アリ?ナシ? カップルの「お試し同棲物件」増加中、今後の課題とは

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アリ?ナシ? カップルの「お試し同棲物件」増加中、今後の課題とは

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東京都内などを中心に、気軽に「お試し同棲」できる物件が増えているようです。「お金がないから」などの理由で結婚に及び腰とされる現代の若者たち。果たして「お試し同棲」は未婚率・少子化の打開策となり得るのでしょうか。

かつてはマイナスイメージもあった同棲だが

 日本、とりわけ東京の生涯未婚率や平均初婚年齢が上昇の一途にあるなかで、同棲(どうせい)経験者の割合は微増傾向にあるという、興味深いデータがあります。

 国立社会保障・人口問題研究所(千代田区内幸町)が5年ごとに行っている「出生動向基本調査」の最新版(2015年)によると、18~34歳の未婚男女のうち同棲経験のある人の割合は全体の7.0%。

 前回2010年調査時点の5.6%から1.4ポイント上昇しています。

 調査対象のうち最も年齢の高い30代前半では、男性が10.4%(前回8.9%)、女性(同9.3%)と、およそ1割が同棲経験者(現在同棲中も含む)。

結婚前の交際期間は長くなる傾向

 また一方、出会いから結婚(初婚)までの平均交際期間は年を追うごとに長くなる傾向にあり、1987(昭和62)年に2.54年だった値は、2015年には4.26年に。

 恋愛結婚のカップルに限れば、同3.15年から4.55年へ、その期間は1年以上も伸びている状況です。

「行動や生き方が自由」「家族不用の責任がなく気楽」……といった理由を独身生活のメリットとして挙げる彼らの、結婚に対する慎重な姿勢が垣間見えてくるようです。

 そうした意味でも同棲を経験することは、結婚生活の良い面も悪い面も疑似体験できるという点において、特に現代では意義のあるものなのかもしれません。

 物件仲介などを行う「matsuri technologies(マツリ・テクノロジーズ」(豊島区高田)が手掛ける「お試し同棲」物件は、そうした未婚カップルを後押しするサービスです。

保証人は不要、1か月から入居OK

 保証人不要・家具家電完備・1か月間から入居OK……という一般的なマンスリーマンションの特長に、「ふたり入居」を前提とした寝具なども整えた室内。

 東京都内などで同社が担当する物件約数千件の多くが同サービスで利用できるといいます。

「敷金・礼金・仲介手数料などの初期費用はなく、1か月分の家賃が掛かるだけ。始めやすく、終わらせるときも難しくない、まさに『試しに同棲』ができるサービスです」と同社は説明します。

 もともと外国人観光客向けの民泊業などを中心に展開してきた同社。しかし2020年初頭からの新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、その需要は大きく落ち込みます。

 そんな折に目を向けたのが、かねて耳にする機会が多かったという「同棲を始めたいのに始められないカップルの悩み」でした。

「途中で別れたら」の不安を解消

「お互い実家在住なので同棲をしてみたいけど、家具家電を全部そろえた後で結局別れてしまったらどうしよう」
「両親に保証人になってもらわないと物件を借りられないけど、あいさつへ行くのにためらってしまう」
「初期費用が高過ぎて用意できない
「2年間の契約期間中にもし別れてしまったら」……

 こうした声に応える物件を用意すれば需要はあるのではないか――。

「お試し同棲」ができる物件の一例(画像:matsuri technologies)



 2019年夏からスタートさせていた本サービスを2020年夏前頃から積極的に告知・宣伝したところ、問い合わせが相次ぐようになったといいます。

利用希望が多いのは20代カップル

 同社の担当者、加藤拓真さんによると、利用希望者は20代の若いカップルが中心。

 お互いに実家暮らしで、一緒に住んでみたいけど、互いの両親に紹介したり結婚を前提にしたりするのはまだちょっと……まさにそんな思いを抱えていた人たちが多いといいます。

「第15回出生動向基本調査」における、未婚者が考える「独身生活のメリット」(画像:国立社会保障・人口問題研究所)



 物件の内装は同社のインテリアデザイナーが監修していて、ひとり暮らしの賃貸物件ではなかなか実現できないシックな雰囲気。

 家具家電以外にもシャンプーなどのアメニティーがひと通りそろっているので「着替えさえ持ち込めばすぐ生活できる」仕様になっているのが売りなのだそう。

 また入居に際しては国籍や性別も不問なので、「同性同士で入居申し込みをしたら審査に落ちてしまった」といった悩みを持つLGBTなどのカップルにも需要がありそうです。

場所にこだわらなければ物件多数

 広さは約20平方メートルのワンルームサイズから。家賃は最も安いもので6万5000円。

 また対象物件があるのは、原宿や下北沢、代官山など若者に人気のおしゃれな街から、新宿、渋谷、品川など通勤に便利なターミナル駅までさまざま。

 ただ、人気の街でさらに駅近ともなれば、1か月分とはいえ家賃は当然跳ね上がるので「あまり場所にこだわり過ぎない方が、手頃な家賃の物件を紹介しやすくなります」と加藤さんはアドバイスします。

「まずは挑戦する」勇気を後押し

 冒頭で紹介した出生動向基本調査では、結婚したくても「できない理由」として最も多かったのは「適当な相手に巡り合わない」、次いで「結婚資金が足りない」でした。

「お試し同棲」ができる物件の一例(画像:matsuri technologies)



 年収が低い男性ほど未婚率が高い、という「就業構造基本調査」(総務省)の衝撃的な統計データがかつて世間を騒がせましたが、お金がないから……と二の足を踏むよりも、まずは挑戦してみる、というちょっと前のめりなくらいの姿勢の方が、未婚化・少子高齢化の進む現代の日本では案外必要なのかもしれません。

 婚活パーティーや婚活アプリなど、出会いの場を提供するチャンネルが増えた今、「当社のサービスも『もう一歩だけ前に進みたい』と願うカップルたちのサポートに少しでもなれば」と加藤さんは期待します。

同棲して初めて分かることもある

「お試し同棲」を経て実際の同棲や結婚へとつながっていくのが理想的ではありますが、非常にプライベートなことでもあるため、現時点では事後アンケートなどは行っていないとのこと。

「その後をどうするかは本人たちが決めることですので。もちろん、良い方向に進んでいるといいなあと願ってはいるのですが……」(加藤さん)

 ただ、万が一「お試し同棲」をしたことで関係がギクシャクしてしまったとしても、それは一緒に暮らしてみなければ知り得なかった相手の大切な一面。一緒に暮らし、ぶつかったり仲直りしたりした経験もまた、本人たちにとってきっと貴重な経験になるのではないでしょうか。

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