品川発の1時間プチ旅行 路線バス「品97」系統で楽しむ山手線内側の知られざる風景とは

  • おでかけ
品川発の1時間プチ旅行 路線バス「品97」系統で楽しむ山手線内側の知られざる風景とは

\ この記事を書いた人 /

鳴海侑のプロフィール画像

鳴海侑

まち探訪家

ライターページへ

東京都心の移動は鉄道を使う人が大半ですが、時間に余裕があるときはバス移動もおすすめです。今回取り上げるのは都営バス「品97」系統。いったいどのような道のりなのでしょうか。まち探訪家の鳴海侑さんが解説します。

鉄道の利便性が生む「悩み」

 東京都心で仕事や遊びをするとき、移動を挟んでも1時間弱の空きがあるといった「スキマ時間」が生まれることがあります。

 また、東京都心の移動は鉄道を使う人が大半です。すると地下鉄の移動が多かったり、地上でもJR山手線の移動が多かったりして、つい飽きてしまうことがあるかもしれません。

都営バス「品97」系統(画像:(C)Google)



 そこで今回、ゆっくりと時間を過ごしたり気分を転換してみたりする移動として、「路線バス」を1路線紹介したいと思います。

品川駅高輪口始発「品97」系統とは

 東京の南のターミナルで近年再開発が盛んな品川駅周辺。そんな品川駅の高輪口から出て、歩道橋を渡って右手に「品川駅高輪口」バス停の5番乗り場と7番乗り場があります。

 5番乗り場から発着するのは五反田駅始発で品川駅高輪口や麻布十番駅を経由して六本木ヒルズに至る「反96」系統。そして7番乗り場から発着するのが、品川駅高輪口始発で新宿駅西口へ向かう「品97」系統です。

都営バス「品97」系統の運行系統図(画像:東京都交通局)

 山手線で約20分かかる品川から新宿の間を「品97」系統は約1時間で結びます。ちょうど移動時間を抜いても、1時間弱時間があるというときにおすすめのバス路線です。

 品川駅高輪口を出たバスはまず第一京浜を北上。泉岳寺交差点で左折します。

 この交差点を右折すると実は高輪ゲートウェイ駅に通じています。高輪ゲートウェイ駅から泉岳寺の間、第一京浜のすぐ東側は実は明治の終わり頃までは海岸線で、海岸ギリギリのところを東海道本線の列車が走っていました。

 交差点を左折すると正面が泉岳寺(港区高輪2)で、境内には「忠臣蔵」で有名な赤穂浪士の墓や赤穂浪士の記念館があります。

 バスはその泉岳寺の前を今度は右に曲がり、丘を登ります。すぐに丘は登り切り、頂上付近には交差点が。その交差点を左に曲がった先に高輪皇族邸(高輪1)があります。

 こちらは、2019年から2020年にかけて赤坂御所を正式な仙洞御所に改修するまでの間、「仙洞仮御所」として上皇・上皇后がお住まいになっていました。新宿方面から「品97」系統に乗ると高輪皇族邸の横を通過します。

由緒ある坂、各国の大使館を越えて進む

 泉岳寺から登った丘を下る坂は「魚籃(ぎょらん)坂」と名が付いています。「魚籃」とは魚を入れるかごのこと。先ほど紹介したように、このあたりが海の近くであったことを教えてくれる地名です。

 魚籃坂を過ぎ、古川橋交差点でバスは左に曲がって明治通りに入り、進路を西にとります。左手には古川が流れ、川の上に首都高速2号目黒線が通っています。右手は南麻布で、近くにはフランス大使館(港区南麻布4)やイラン大使館(南麻布3)のある麻布らしいエリアです。

 首都高速2号目黒線が離れていくと、天現寺橋交差点にさしかかります。古川はこの交差点から西側(上流)が渋谷川で、昔はこの天現寺橋交差点のあたりまでが「渋谷」の範囲でした。

天現寺橋交差点付近の様子(画像:(C)Google)



 そして天現寺橋交差点をバスは右折し、今度は外苑(がいえん)西通りを北へ向かいます。左側に大きな都営アパートを見ると間もなく広尾駅。駅周辺は高級な雰囲気が漂っています。ここまで品川駅高輪口から約20分です。

 私(鳴海侑。まち探訪家)はこの品川駅高輪口から広尾駅前までの鉄道に乗っていると想像もつかない場所の間を結ぶところや、めまぐるしく雰囲気が変わっていく車窓がとてもお気に入りです。ぜひ皆さんも乗って感じて見てください。

変わった名前のバス停も

 広尾駅前を過ぎても車窓からはユニークなところをたくさん見ることができます。

 バスは外苑西通りの坂を上り、西麻布を過ぎると「墓地下」「青山斎場」「青山いきいきプラザ前」とユニークな名前のバス停を次々と通過します。ルートとしては外苑西通りから外れ、青山霊園(港区南青山)の東側を通り、外苑東通りに移って青山1丁目へ向かっています。

港区南青山「墓地下」バス停付近の様子。左手は青山霊園(画像:(C)Google)



 そして神宮外苑と赤坂御用地の間を通り、信濃町駅の横を通ります。西麻布から信濃町までは緑を車窓に多く感じる区間です。

 信濃町を過ぎると間もなく四谷三丁目交差点を左に曲がり、国道20号線に入ります。広尾からこのあたりもどこを走っているのか分からなくなる区間です。都営バスではフリーWi-Fiが使えるので、地図と車窓を見比べながら乗ってみるとより楽しめます。

バスの車窓から東京の多様さを知ろう

 国道20号線の新宿御苑トンネルを左に見るともう「新宿」のエリアで、飲食店が車窓に増えていき、歩道を行き交う人も多くなっていきます。車窓左に「新宿マルイアネックス」(新宿区新宿)が見えればもう新宿3丁目です。

新宿区新宿「新宿マルイアネックス」付近の様子(画像:(C)Google)

 この先は曜日によってルートが変わります。平日か土曜であれば新宿駅東口の前を通り、日曜・祝日であれば新宿三丁目交差点と新宿五丁目交差点を曲がって歌舞伎町セントラルロードや一番街の前を通ります。

 どちらも新宿の風景を路線バスから眺めるというあまりない経験ができます。そして大ガードをくぐり、新宿駅西口のバス乗り場に到着します。

 ふだんあまり車窓に見ることがない山手線内側のまちの風景。中でも南北に移動しながら車窓を楽しめるバスはそう多くはありません。ぜひ、スキマ時間に「品97」系統のバスの車窓から、東京の多様さや知らなかった風景を見て感じてみてください。

関連記事