サウナ激戦区・錦糸町の「銭湯」に若者が続々と集まり始めているワケ
2020年10月17日
お出かけ東京で暮らし、働く男性たちは、日々何を見て何を思いながら過ごしているのでしょう。イラストレーターでライターのズズズ(zzz)さんが、自身の「何でもない今日」をイラストともに切り取ります。今回のテーマは「錦糸町の銭湯」。
錦糸町にできたニュータイプ銭湯
突然ですが、仕事帰りに寄り道はしますか?
私(ズズズ。イラストレーター、ライター)は疲れているときはすぐに家に帰りたいと思いますが、たまに気分転換でひとり飲み、映画館のレイトショー、銭湯などへ立ち寄ります。
今回はその中で銭湯についてご紹介します。
老朽化に伴うリニューアル工事が新型コロナウイルスの影響で一時休止となり、苦境に立たされるもクラウドファンディングで支援を募ることで無事2020年8月にオープンした錦糸町の銭湯「黄金湯」(墨田区太平)です。
地元住民のみならず銭湯を愛する人、銭湯になじみのない人々にも楽しんでもらえるような“新スタイル”の銭湯を――というのが黄金湯のコンセプト。
「日本特有の銭湯文化を未来につなぎたい」という思いは広がり続け、目標金額300万円のところ1000人を超える支援で最終的に約650万円が寄せられました。
なぜ銭湯の番台にDJブースが――?
私はその日も仕事で疲れた身体を癒そうと東京メトロ半蔵門線錦糸町駅から徒歩数分の黄金湯に向かっていました。
4番出口を出て錦糸公園に沿って真っ直ぐ進み、右に曲がると現れるモダンな建物。まるでおしゃれなカフェを彷彿とさせる外観は「ブルーボトルコーヒー」の店舗を手掛けてきた長坂常さんの手によるものです。
中に入ると右側に券売機があります。入浴券、サウナ券、貸しタオルなどの通常の銭湯のラインナップの下に、「東京クラフトビール」「黄金湯ビール」のボタン。後ろを振り返ると番台というよりはもうバーのカウンター? DJブース? みたいな一角が。
この時点で早くも黄金湯の世界観に引き込まれます。
個性的内装、四つの浴槽、そしてサウナ
下駄箱に靴を入れて、「入浴 + サウナ券」を提示するとサウナ用に音楽フェスで使うような使い捨てリストバンドを腕につけてもらえます。
脱衣所を抜けて浴場に行くと、洗い場スペースと浴槽が四つ。あつ湯、薬湯、炭酸泉、水風呂と種類が豊富でお風呂好きにはうれしいラインナップ。
髪と身体を洗い、まずは低温の炭酸泉で身体を慣らします。浴場内を見渡すと、天井付近のコンクリートむき出しの壁に描かれた絵に気付くはず。タイルに富士山が描かれたものはよく目にしますが、コンクリート壁に筆絵というのはかなりの個性派です。
描かれている内容も男湯女湯でつながったひとつのストーリーになっていて、男女が成人し、出会い結婚し、子どもとまた黄金湯に来るというもので、こちらは「きょうの猫村さん」を描いた人気漫画家ほしよりこさんの作品。
銭湯は人生とともにあることを感じずにはいられません。

次は昨今ブームになっているサウナです。黄金湯のサウナは露天スペースにあります。サウナ、水風呂、外気浴スペースが完備されているので、お風呂を楽しみたい人とサウナを楽しみたい人とで導線が混雑することはありません。
薄暗く落ち着いた照明のサウナに入ると熱気が身体を包みます。熱風が自動で出てくる「オートロウリュ」を採用していて、ちょうどよい湿度を保ったフィンランドサウナです。
心と身体がととのっていく……
心地よく汗をかいて外に出ると目の前にすぐ水風呂が。水風呂は下からのグリーンのライティングでまるで洞窟の奥底から湧き出る泉のような雰囲気。
こちらは男湯のみの演出のため、女性の方はぜひ水曜日の男女入替DAYを利用してみてください。
外気浴スペースはL字形で壁に添うよう椅子が置いてあります。さらにうれしいことに椅子の手前には足を置く台まで。足の位置を高くすることで、身体の中を血液が循環しやすくなるのです。
サウナ室で汗をかき、拡張した血管を水風呂で締め、外気浴で一気に身体中に循環させる――。この「温冷交代浴」の快感はやみつきになります。
薄暗い照明に包まれた外気浴スペースで秋の夜空を見上げながら心と身体が“ととのって”いくのを感じます。
こんなにも素敵な銭湯に昨今のサウナブームも相まって、現在は時間帯によっては混雑してサウナ室の前に順番待ちの列ができることもあるそう。そんな時は浴場内を満喫してみましょう。
黄金湯の良いところは先述の通りサウナと浴場が完全に分かれているところ。それに加えて浴場にも水風呂がある点がうれしい配慮です。
温冷交代浴はサウナだけでなく、お風呂でも可能です。あつ湯、薬湯と水風呂の温冷交代浴も堪能できてしまいます。サウナが空いてないから残念と落ち込んで帰るのはもったいない、お湯も楽しんでみてください。きっと今日も良い1日だったと思えるはずです。
火照った身体に染み入るビール!
心も身体も満たされ、最後の締めです。お風呂上がりはコーヒー牛乳という人も多いかもしれませんが、黄金湯ではオリジナルのクラフトビール「黄金湯ビール」を飲むことができます。
その場で注いでもらえるビールは深く輝く黄金色。番台で流れるレコードをBGMにぐいっとひと飲み。火照った身体を冷たいビールが駆け巡り、「うまい。」とつぶやかずにはいられません。

ビールを飲み終え、貸しタオルを番台に返すときにちらっと見えた「今治タオル」のタグ。どこまでこの銭湯はこだわっているのだと思いつつ、外へ出ると秋の心地よい夜風が身体を通り過ぎていくのでした。
今日は仕事で嫌なこともあったけど、もうどうでもいいや。
さて、今夜は何を食べて帰ろうかな。
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