コロナ禍で外国人観光客「ほぼゼロ」の今夏、都内の「免税店」は一体どうなっているのか?

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コロナ禍で外国人観光客「ほぼゼロ」の今夏、都内の「免税店」は一体どうなっているのか?

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若杉優貴

都市商業研究所

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新型コロナウイルス感染拡大で、インバウンド需要を狙った都内の免税店は現在どのようになっているのでしょうか。都市商業研究所の若杉優貴さんが解説します。

秋葉原「ラオックス」は早くも「日本人向け」に

 近年、インバウンド(訪日外国人客)需要の高まりから、都内各地でさまざまな「免税店」を見かけるようになりました。しかし、そうした免税店は新型コロナウイルスの感染拡大による外国人観光客の減少で危機的状況に陥っています。

 都内の免税店は一体どうなっているのか――。実際に店舗へと足を運んでみました。

 まずは今や免税店の「代名詞」となったラオックスの本店「ラオックス 秋葉原本店」(千代田区外神田)へ。

日本人客向け店舗へと改装を終えたばかりの「ラオックス秋葉原本店」。店頭では「恐竜」と「エヴァバイク」がお出迎え(画像:YOU)



 ラオックスはかつて首都圏各地に展開する大手家電量販店でしたが、2009(平成21)年6月に羅怡文(ら いぶん)氏が経営する中国大手家電量販店「蘇寧電器(現・蘇寧易購)」傘下となり、免税店へ転換。

 秋葉原駅からすぐの場所にある本店に、中国人観光客が「爆買い」に訪れる光景は多くのメディアで報道されました。

 秋葉原駅を降りてラオックス秋葉原本店に着くと、その印象は「コロナ前」と一変。「閑散としている」などではなく、店頭の雰囲気自体が大きく変わっているのです。

 ラオックスの担当者によると、秋葉原本店は8月始めに改装を終えたばかり。全面リニューアルにより、ラオックス本館は大部分が、免税店から同社のホビー専門売り場「アソビットシティ」業態へと生まれ変わっていました。

ホビー専門売り場の本格復活は約3年半ぶり

 もともと、アソビットシティは万世橋交差点そばに単独館として営業していましたが(それ以前は現ドン・キホーテの建物)、2015年7月に「爆買い」ブームに乗るかたちで半分のフロアをラオックス本館と同様の「中国人向け家電・宝飾品売り場」に衣替え。

 これにより日本客が大幅に減ってしまい、末期には再びホビー専門店へと戻ったものの客足を取り戻せず、2017年3月に突然閉店。

 その後は、ラオックス本館内の1コーナーとなっていました。コロナの影響によるものとはいえ、秋葉原でのアソビットシティ本格復活は「約3年半ぶり」のこととなります。

 今回のアソビットシティ復活の象徴的存在となるのが、1階の入り口にある全長5mの巨大な「恐竜フィギュア」と、日本に2台しかないという台湾で販売された「エヴァバイク」です。

 1階のテーマは「アキバサブカルチャー」で、店内にフィギュアなどが所狭しと並ぶ様子は、かつてのアソビットシティと同様です。人気漫画「キン肉マン」やライトノベル「この素晴らしい世界に祝福を」をテーマとした記念撮影スポットも設けられています。

恐竜や化石を扱う3階。アキバでも珍しい存在になりそう(画像:YOU)



 続いて2階は、サンリオを中心にさまざまなキャラクター商品を扱う「ファンシーキャラクター」、3階は恐竜関連商品や化石なども扱うというユニークな「ダイノストア」、地下の階はガンプラを中心としたプラモデルなどを扱うフロアに。かつての免税店らしいフロアは、4階のみとなりました。なお、5階以上は当面閉鎖とのことです。

中国企業らしい「変わり身の早さ」

 実は、ラオックスが「日本人客向け」に転換を遂げたのは秋葉原だけではありません。

 7月には大阪にある「ラオックス道頓堀店」(大阪市)もカフェやスイーツ店を導入するなど日本人客向けへの店舗改装を実施。地元客の取り込みに成功しつつあります。

 ラオックスは新型コロナウイルスの感染拡大により2020年上半期の最終損益が約139億円の赤字に。九州からの完全撤退を決めるなど店舗網の縮小をおこなっている一方、都内では新宿や銀座など複数の店舗が営業を続けています。

ラオックスは大阪・道頓堀店も「日本人客向け」へと改装。こちらは秋葉原とは異なり、カフェやスイーツ店が並ぶようになった。他の都内店舗の「全面改装」もあるのか(画像:淡川雄太)



 秋葉原や道頓堀で中国企業らしい「変わり身の早さ」を見せてくれたラオックス。残る系列店舗も近い将来、「日本人客向け」に改装・業態転換する可能性もあり、今後の動きが注目されます。

他の外国人向け店舗を訪問することに

 変わり身の早い「ラオックス」に対し、他の外国人向け店舗はどうなっているのかと、商業ビル内にある「空港型免税店」に続いて訪れました。

 空港型免税店とは、既存の百貨店や専門店などに適応されている「消費税分のみが免税される免税店(TAX-FREE SHOP)」とは異なり、関税や酒税・タバコ税も優遇される「空港型免税店(DUTY-FREE SHOP)」のことを指します。

 国内の市中(空港・港湾など以外)にある空港型免税店の開設は、沖縄型特定免税店制度により2002(平成14)年に開設された「Tギャラリア沖縄 by DFS」(那覇市)以降長らく行われて来ませんでした。

 しかし、外国人観光客の増加に伴い、2016年1月に三越伊勢丹と羽田・成田空港会社などの合弁で都内初となる市中空港型免税店「Japan Duty Free GINZA」が「銀座三越」(中央区銀座4)に開業。

銀座三越は一部改装工事中。銀座4丁目交差点側には大きなシャンデリアのモニュメントが登場。本格的なライトアップは11月からの予定(画像:三越伊勢丹)

 その後、2016年から2017年にかけて韓国企業との合弁による免税店が「東急プラザ銀座」(銀座5)、「新宿高島屋」(渋谷区千駄ケ谷)に相次いで開業するなど、都内・そして全国各地へと広がりを見せることとなりました。

空港型免税店も日本人客を取り込む構えか

 ラオックスに対して、これらの空港型免税店はどういった変化が起きているのか……と思い、「東急プラザ銀座」「新宿高島屋」にある韓国資本系の免税店に行ってみると、店舗は閑散としているものの、ラオックスと違って「コロナ前」の店構えとそれほど変化がない様子。

新宿高島屋にある免税店は高島屋、全日空、サムスングループ(新羅免税店)との合弁(画像:YOU)



 店内は「DUTY-FREE専門エリア」など一部休業している区画がある一方、営業している売り場をよく見ると、韓国コスメの品ぞろえを強化したり、また期間限定の「特別割引商品」を置いたりなど、日本人客を取り込もうとしている様子もうかがえました。

 出国予定がない日本人客もこれらの空港型免税店で買い物できますが、通常店舗と同様に税金(消費税や酒税など)を払う必要があります。

 このほか、銀座三越内にある「Japan Duty Free GINZA」では8月31日(月)まで老舗おもちゃ店「博品館」(銀座8)によるポップアップショップを開設。レトロアーケードゲームの展示が行われるなど、日本人客をメインターゲットとした期間限定イベントが開催されています。

 苦境はまだまだ続きそうですが、「日本人客向け」に進化を遂げつつある免税店たち――。そんな今だからこそ、都心に出掛けた際には免税店をのぞいてみてはいかがでしょうか。

「密」になりにくい店内で、思わぬ商品やイベントに出会えるかも知れません。

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