恋人をほのめかす「匂わせ」は90年代から? 華原・浜崎もハマった「ペアアクセサリー」の記憶

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恋人をほのめかす「匂わせ」は90年代から? 華原・浜崎もハマった「ペアアクセサリー」の記憶

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平成ガールズカルチャー研究家

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恋人と指輪やブレスレットを身に着ける「ペアアクセ」、皆さんは試したことありますか? 90年代後半頃、ペアアクセの一大ブームが起こりました。恋人の存在を暗示する、今で言う「匂わせ」の元祖的なアイテム。その変遷と現代との比較を、平成ガールズカルチャー研究家のTajimaxさんが解説します。

クリスマスプレゼントの定番

 クリスマスの時期が徐々に近づいてくると、情報誌やファッション誌であふれるのが「クリスマスのデート特集」。

 流行(はや)りのデートスポットや過ごし方の提案など、カップルや恋愛が順調に進んでいる人たちにとって欠かせない情報源です。

 2020年は「withコロナ」で過ごす初めての冬になり、過ごし方もだいぶ変わるものと思われます。

 今回は90年代に流行ったペアアクセサリーと共に、現代のカップルのコミュニケーションについて考えたいと思います。

90年代にペアアクセが流行した背景

 現代では「匂わせ」なんていう、Instagram(インスタ)などSNSでパートナーがいることをほのめかす意味の言葉が生まれましたが、90年代は主にペアアクセサリーが立派な「匂わせ」ツールでした。

 90年代後半、カルティエのブレスレット「ラブブレス」を筆頭に、ティファニーのアトラスシリーズ、GUCCIのIDドッグタグ、クロムハーツなど、ハイブランドをメインにカップルの人気ペアアクセサリーとして流行しました。

 90年代初頭のバブル期からさまざまなデートスポットの名所が東京に生まれたこともあり、当時は総じて「デートスポット」が注目されていた時代。都内のおしゃれなスポットへ出かけるのが恋人たちの定番でした。

 一方、カップルにまつわるテーマで言えばペアアクセサリーブームとそれによる「匂わせ感」もこの時代の特筆すべき事象だったと筆者は感じます。

 しかし、なぜここまで流行ったのでしょう?

華原、浜崎らが身に着けていた名品

 華やかなバブル期の残り香がまだまだ色濃かった時代の空気感もありますが、一般的に広まったのは、歌手の華原朋美さんや浜崎あゆみさんが当時付き合っていた相手とおそろいで着けていたことから。

2000年の雑誌『GiRLPOP』で「ラブブレス」を着けた姿を披露した浜崎あゆみさん(画像:Tajimax、エムオン・エンタテインメント)



 いろいろなハイブランドのペアアクセサリーが流行しましたが、ダントツで人気だったのが前述したカルティエ「LOVE COLLECTION-ラブコレクション-」の中の名品「ラブブレス」です。

 このラブコレクションのジュエリーに施されている刻印は「○」の中心に横線が1本引かれているもので、これは「愛を封じ込める」という意味合いを込めてビスのモチーフをデザインしているものなのだそう。

メッセージ性の高い仕掛けも売り

 このラブブレスはひとりで着け外しするのがとっても大変で、ビス(ネジ)を留めたり、外したりしなければならない作りになっています。

 着けるときは専用の工具で両サイドのネジを留め、手首に固定します。

 贈る相手に着けてあげるという行為が、贈り主からの「愛を封じ込める」「愛の証」を表現しているのです。

「愛の証」というメッセージ性がラブコレクション人気の理由ですが、特にこの取り外しの作業工程は「ひとりじゃできないこと」が「ふたりでならできる」というイメージにつながるからなのではないでしょうか。

CDジャケット、雑誌撮影で堂々と披露

 華原朋美さんの場合はCDアルバム『LOVE BRACE(ラブ・ブレス)』のジャケットや曲タイトルで、浜崎あゆみさんの場合は雑誌インタビューの中の写真で着用姿を披露。当時は誰と付き合っているとは言わなくても隠すことなく堂々と「ラブブレス」を身に着けていました。

1998年の雑誌『東京ストリートニュース!』。カップル用のペアリング特集が組まれた(画像:Tajimax、学習研究社)



 かなり値の張る物であるにも関わらず瞬く間に人気となり、たとえ実際には買えなくてもあこがれた女性は多かったものと思います。

 1997(平成9)年~1999年頃の雑誌を振り返ると、バブルな時代では全然ないのに高価な物が多いのも特徴的だったのがこの時代。

 中にはロレックスの高級時計などもあり、その豪華ぶりに舌を巻きます。東京都内には海外ブランドを中心に数々のブティックが店を構え、若いカップルも来店していました。

脱・モノ? 現代版の「匂わせ」スタイル

 比べて現代ではどうでしょう?

 現代でもペアアクセサリーをはじめとする、いわゆる「ペアもの」はまだまだ人気がありますが、90年代と比べるとよりカジュアルな傾向にあるという印象です。

 例えばペアウオッチだとダニエル・ウェリントンやアディダスのスタンスミスシリーズなど、普段でもあまり気負うことなく身につけられるカジュアルものが多くなりました。

 現代では、インスタなどに投稿する、おそろいのカップやふたり分の手料理が映り込こんでいる画像のような、データによる「匂わせ感」が主流にあると筆者は感じます。

 また普段はおそろいのアイテムを身に着けていなくても、東京ディズニーランドに行けばペアルックの「カップルコーデ」をするなど、現代でも人気の「ペアもの」はあります。

 その背景にはやはりSNSの発達があり、インスタに「映え」る画像をアップするという目的もかなえるため、「モノ」ではなく「データ」が中心というのが90年代とは大きく異なる点と言えるでしょう。

 ただ、いくらSNSが主流と言えども、モノよりデータが多くなったのにはほかにも理由がありそうです。

デジタルへシフトする価値観

 感情や思い出が詰まったモノと、単純にモノそのものに価値を見出しているのとで意味合いは違ってきますが、感情や思い出が残るモノの場合、後々あまり手元に置いておきたくなくなったり、次の恋愛に進みづらくなったり、また次に付き合った人になんとなく申し訳なく思ったりするようになるというのが常です。

 熱が帯びているカップルには酷な話ですが、モノで残すと破局後に結局いらなくなるのです。

 また、現代はマッチングアプリなどのツールのおかげで男女の出会いや交際までの流れがより気軽になったのも、こうした変化の一要因。

 あまり重苦しくなく、より気軽によりライトに。現代は「マッチングアプリ戦国時代」とも言われますが、コロナ年の2020年はその傾向により拍車がかかったことでしょう。

 そして、もし別れた後にモノが残ったとしても、メルカリなどフリマアプリで簡単に売りに出せるようになりました。このことも、ライトな感覚をいっそう推し進めた一因だと筆者は考えています。

1周回ってモノが持つ「エモさ」

 2020年は瑛人さんの楽曲「香水」が大ヒットしました。

 前年4月に配信でリリースしたのにも関わらず、約1年たった2020年4月頃から新型コロナ感染拡大によるステイホームが後押しとなり、TikTokなどに「歌ってみた」動画を上げる人たちが急増、爆発的な人気となりました。

 この曲の第一印象として「ドルチェ&ガッバーナ」というワードが耳に残ったのも筆者だけではないはずです。

瑛人さんの楽曲「香水」は、歌詞に歌われた「ドルチェ&ガッバーナの香水」が売り切れになるほどの話題に(画像:資生堂)



 筆者は「香水」を聴いたとき、ブランドのイメージを歌にのせるという手法を「なんだかエモいな」と感じました。

 1996(平成8)年に華原朋美さんの「LOVE BRACE」が流行しましたが、アルバムジャケットからカルティエの「ラブブレス」をイメージさせる演出や、モノを通して相手への想いを感じるという点で、どことなくこの「香水」という曲にも「LOVE BRACE」と似たような懐かしさを覚えます。

こんな時代だからこそモノが持つ意味

 ポケベル、PHS、携帯と、通信手段が着実に発達していった90年代ですが、現代と比べると当時はやはり通信手段の遅さや不便さやまどろっこしさがありました。

 比べて現代はSNSで気になる相手の様子を知ることができ、LINEですぐ連絡が取れ、また相手が文面を読んだかどうかも「既読マーク」で確認することができます。

 コロナ禍で恋愛様式も変化してきている現代ですが、いつでもつながっているこんな時代だからこそ、あえて「ペアのモノ」を通して相手を想うのも、面白いかもしれません。

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