航空と旅行の安全祈願!羽田のお稲荷さん 穴守稲荷神社―東京神社案内【15】

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航空と旅行の安全祈願!羽田のお稲荷さん 穴守稲荷神社―東京神社案内【15】

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石津祐介

ライター、写真家

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東京都には約2,000社の神社があると言われています。初詣や祈願成就で参拝したり、散歩がてらに立ち寄ったりと神社に行く機会は何かと多いのでは。そこで本シリーズでは、写真家の石津祐介さんが神社の見どころや土地とのつながり、オススメの授与品を紹介し、神職の方からお話を伺います。第15回は「穴守稲荷神社」です。

航空関係者の崇敬を集める穴守稲荷神社(画像:石津祐介)



●穴より入ってくる災いから地域を守るお稲荷さま

 駅名にもなっている「穴守稲荷」は、羽田空港にほど近い地に鎮座し「豊受姫命(トヨウケヒメノミコト)」をお祀りする稲荷神社です。今回は、権禰宜の椿拓磨さんに神社を案内していただきました。

「かつて現在の羽田空港に当たる場所は、干潟を埋め立てた新田開発が行われていました。ある時、埋立地を守る堤防に水害で大きな穴が開きましたが、堤防の上に祀られていたお稲荷さまによって穴が塞がり、その後は五穀豊穣して栄えたという話から、穴より入ってくる災いから地域を守るお稲荷さま『穴守稲荷大神』として崇敬を集めるようになりました」(椿さん)

穴守稲荷神社の社紋(画像:石津祐介)

●東京を代表する一大観光地

 明治になると穴守稲荷神社とその周辺地域は、観光地として大いに栄えます。電車を利用して神社を参拝する日本初の「神社参詣電車」として京浜電鉄穴守線(現在の京急空港線)が開業し、鉱泉旅館、海水浴場、競馬場、運動場、動物園などが集まる首都近郊の一大観光地として発展します。

「穴守稲荷は関東の『お稲荷さん信仰』の中心として大いに栄え、奉納された鳥居は4万6千基以上あったと伝わります。当時は今の浅草や江ノ島のような観光地で、羽田の地は門前町として大いににぎわいました」(椿さん)

4万6千基以上あったという鳥居(画像提供:穴守稲荷神社)

●飛行場と航空稲荷社

 大正に入ると神社門前に日本飛行学校が開校し、昭和には境内の裏手に羽田空港の前身となる東京飛行場が開港します。

「飛行学校の生徒が飛行訓練前夜に、油揚げをお供えしたところ上手く飛べたという逸話があり、それが穴守稲荷の航空安全祈願の始まりとなっています」(椿さん)

昭和6年に開港した東京飛行場(画像提供:穴守稲荷神社)

 戦後、東京飛行場拡張のため神社周辺の土地は連合国軍によって強制的に接収されたため、ただ一基の大鳥居だけを残して現在の場所に移ります。

「かつて神社があった場所は、現在の羽田空港B滑走路の南端付近になります。昭和30年には、元の本殿があった場所に旧ターミナルビルが開館、同時に穴守稲荷の分社が屋上に祀られ、以後空港の守り神として信仰を集めました。のちの空港沖合展開に伴う旧ターミナルビル撤去によって、本社に合祀されましたが、多くの航空関係者や空港利用者から信仰を集めた歴史を鑑みて、令和の大改修の際に『航空稲荷』として再び一祠を設けることになりました」(椿さん)

旧ターミナルビルに鎮座していた空港分社(画像提供:穴守稲荷神社)
唯一空港内に残された大鳥居(画像提供:穴守稲荷神社)

 穴守稲荷神社は、多くの航空関係者が参拝することでも知られており、毎月17日には空港分社時代から続く「航空稲荷月次祭」、毎年9月20日の空の日には「航空安全祈願祭」が行われています。

手前から航空稲荷、末廣稲荷、幸稲荷、築山稲荷(画像:石津祐介)

●千本鳥居と奥之宮

 境内にある千本鳥居を抜けると奥之宮があり、奉納された無数の小さな鳥居や狐の置き物が並んでいます。また2023年5月には『無窮の鳥居ネオン』が、新たに奉納されました。

「かつて空港周辺には多くのネオンサインが並び、羽田はネオンの街とも称されていました。鳥居ネオンは、かつて4万6797基あった千本鳥居の復興プロジェクトの一環として奉納されました」(椿さん)

多くの鳥居が並ぶ千本鳥居(画像:石津祐介)
奥之宮と稲荷山(画像:石津祐介)
『無窮の鳥居ネオン』(画像:石津祐介)

●人気の授与品や御朱印をいただこう

 御神穴でいただける「あなもりの砂」は、厄除招福や千客万来のご利益があり幸運の砂として人気があります。その砂を詰めたお守り「神砂袋」は全5色あり、色ごとにご利益があります。

 また強制退去の際に、元の境内に取り残され埋め立てられてしまったものの、町の人によって掘り出されて持ち帰られたお狐さまをあしらった「福徳守」は、必ず帰って来られるというご利益から、航空安全、還帰必成、旅行安全のお守りとして人気です。

「神砂袋」(上)と「福徳守」(下)(画像:石津祐介)
元の境内地に取り残されたが、のちに神社へ戻ってきたお狐さま(画像:石津祐介)

 御朱印は「御本社」「奥之宮」「稲荷山登拝」の通常御朱印と、毎月17日及び空の旬間(9月20~30日)限定「航空稲荷」の4種があります。オリジナルの御朱印帳に加え、航空会社とコラボした御朱印帳も人気です。

穴守稲荷神社の御朱印とオリジナルの御朱印帳(画像:石津祐介)
航空会社とコラボした御朱印帳(画像:石津祐介)
今回、神社を案内していただいた権禰宜の椿さん(画像:石津祐介)

■穴守稲荷神社(あなもりいなりじんじゃ)
住所:東京都大田区羽田5-2-7
TEL:03-3741-0809
御守授与・御朱印受付:8:30~17:00
昇殿参拝・御祈祷受付:9:00〜16:00
アクセス:京急空港線「穴守稲荷駅」より徒歩3分
京急空港線・東京モノレール線「天空橋駅」より徒歩5分

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