです。2020年の冬休みは家キャンで雰囲気のあるキャンドルナイトを楽しむのも良いでしょう。

アウトドア感覚が楽しめるホテルも

 海外の映画の中には、家キャンのシーンが度々見られます。

 例えば「幸せのレシピ」(2007年)では、主人公女性シェフのケイトと恋人となるニック、めいっ子の3人で家キャンをナイトサファリ気分で楽しみました。このような映画のワンシーンを参考にするのも一興でしょう。

 テントがなくともシーツを張り巡らして壁や窓が見えないようにリビングスペースを遮断するとテントっぽい空間が演出できます。テントの中にラグやブランケット、お気に入りのぬいぐるみ・フィギュアなど持ち込んで、自分の心地の良い空間を確保。食事は床にクロスを敷いてみんなで手作りした料理を座って食べるとキャンプ気分が盛り上がります。

 もちろん、手作りではなくケータリングやテイクアウトでも構いません。今や飲食店はかつてないほどテイクアウトが盛んで、年末年始のイベントに向けて一流ホテルや高級レストランでも温めるだけのゴージャスなディナーセットを販売しています。

自宅でのキャンプ体験を取り上げた雑誌(画像:世界文化ホールディングス)



 家だけでなく、ホテルでもステイケーション(自宅や近場で休暇を過ごすこと)の一環として、部屋にテントを張ってアウトドア感覚が楽しめるキャンププランも見られます。

 アウトドアメーカーがコラボする施設ではホテルの部屋にテントやタープ(日よけ・雨よけに使うシート)を設営、寝具はシュラフが用意されています。キャンプ初心者でも安心して楽しめ、雨天でも決行できるといった利便性も背景にあるのでしょう。中にはゲストハウスのウッドデッキにテントを設営しているものも。

2003年から盛り上がるキャンドルナイト

 部屋の電気照明を消してキャンドルの明かりだけ夜を過ごすキャンドルナイトも注目されています。

 クリスマスを過ごすにはぴったりな雰囲気ですが、キャンドルナイトは2000年代にアメリカで始まったムーブメントで、当初は環境問題などへのメッセージがありましたが、今は人と人のつながりを見直すスローライフイベントとして実施されています。

 日本でも2003(平成15)年から「100万人のキャンドルナイト」が実施されています。夏至と冬至の20時から22時までの2時間をみんなで消灯、緩やかなつながりを感じるイベントで、2020年も12月21日(月)から27日(日)までの1週間に実施予定。過去にはそれに合わせて東京タワーがライトダウンするなどの取り組みも見られました。

新宿中央公園で12月25~26日に行われる「Candle Night @ Shinjuku Central Park」のイメージ(画像:小田急電鉄)

 キャンドルの揺らぐ明かりには、単純に癒やしを感じます。アロマキャンドルを使ったり、お風呂に浮かぶキャンドルを持ち込んだり、リラックスのために日頃からキャンドルナイトを楽しむ人も多いでしょう。家キャンなら、シーツにキャンドルの明かりが反射して家の中でも幻想的な気分が味わえます(くれぐれも火事には気を付けてください)。

 街中はどこでもクリスマスイルミネーションがあふれていますので、キャンドルの仄(ほの)暗いクリスマスは逆に新鮮に感じるかもしれません。東京では電灯を消しても星はなかなか見えませんが、キャンドルナイトで少しSDGs(持続可能な開発目標)について考えてみるのもいいかもしれません。

 しかし、「家・部屋 = インドア」にもかかわらず、アウトドア感覚というのも不思議なことです。

グランピングの登場で変わったアウトドア市場

 わが国では2015年頃からグランピング(ホテル並みの設備やサービスを利用しながら、自然の中で快適に過ごすキャンプのこと)の概念が上陸したことを契機に、90年代に続く第2次アウトドアブームを迎えています。

首都圏のグランピング施設のイメージ(画像:BUB)



 しかし、近年のアウトドアは自然の中のレジャーという概念から離れ、あまり自然が感じられないような立地にもグランピングサイトが開発されています。たとえ周辺には自然があるリゾート立地であっても、広い駐車場のようなスペースに幾つもキャビンが整列している場合もあります。

 むしろ都市部の施設内に砂を敷いたり、植栽したりしてアウトドア的な環境演出をして、ビルの屋上などでキャンプしたり、バーベキューをしたりする都市型アウトドア施設が増えている状況です。

 今回のブームではアウトドアの技術や手間が必要ないグランピングの登場によって比較的ライトなユーザーが増加し、アウトドアのマーケット全体を底上げしました。

 ライトユーザーはアウトドアにサバイバル要素をあまり求めていません。2010年代から野外ごはんブームや手ぶらバーベキューブームの流れのなかで、特にバーベキューやダッチオーブンなどのアウトドアフードに興味のある人が増え、グランピングでも自然の中のアクティビティよりも食に重点を置く傾向が見られます。

 一方、近年進展した日常生活のアップスケール化(高級化)も背景にあります。バブル崩壊、リーマンショックを経て、若い層を中心に日常生活を重視するライフスタイルが定着していき、今は家で過ごす時間の長いインドア派が増えています。

 自動車を購入する若者が減少し、遠出が面倒くさくなったということもあるでしょう。日常の中でちょっとした非日常感を味わいたいというニーズならば、家キャンや都市型アウトドアはちょうど良いかもしれません。

 この冬休みはコロナの感染リスクに気を付けてさまざまなアウトドアを楽しんでください。

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