まるで形が「蝶々」みたい! 一風変わったワンルーム、肝心の暮らしやすさは?【東京間取り図鑑】
とても狭い部屋、すごく細長い家、だいぶ変わった形の間取り――。世界随一の都市圏人口を擁する東京には、それゆえ独特な物件が数多く存在します。不動産分野に詳しいライターの夏野久万さんが、都内のフシギな間取りを巡ります。東京にはフシギな間取りがいっぱいチョウチョのような、扇子のような。不思議な間取りを都内に発見(画像:CISレジデンス) 間取り好きな筆者が、ネットで検索していたところ……。まるで「チョウチョ」のような「扇子(せんす)」のような、はたまたカットした「バームクーヘン」のような間取りを発見! 一体どんな物件なのか探ってきました。 変わった間取りは、こだわりの証拠 限られた土地を有効活用するために、あらゆることを考慮してつくられている賃貸物件。だからこそ生まれる「変わった間取り」の住まいには、こだわりがたくさん詰まっているはず。 そんな思いを胸にやってきたのは、JR中央線荻窪駅 徒歩5分のところにある「VILLA STELLA」です。 おしゃれな外観。よくある長方形の建物なのかと思いきや、奥から見るとまた別の表情が見えました。 建物の外観もちょっと独特(画像:夏野久万) この外観が、間取りの鍵を握るのでしょうか? 同物件を管理している不動産会社のCISレジデンス(八王子市中町)によると、こちらは地上3・4階建ての総戸数22戸、ワンルームのデザイナーズ賃貸住宅です。l エントランスも変わっています。物件名のSTELLAとはイタリア語で「星」のこと。独特のエントランスドアは、宇宙をイメージしているのでしょうか。 同物件をデザインしたインテルメディア・デザインスタジオ(板橋区板橋)の櫻井義夫氏によると、 「南方位より敷地が45度程度振れていて、全室に極力日当たりの良い環境を提供するようプランニングをした結果、平面形が星形になったために『VILLA STELLA』という名称になった」 とのこと。すてきな名称です。 なんとも開放的な中庭空間なんとも開放的な中庭空間 一歩入ると、オープンエアな空間が広がっていました。中央に砂利(じゃり)が敷き詰められ、夜になるとライトアップされるようです。夜間は別の表情が見られそうです。 ちなみにこの中庭は、「外部は外套(がいとう)を着て守りの姿勢を示し、中庭に入ると本当の姿が立ち現れる」というイメージでデザインされているのだとか。何だか癒やされる、美しい空間に仕上がっているのはそのためなのでしょう。 上を見上げると、空が抜けています。サーフィンの板が立てかけられているような手すりを見ていると、ちょっと陽気な気分になってきました。 開放的な共用空間。手すりの形も変わっている(画像:夏野久万) この華やかな雰囲気のある手すりは「あまり寄りかかられると安全性に問題が生じるし、また頑丈なデザインは雰囲気を重たくするので、繊細で空気のような存在感であってほしい」という思いで、このような形になったそうです。 いざ室内へ、明るい! たしかにこれがコンクリートの手すりならば、重たく威圧感が出てしまったかもしれません。どこか華やかさと、開放感のある手すりは、自宅までの時間をより楽しく演出してくれそうです。 謎の間取りの部屋は、この奥の住戸。吹き抜けに面した壁が、ガラスブロックになっています。ドアを開けると、ガラスブロックから入る陽光がすごい! ガラスブロックからこぼれてくる陽光でとっても明るい室内(画像:夏野久万) ものすごく明るくてビックリしました。ここが、チョウチョに例えると「胴体」の部分であり、扇子で言えば真ん中で、奥の凹凸のある箇所が、チョウチョの羽、扇子の端っこのようです。 清潔感あるトイレと洗面台清潔感あるトイレと洗面台 よく見ると、左側の壁面にドアを発見。開けてみたら……トイレが出現しました。 しかもすぐ隣にある洗面台の蛇口が、カエルのような宇宙人の顔のような、ちょっと不思議なテイストの形をしています。洗面ボウルもおしゃれです。“蛇口マニア”な人にはたまらない洗面台です。 清潔感のあるトイレとバスルーム(画像:夏野久万) その左側にはユニットバス。浴室乾燥機付きなので、とても便利です。 では、チョウチョの「羽」の部分はどうなっているのでしょうか。 奥はキッチンです。左側には冷蔵庫置き場兼収納がありました。奥のブラインドを開けると窓があるので、通風もバッチリです。 キッチン下には、炊飯器などが置けるスライド式の台が入っていて、こまやかな配慮が素敵……と思っていたところ、右側の白い壁に違和感を発見。 壁の一部が扉になっているではありませんか。ここは忍者屋敷か? ということで開けてみると……。 天井までの、使い勝手のいい収納が出てきました。これなら衣類もすっきり収まりそうです。 そこで気づいたのです。こういう収納トラップが仕込んである間取りって、ほかの箇所にも絶対仕掛けがあるはずなのです。 そこで戻ってきたのが部屋の中央部分。左側の木目部分が怪しいです。ぷんぷんします。ということで、忍者屋敷の隠し扉を探すような気分で周囲を探る筆者。 やはりありました! 備え付けの姿鏡が外開きのドアになっていて、どうやら洗濯機置き場のようです。上には、洗剤やタオルなどを仕舞えるスペースもあります。 このチョウチョのような、扇子のような形の間取りは、実は忍者もビックリ(?)な収納を持つ住まいなのでした。 細かな配慮がうれしいポイント細かな配慮がうれしいポイント それにしても、心遣いがすごいです。玄関を入ってすぐところに、ブラインドが設置されているのです。 そのブラインドをおろすと、室内の様子をちょうどよく目隠ししてくれます。 ブラインドで目隠し。住民のプライバシーを保護(画像:夏野久万) 普段は片方だけブラインドをおろし、寝るときは全ておろす、といった使い方ができるわけです。プライバシーの保ち方を住んでいる人自身が選べるように配慮されている点が、すばらしいと感じました。 建築家の方によると、この住戸は 「採光上一番不利な位置にあって、特殊な雰囲気がそこに住む価値だ、と思っていただける方のために計画しました。住む人の発想が試される部屋ですね」 とのことです。たしかに、どんなふうに家具を配置するか、想像するのが楽しくなる部屋でした。 ※管理会社などの許可を得て取材・撮影を行っています。 ※物件情報は、取材当時のものです。 建物名:VILLA STELLA 所在地:杉並区天沼3丁目 交通:JR荻窪駅から徒歩5分 構造:RC 築年月:2002年3月 総戸数:22戸 賃料:8万2000円 管理費:3000円 専有面積:21.90平方メートル 間取り:ワンルーム
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