なぜ人は怪談や伝承に心を引かれるのか? 墨田区「本所七不思議」を例に考える
2020年8月5日
お出かけ夏になると注目を集めるのが、会談や「七不思議」です。その中でも、歴史的に有名な墨田区の「本所七不思議」や関連ビジネスについて、文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが解説します。
知的好奇心をくすぐる怪談
夏の風物詩のひとつと言えば怪談で、不思議なものや怖いものへの興味が増すシーズンとなってきました。
地域に残る古くからの伝承には、不思議で怖い話がたくさんあります。それらは今考えると実際に起こったことに起因していたり、超常現象だったり、科学的な根拠があったりして、知的好奇心がとても刺激されます。
例えば、江戸時代には「虚船(うつろぶね)」と言う伝承がありました。
虚船とはどんぶり型の謎の飛行物体のことで、江戸時代に目撃が多発。中には美女が乗っていたなどのうわさがありました。これは今で言うところの、未確認飛行物体(UFO)ではないかと言われています。
また、各地に見られる「殺生石(せっしょうせき)」は中国の妖狐(ようこ)が日本で正体がばれて石になり、近づくものを殺すと言われていますが、実際は石の近くに有毒ガスが出ていることが原因とされています。
どちらも不思議なもの、怖いものとして人から人にうわさ話が広がっていきました。
「不思議」の意味の語源はギリシャ語
江戸時代後期、南町奉行の旗本である根岸鎮衛(やすもり)はうわさ話や怪談を集め、全10巻の「耳嚢(みみぶくろ)」と呼ばれる本を編さんしています。近年、実話怪談の本として人気を呼んでいた「新耳袋」はこの本をもじったものです。

伝承を集めたものに「七不思議」があります。七不思議と言うとすぐに思い出すのは「学校の七不思議」でしょう。
どこの学校にも独自の七不思議があり、例えば校内に古い銅像があれば夜中に校舎を歩いていたとか、校庭を走っていたとか言ううわさ話がつきものです。学校の七不思議以外にも土地にちなんだものが多く、全国にさまざまな七不思議が存在しています。
伝承のひとつひとつの話の中にはたわいのないものもありますが、数が集まって七不思議と呼ばれることにより一定の存在感が生まれます。
日本における七不思議は、明治期に入ってきた「世界の七不思議」(ギザの大ピラミッド、バビロンの空中庭園など)という言葉が契機となって一般的に使用されるようになったと言われています。
「不思議」と訳された言葉の元々の語源は、ギリシャ語で「眺めるべきもの」と言う意味で、特に怪談や超常現象を表したものではありません。
元々、日本の地域に数多くあった怪談や奇妙な事象などの伝承が七不思議という言葉と結びついたと考えられます。
七不思議と言っても実際の数は多かったり少なかったりしており、七不思議と言う言葉の語呂が良く、キャッチーであったため、広がったのかもしれません。

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