推薦入学者が少なめ? 女子学生数も約2割アップした「明治大学」とはどのような大学なのか

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推薦入学者が少なめ? 女子学生数も約2割アップした「明治大学」とはどのような大学なのか

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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都内の難関私立大学群「MARCH」の「M」として知られる明治大学。同大は偏差値だけでなく、さまざまな魅力を持つ大学でもあります。教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

女子法曹教育におけるパイオニア

 東京の私立大学で、最も知名度の高い学校のひとつである明治大学(千代田区神田駿河台)。そんな明治大学ですが、リクルートマーケティングパートナーズ(品川区上大崎)の運営するリクルート進学総研が高校3年生を対象に実施した「進学ブランド力調査2020」で、関東エリアの志願したい大学1位に選ばれました(有効回答数1万9050人、集計対象数1万6718人)。

 2020年4年ぶり1位に返り咲きましたが、毎年人気上位にランクインしており常に受験生から高い人気を誇っています。

千代田区神田駿河台にある明治大学(画像:(C)Google)



 明治大学の歴史は古く、岸本辰雄と宮城浩蔵、矢代操が1881(明治14)年、現在の有楽町にあった旧島原藩神屋敷跡に明治法律学校を開校したことを起源としています。

 創立者全員がフランス法律を学んでいたため、当初はフランス法学系の学校でした。開校から5年後には現在の本部である神田駿河台に移転し、現在に至ります。

 2021年に創立140周年を迎える明治大学は1920(大正9)年4月、大学として認可が下されました。これは私立大学として、早稲田大学(新宿区戸山)と慶応大学(港区三田)に次いでいます。

 世間一般的に男子学生が多く「バンカラ」なイメージを持たれがちな明治大学ですが、実は日本の教育史の中でも女子の法曹教育におけるパイオニアという顔を持っています。

 1929(昭和4)年、女子が男子と同じように高等職業に就けるよう専門部女子部(法科、商科)を開校。1938年にはこの女子部で学んだ中田正子と久米愛、そして三淵嘉子の3人が女性として初めて高等文官試験司法科試験に合格しました。

 このように、女性が男性と同じような職に就くのが極めて難しかった時代に、法曹界への女性進出の先駆けとなる人材を明治大学が輩出しているのは特筆すべきことでしょう。

10学部28学科の総合大学

 明治大学の公式データによると、2019年度の全学生のうち、女性が占める割合は約35%です。また2012年度と比べると女子学生数が16.8%増加しており、かつてのバンカラなイメージから変貌を遂げています。

 また、東京23区内には駿河台キャンパスのほか、和泉キャンパス(杉並区永福)、中野キャンパス(中野区中野)があり、神奈川県川崎市には生田キャンパスという計四つのキャンパスを持っています。

駿河台キャンパスの場所(画像:(C)Google)



 学部学科も多く、

●法学部
・法律学科

●商学部
・商学科

●政治経済学部
・政治学科
・経済学科
・地域行政学科

●文学部
・文学科
・史学地理学科
・心理社会学科

●理工学部
・電気電子生命学科
・機械工学科
・機械情報工学科
・建築学科
・応用化学科
・情報科学科
・数学科
・物理学科

●農学部
・農学科
・農芸化学科
・生命科学科
・食料環境政策学科

●経営学部
・経営学科
・会計学科
・公共経営学科

●情報コミュニケーション学部
・情報コミュニケーション学科

●国際日本学部
・国際日本学科

●総合数理学部
・現象数理学科
・先端メディアサイエンス学科
・ネットワークデザイン学科

と、10学部28学科に3万462人が在籍しています(2020年度)。

付属校があるが、一般入試組も多い

 明治大学は他の有名私立大学と同じように三つの付属校(明大明治・明大中野・明大八王子)があります。

 また、指定校推薦といった制度を使って入学する受験生も多く、一般入試を受ける受験生にとって狭き門となっています。特にここ数年は私立大学定員厳格化もあり、一般入試組にとっては厳しい状況です。

2019年度 学科別就職率(画像:明治大学)



 しかし、明治大学は他の私立大学よりも一般入試の定員が多い大学なのです。2020年度入学者7272人のうち一般入試を経て入学したのは4996人です。つまり、68.7%が筆記試験に合格をした学生になります。

 例えば、法学部という条件で比べると、慶応大学では9月入学が主流のニューヨーク学院の卒業生を除いた四つの付属高校から2020年度に法学部に進学したのは416人です。

 法学部の4月入学者数1248人のうち、約33.3%が内部進学生になります。そこに指定校推薦の185人とFIT入試(AO入試)合格者213人を加えると、約65.2%という数字になります。

 つまり、慶応大学の法学部に入るには、付属学校で法学部進学に向けて校内成績を維持するか、指定校推薦またはAO入試経由が主流となっています。

一般入試による入学者は70%

 一方、佐賀や大阪、そしてシンガポールにも系列校や付属校合わせて7校を持つ早稲田大学の法学部ではどうなのでしょうか。

 入学者数740人に対し付属系列校からの入学者は198人、つまり全体の約26.8%を内部進学生が占めています。AO入試合格者3人と指定校推薦組166人を含めると約49.6%。ほぼ半数近くが内部進学生と指定校推薦やAO入試合格者なのです。

2019年度 主な就職先(画像:明治大学)

 明治大学の三つの付属高校から2020年度に法学部に進学したのは合計114人です。入学者数947人に対し約12%を占めています。法学部はAO入試を実施しておらず、他にスポーツ推薦や指定校推薦があります。

 データが全てそろっている2019年度入学試験の結果をみると、法学部へ進んだ内部進学生は117人、指定校推薦は110人、そしてスポーツ推薦が34人でした。これらを合わせると、2019年度に法学部に入学したうち30%にあたります。近年の私立大学の中では控えめな数字です。

 もちろん、付属高校や系列校の数の違いはありますが、明治大学は有名私立大学の中でいまだに一般入試組に門戸を開いていると言えます(法学部における一般入試入学者の割合。慶応:34.8%、早稲田:50.4%、明治:70%)。

一般入試生への大きな希望に

 私立大学は教育機関ですが、一方で経営面にも力を入れなければなりません。そのためには、少子化が進むなかでも内部進学生や推薦そしてAO入試を活用して「学生を確実に集める」ことが重要視されています。

明治大学のウェブサイト(画像:明治大学)



 もちろん「この大学で学びたい」という強い意志で、さまざまな制度を利用する受験生もいます。しかし一般入試の定員を減らしていくことは、学生間の学力差が生じる危険性が高まります。 

 明治大学が他の大学に比べて一般入試組の枠を広くとっていることは、激化する私立大学入試をくぐり抜けた学力の高い学生が入学することを意味しています。これはおのずと大学のレベルを上げることにつながり、推薦を受けられず一般入試しか方法のない受験生にとっても大きな希望となるのです。

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