板橋区の「人気商店街」が消滅危機――大規模開発と住民生活に揺れる現場から

板橋区にある「ハッピーロード大山」は、東京都内でも有数のにぎわいを見せる地域密着の大型商店街。その場所が今、大規模な再開発計画に揺れていると言います。フリーライター荒井禎雄さんの報告です。


にぎわい絶えなかった商店街の苦境

 板橋区の「ハッピーロード大山」といえば、

・戸越銀座
・十条銀座
・砂町銀座

の「三大銀座」に匹敵する、都内有数の活気あふれる商店街です。

 全長約500mのアーケード商店街で、商店数200店舗以上、1日の商店街利用者は約3万5000人、周辺人口は数万人、商店街に内包されている東武東上線大山駅の1日の乗降者数は5万人以上と、廃れる要素の少ない将来安泰な商店街と見られていました。

 ところが、この商店街は今、「大規模都市開発」により廃れるどころか消滅の恐れすら抱えているのです。

 大山地区の再開発は複数のプロジェクトが同時に進行しており、このまま計画が進められれば、ハッピーロードは半分ほどの長さになってしまう可能性をはらんでいます。

 今回はこの大山の再開発についてのお話です。

三つの再開発計画が同時進行

 大山で動き出している再開発計画は、大きく分けて次の三つです。

1.補助第26号線の延伸
2.東武東上線の高架化
3.駅前広場の建設

●補助第26号線の延伸
 補助第26号線とは、すなわち都道420号線鮫洲大山線のこと。鮫洲大山線は1946(昭和21)年に計画された都道で、長らく眠っていたものがこのたび全面開通すべく急ピッチで動き出しました。

 鮫洲大山線は、品川区の大井1丁目から板橋区の仲宿交差点に至る20m道路(車道9m、歩道5.5m×2)ですが、最後の300mほどが通せずにいました。そこにハッピーロード大山があるからです。

 過去には商店街の商店主や住民の9割が道路建設に反対し、計画が頓挫したこともありました。

 今回この26号線が現状の計画通りに延伸されると、ハッピーロードの川越街道寄りの半分はその場所での営業が難しくなります。

 中には立ち退かずに済む商店もありますが、商店街が大型道路で分断され、離れ小島のようになった場所に立地することになり、これまで通りの商売とはいかなくなるでしょう。

道路延伸に加え線路高架化も

 立ち退き予定地区には地元住民の生活を支える生鮮3品(野菜・肉・魚)を扱うスーパーや市場が集まっていますが、その多くが消滅してしまいます。すでに閉店してしまった精肉店もあり、それに続くお店が出れば加速度的に売り場が失われていくことになります。

よしや(SainE)とみらべるも26号線のために消え、生鮮品の売り場が激減(画像:荒井禎雄)



●東武東上線の高架化
 補助26号線には、ハッピーロード大山をどうするか以外にも課題があります。その最たるものは、完成済みの道路(都道420号線・東京都健康長寿医療センター前)との境目にある東武東上線の線路です。

 今は片道一方通行の小さな踏み切りがあるだけですが、20m級の道路が開通するとなればそれではどうにもなりません。かと言って踏み切りを大きくすれば、自動車の流れが止められることによる問題が懸念されます。

 これをうまくパスする案が固まらず、計画が長らく寝かされていた面もあるのですが、東武鉄道がついに重い腰を上げ、東武東上線の高架化を決定。中板橋駅から下板橋駅の間の約2㎞の区間で高架化工事が行われることになり、補助26号線の計画を後押しする格好となったのです。

 ところが、東武東上線は線路のギリギリまで民家が迫っているようなローカル感漂う路線です。高架化しようにも、現状では工事車両が入れるスペースがありません。よって、まずは中板橋駅~大山駅~下板橋駅間の至る所に、いくつもの側道を作らねばならなくなります。

 先に述べたように東上線の線路は間際まで民家が迫っているような状況ですから、側道を作る段階でも多数の立ち退きが予想されます。

長期にわたる見通しの大工事

 しかも、この東上線の高架化と補助26号線の延伸工事は足並みをそろえて行われる訳ではないらしく、先に26号線が作られ、その後に東上線の高架化が完了する予定になっているようなのです。

 それでは巨大な26号線を東上線の線路がせき止めることになり、さらにその状況で高架化工事が続けられることになります。

●大山駅前広場の建設
 さらに加えて、東上線の高架化に伴う大山駅前広場の建設計画が決定しました。これは広場と名が付いているものの、実態は開通した都道420線から大山駅前にバスやタクシーを引き込むための大型ロータリーのことです。

 こちらはハッピーロードではなく、大山にあるもうひとつの巨大商店街「遊座大山」が影響を受けるのですが、マンション・住宅・飲食店だけでなく健康長寿医療センター付近にある処方箋薬局なども立ち退きが生じることになりそうです。

駅前広場完成予想図。遊座商店街から健康長寿医療センターまで展開する大計画(画像:荒井禎雄)



 この工事もかなり大掛かりになることが予想され、仮に補助26号線の延伸工事や東上線の高架化と同時に進められるとなると、大山駅と商店街と各方面の住宅街とをつなぐ動線が多大な影響を受けることになりかねません。

状況を把握しきれぬ住民たち

 この大山再開発計画は、道路工事・鉄道の高架化・駅前広場・再開発ビルの建設といった各計画について、全体像を見ながら進めている総監督的立場の者がいない状況のようです。

 工事が始まれば、数万人規模の近隣住民がなじみの買い物場所を失うことになりますが、そうしたリスクを住民らが満足に認知できていないのです。

開発後の地域はどうなるのか

 このように、個性的な個人商店が集まりオンリーワンな魅力を持った商店街・繁華街として栄えて来た大山という街は、今回の計画の進行によって少なくないダメージを受けることになるかもしれません。

 新築の商業ビルが建った場合、テナントなど家賃は安くないはずですから、そこに入居できるのは大資本のフランチャイズ系の飲食店と考えるのが現実的。極端な薄利多売で頑張っている大山の個人商店が借りられるような条件にはなり得ないと予想されるからです。

大山で最もコスパに優れた市場も立ち退きで消滅してしまう(画像:荒井禎雄)



 高い家賃を払うくらいなら、大山ではなく隣町の池袋で勝負する方がまだ勝算があると考える商店主もいるでしょう。大山が飲食店街として魅力的だった最大の理由は、土地価格が安く、人通りや外食人口の多さと比較して家賃相場が抑えられていたことだったのです。

 その絶妙なバランスが崩れてしまえば、大山の再開発地区は大手チェーン店が中心のほかの街とあまり差のない無個性な地域になってしまうかもしれないのです。

はや散見されるシャッター店

 現時点ですでにハッピーロードは目で見て分かる苦境に追い込まれています。この開発計画が取り沙汰されるようになってから、店を閉める商店が続出してしまったのです。

 その空いたテナントに何か新しい店が入れば良いのですが、再開発計画がどう進むか分からない土地に店を構える人はなかなか現れません。

 また間の悪いことに、コロナ禍が完全な収束を見通せない状況なので、飲食店の新規参入はほぼ絶望的となっています。

 こうしたことから「あの巨大さでシャッター店がほとんどない大山はすごい!」と言われたハッピーロードにも、ごまかせないほどシャッター店が増えてしまいました。

住民生活と開発 両立の難しさ

 あらためて考えたいのは、この大山の再開発計画は一体誰がためのものなのか、ということです。都内でも有数の活気ある巨大商店街が失われてしまうことは、忍びなく思えてなりません。

 商店街に活気があるということは、それだけ大勢の区民がその商店街を愛用している、生活の支えにしているということです。

 住民の生活と大規模な再開発。その両立の難しさをあらためて浮き彫りにしている現場といえるでしょう。


【画像】すでにシャッター店も……大規模開発に揺れる、板橋区の「ハッピーロード大山」を見る(計8枚)

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