大学受験で「超安定志向」が加速中 もはや早慶MARCHはスルーされてしまうのか

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大学受験で「超安定志向」が加速中 もはや早慶MARCHはスルーされてしまうのか

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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コロナ禍で混迷が予想される2021年度の大学受験。その課題について、教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

受験生を取り巻く環境は一変

 2020年度の大学受験は、翌年度から導入される大学入学共通テストや私立大学の定員厳格化によって、浪人回避や超安定志向が顕著となりました。

 本年ももうすぐ受験シーズンですが、新型コロナウイルスの感染拡大で大学受験は思いもよらぬ方向へ歩き出しています。

早稲田大学(画像:写真AC)



 現在、大都市圏を中心に多くの大学が対面授業を全面再開できずにいます。オンライン授業を主体とした授業が継続されているものの、従来の華やかなキャンパスライフとは程遠い状況です。

 オンライン授業自体は実家でも受講できますが、地方からの上京組は実家近所の目もあり帰省しづらく、またコロナ不況でアルバイト先がなくなり生活がままならない学生も少なくありません。

 これらは、地方に住む受験生やその家族にとって決してひとごとではありません。新型コロナウイルスの感染拡大が収束の気配を見せないなか、東京での大学生活が本当に有意義かどうか疑問を抱くことでしょう。

有名私立大学の志願者減は加速するか

 冒頭のとおり、近年は私立大学の定員厳格化の方針を受けて入学試験が難化。受験生がランクを下げる、超安定志向が進みました。

 早稲田大学(新宿区戸塚町)や慶応義塾大学(港区三田)を筆頭に、上智大学(千代田区紀尾井町)や東京理科大学(新宿区神楽坂)を始めとする有名私立大学の志願者は軒並み減少。MARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)、そして日東駒専(日本大学、東洋大学、駒澤大学、専修大学)もそのほとんどが志願者を減らしました。

明治大学(画像:写真AC)



 唯一増加したのは日本大学(千代田区九段南)ですが、これは2018年の不祥事「日本大学フェニックス反則タックル問題」で大幅に減少した反動、回復という意味合いが強く、継続的な志願者増加ではありません。

 加えてコロナ禍にあって、不確定要素があまりにも多いなか、受験生は

・安全に大学生活を送れる
・家計を圧迫しない

といった点を重視して進路を決めています。

 また受験生に追い打ちをかけるのが、コロナ禍による経済の混乱です。

 これまで打撃を直接受けなかった業種にまで影響が及んでいるため。現在はまだ大丈夫でも、進学後に家計がどうなるかは誰も分かりません。2020年はこういった不安材料が過去の不況に比べて多く、その結果「確実に入れる大学」「就職に有利な学部学科」が最優先に選ばれることとなっています。

 また、これまでにはあまり考えられなかった「孤独にならず大学生活を送れる」も判断材料に加わり、地方の学生は東京の大学をますます敬遠すると予想されます。

 高校生向け新聞を年6回発行する高校生新聞のウェブ版「高校生新聞オンライン」では、2020年5月に全国の高校生から届いたさまざまな声を紹介。家計悪化による進路選択の影響を不安視したり、地元進学希望者の増加による倍率上昇を懸念したりする学生の現状が伝わってきます。

岐路に立たされた大学運営

 大学側は言うまでもなく、学生の多様性を求めて日本全国から入学してくることを望んでいます。

 しかし、東京の大学では東京圏(東京、千葉、埼玉、神奈川)出身の新入生の割合が増加。文部科学省の学校基本調査によると、2018年度に東京の大学に入学した学生の69.2%が1都3県の高校出身者で占められていました。

 特に私立大学の両雄、早稲田大学・慶応義塾大学ではその割合は高く、両校とも72%前後と東京圏の「ローカル大学化」が進んでいます。

 すでに早稲田大学・慶応義塾大学や明治大学では地方出身の学生を対象にした奨学金制度を設けて支援を行ってきましたが、問題点がないわけではありません。なぜなら、地方出身の学生を優遇すれば、東京圏出身の苦学生が置き去りにされるからです。

 また、元々少子化だった状況に超安定志向と地元志向の高まりが訪れ、都内の有名大学への志願者が一気に減少すれば、大学の収入源のひとつである受験料が見込めなくなります。この状況が続けば、大学の経営悪化は避けられません。

東京女子医科大学(画像:(C)Google)



 現にコロナ禍で付属病院の経営が悪化したため、東京女子医科大学(新宿区河田町)は2021年度から、6年間で1200万円もの学費アップを行うとしました。学費の値上げは他の私立大学にとってもひとごとではなく、時間の問題となっています。

「黙っていても受験生が志願する」時代は、予想以上のスピードで過ぎ去りつつあります。コロナ禍だけでなく、少子化という普遍的な問題を抱えながら各大学がどのようにかじ取りをするのか、その動向から目が離せません。

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