銀座、有楽町、日本橋……都内の「アンテナショップ」が東京駅付近に集中しているワケ

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銀座、有楽町、日本橋……都内の「アンテナショップ」が東京駅付近に集中しているワケ

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中村圭

文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナー

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東京で人気のアンテナショップはなぜか、その多くが銀座や有楽町など、東京駅から近距離のエリアに集中しています。いったいなぜでしょうか。近年の動向も含め、文殊リサーチワークスの中村圭さんが解説します。

今やさまざまな人が楽しめる体験型店舗に

 2020年の夏休みは新型コロナウイルス感染の第2波が到来し、帰省や遠出の旅行を自粛する人が多くなりました。

 そんななか、都内に居ながら地方の食品や伝統工芸品を購入できるアンテナショップに人気が集まりました。

 アンテナショップは主に地方自治体が街のプロモーションの一環として運営しているもので、

・北海道どさんこプラザ有楽町店(千代田区有楽町)
・かごしま遊楽館(同)
・銀座わしたショップ本店(沖縄県のアンテナショップ。中央区銀座)
・いわて銀河プラザ(同)
・IBARAKI sense(同)
・TAU -ひろしまブランドショップ-(同)
・まるごと高知(同)
・銀座熊本館(同)
・日本橋ふくしま館-MIDETTE(同区日本橋)
・三重テラス(同)
・とっとり・おかやま新橋館(港区新橋)

などがあります。

 現在のアンテナショップは主に1990年代にオープンしたものですが、2010年代に入ると地域の食文化への関心が高まるなかで、情報番組や情報誌に取り上げられるようになり、若い女性や中高年層を中心にプチブームとなりました。

千代田区有楽町の「北海道どさんこプラザ有楽町店」(画像:(C)Google)



 運営自治体は都心におけるアンテナショップのプロモーション効果が大きいと考え、その後新たに出店したり、内容を拡充すべくリニューアルしたりした施設が多く見られます。

 地元の食が楽しめるレストランやイートインコーナー、地酒の試飲カウンターなど、特に食の体験要素が重視されて次々に導入。さらにトークショーなどのイベントやワークショップを開催するところもあり(現在はコロナにより休止)、今やさまざまな人が楽しめる体験型店舗となっています。

アンテナショップを何軒もはしごする人も

 アンテナショップは多くが銀座や有楽町など、東京駅から近距離のエリアに集中しています。

 これは八重洲にかつて、都内における地方観光のプロモーション拠点であった国際観光会館があった背景もあります。なお国際観光会館は現在取り壊され、跡地には超高層ビル・グラントウキョウノースタワー(千代田区丸の内)が建っています。

グラントウキョウノースタワーと八重洲の街並み(画像:写真AC)



 国際観光会館が八重洲にあったのは、丸の内が近いことから社会人が多く、銀座には目の肥えた買い物客が多いこと、ステータスのある立地であることなどが要因です。

 近隣には国内に多店舗展開している老舗百貨店が集積しており、販路開拓や情報発信にも適していたと言えます。

 また、地方からスタッフが新幹線でアクセスしやすい立地だったということもあります。徒歩圏の一定エリアにさまざまな地方のアンテナショップが集まっていることから、何軒もはしごする利用者もいて、相乗効果を生んでいるようです。

アンテナショップ以外にも魅力ある店舗が

 都内にはアンテナショップ以外にも、観光や地域産業の活性化を念頭に、地方の食や伝統技術を集めた店舗が数多くあります。特に2010年代に入ってから新しい感覚の食や生活用品のセレクトショップが生まれました。

「中川政七商店」や「日本百貨店」などがそうで、現代生活にマッチした商品を共同開発したり、ワークショップを開いて消費者に体験してもらったりするなど、地域産業の振興や地域生産者と消費者とのつながりを強く意識しています。

渋谷ヒカリエ内の「d47 MUSEUM」(画像:ディアンドデパートメント)

 さらに実験的な業態も生まれており、渋谷ヒカリエ内の「d47 MUSEUM」(渋谷区渋谷)は、47都道府県からひとつのテーマを展示するデザイン物産美術館と併設するショップと食堂が連動して、47都道府県の個性と魅力を伝える施設となっています。

「まるごとにっぽん」が描いたビジネススキーム

「まるごとにっぽん」(台東区浅草)は浅草の繁華街の中に立つビルの中に位置しており、1階は約2500点が並ぶ食のセレクトショップ「蔵」や地域の食を扱う店舗が集結。愛媛県の「スマイル&スウィーツ」では「蛇口から産地直送ジュース」が話題となりました。

まるごとにっぽんの外観(画像:まるごとにっぽん)

 また2階はオーダーメードの家具が作れる「信州木工館」や倉敷市のデニム専門店「JAPAN BLUE JEANS」など全国各地の伝統技術を生かした生活用品の店舗が出店。

 そのほか、参加した市町村自ら思い思いに地元をPRするコーナーやレストラン街などから構成されます。オープン当初はこのビジネススキームが注目され、各地で類似した施設の企画が立ち上がりました。

よりコンセプトが強調された店が登場

 近年は、よりコンセプチュアルな地域活性型店舗が生まれています。

 一般社団法人離島百貨店(港区赤坂)は、高齢化や過疎化による人材不足という離島に共通する難題に対し、離島同士が連携・情報発信して離島と都会の交流拠点を作るためのプロジェクトとして「離島キッチン」を運営しています。

 アンテナショップとして、都内には神楽坂店と離島百貨店(離島キッチン日本橋店)、その他札幌店を展開。

「離島キッチン」神楽坂店の外観(画像:離島百貨店)



 神楽坂店では「隠岐島の岩ガキ「春香」」、「岩城島のレモンポークの豚しゃぶサラダ」、「隠岐島の寒シマメ漬け丼(イカの漬け丼)」、「壱岐島のトマトソルベ」などを提供。さまざまな離島の食材から「文化」「歴史」「物語」を楽しめるお店として営業しています。

地元に愛されてきた絶品グルメを出す食堂も

 2020年の7月にオープンした「烏森 絶メシ食堂」(港区新橋)は時代の流れとともに絶滅が危惧される地元に愛されてきた絶品グルメ「絶メシ」を未来に残すプロジェクトの一環。

「烏森 絶メシ食堂」の外観(画像:ミナデイン)

 食堂では群馬県高崎市の「白いオムライス」や千葉県木更津市「大衆食堂とみ」の「ポークソテーライス」など、全国の絶メシ店で長年愛されてきたメニューのレシピを店主から直接伝授してもらい、スタッフが店舗にて再現(もしくはメニューを買い付け)して提供します。

 メニューの売り上げの一部をレシピ提供したお店に還元するシステムとなっており、利用者は東京で絶メシを食べつつ、そのメニューがある店舗に売り上げ貢献でき、提供したお店も東京に出なくとも売り上げを得ることができる画期的なシステムになっています。

旅行に出ずとも旅気分を味わおう

 都内では食の安心・安全への関心の高まりとともに、地方の農業や生産者への関心も高まり、都市部で地方の生産者を支援する動きが活発化しました。

 また、インバウンドが増加し、日本的な伝統技術が改めて注目され、若い世代で生活の中に和風なものを取り入れる風潮も高まっていきました。

 一方で、地方では産業の衰退や後継者不足への対応が急務な状況になっており、地域活性化型店舗が拡大していったと言えます。

 このような店舗が都内に集中しているのは、もちろん東京都が国内最大のマーケットであるからですが、都心部に多くのインバウンドが流入し、そのプロモーション効果が大きいと言うこともありました。

旅気分のイメージ(画像:写真AC)

 残念ながらインバウンドは現在見られませんが、代わりに「Go To トラベルキャンペーン」から除外された都民の利用が増加しました。このような店舗で少しでも旅気分を味わってはいかがでしょうか。

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