恋愛中の30代女性たちが「JR終電繰り上げ」を歓迎する意外な理由【連載】TOKYO恋愛事変（5）

　2020年9月、JR東日本が来春のダイヤ改正で終電を繰り上げると発表しました。東京駅から100km圏内の路線を対象に、終電時間が30分程度早まる計画だそうです。これを皮切りに私鉄も終電の繰上げが検討されてもいます。

　終電時刻の変化は、東京の恋愛事情にどのような変化をもたらすのでしょうか。

　終電が早まるということは、恋人とのお別れの時刻も30分早まることになりかねません。終電ギリギリまで駅の改札付近で別れを惜しんでいるカップルもいますが、聞いてみると、女性のほうは終電の繰り上げをむしろ歓迎している人も。

　30代のFさんは東京の西側暮らし。彼氏は東側と離れているため、デート場所はいつも新宿などの都心。名残惜しいのでついつい終電近くまで一緒にいてしまうそうです。

「私は駅からわりと近くに住んでいるとはいえ、終電が駅に着くのは深夜１時近く。そんな夜中に歩くのはやはり少し怖いので、終電が早まるのはうれしいです」とのこと。

　友達以上恋人未満の関係の男性とときどき飲みに行く、という女性は案外多いもの。30代のMさんも月に一度会うボーイフレンドがいますが、手もつないだことがありません。

　いつも終電近くまで話し込んでいたのですが、終電が繰り上がったことにより、彼との仲が進むきっかけになったらいいな、と期待しています。

　たとえば終電が早まったことに気づいていないフリをして「どうしよう、終電なくなっちゃった……」と彼に言えば、もしかしたら「今夜はこのまま一緒にいようか？」などという話になるかもしれません。

　もちろん、いきなりお泊りはなくても、オールナイトで開いているような夜カフェやネットカフェなどで、朝までおしゃべりできるかもしれません。

「私たちって恋人なの？」と関係性に悩む女性や、「いつになったらプロポーズしてくれるの？」と待ち望む女性のなかには、終電が早まるということをチャンスのように受け止める人がいます。

　彼女たちは優柔不断な彼から交際や結婚を申し込まれる日を願っているからです。

　決定打が欲しい彼女にとって終電の繰上げは追い風に感じるそうです。終電が早まったら、前より短い時間でデートを終えなくてはならなくなります。その場合「もっと一緒にいたい」という気持ちが強まるため「もう一緒に暮らしちゃおうか」という方向にも持って行きやすいのだとか。

　最近、女性たちのほうが恋愛や結婚に積極的になってきています。それは、コロナ禍で想像以上に長期間の自粛生活を強いられていることと無関係ではないでしょう。

　ひとり暮らしの女性の場合、孤独に耐えかね「家族が欲しい」と強く思うようになったのかもしれません。一緒に暮らせば、終電に引き裂かれることも無くなるのです。

　終電が繰り上げになると、恋のきっかけも変化が起きそうです。

　夜間に行われる婚活パーティーの場合、終了すると21時を回っていることも多いもの。カップリングされた場合、終電までの間に食事などしてよりお互いに知り合うものですが、その時間が削られ、あまりゆっくりできなくなるかもしれません。

　そうなると期待されるのは朝です。今後は朝に婚活パーティーなどの婚活や恋活をする機会が増える可能性があります。

　すでに都心では始業時間前に早朝英会話教室やヨガイベントに参加する人がいますが、今後は朝に婚活パーティーで知り合い、カップリングされたら退社後に待ち合わせて一緒にお茶をするパターンに変化するかもしれません。

　コロナ禍で、大人数での集まりは縮小傾向となり、多くの人が早めに自宅に帰る傾向が依然として続いています。そのため、今後、婚活パーティーも、夜に行われるよりも朝に行われるほうがありがたいという声が出てくる可能性があります。

　終電の繰り上げが、多くの人を夜型から朝型へと変えるきっかけとなるかもしれません。

　そして、終電の繰り上げにより、最も影響を受けるのは、遠距離恋愛かもしれません。

　遠距離の場合、電車の乗り継ぎの関係で、帰宅時間がかなり早まることもあるでしょう。あまり長時間いられないのなら、気楽に会いにはいけません。

　会えないとなると、自粛期間中のように、リモートでのデートの回数が増えることになりそうです。

　オンラインでやり取りができれば、無理して頻繁に会う必要もありません。実際、コロナ禍では恋人にしばらく会っていないという人が続出しましたが、だからと言って別れたというわけでもありませんでした。

　または遠距離恋愛でも「会いにくくなったから一緒に暮らしたほうがいいかも」と、関係を進める人も出るでしょう。それにより、婚期が早まる人が出てくるかもしれません。

　もしかすると、終電繰り上げは、カップルの背中を押してくれることになるのではないでしょうか。