J-POPの歌詞から「クルマ」と「道路」が知らぬ間に消え失せたワケ
2020年6月29日
ライフ「クルマ」や「道路」は1970~80年代のJ-POPで多く歌われていた。しかし現在はあまり聞きません。いったいなぜでしょうか。法政大学大学院教授の増淵敏之さんが解説します。
歌詞や曲名に載った「東京の道路」
1970~80年代のJ-POPを振り返ると、歌詞や曲名に「東京の道路(通り)」の名前が出てくるものが意外と多いことに気づきます。

松任谷由実(荒井由実)で言えば、
・「中央フリーウェイ」(中央自動車道)
・「カンナ8号線」(環状8号線)
・「哀しみのルート16」(国道16号線)
などが思い出されます。そのほかにも
・杉真理「悲しきクラクション」(明治通り)
・稲垣潤一「246 3AM」(青山通り)
・国安修二「ねえ」(目黒通り)
・リンドバーグ「ROUTE246」(国道246号線)
など、推測も含めてですが、具体的な道路の名前が歌詞や曲名に記載されています。
背景にある「クルマの時代」
また1970~80年代のJ-POPの作品に多いのは、「クルマから見た風景」が描かれる歌詞です。
具体的な地名が示されないものが大半ですが、筆者(増淵敏之。法政大学大学院教授)がパッと思いつくだけでも、
・大澤誉志幸「そして僕は途方に暮れる」
・鈴木雅之「ガラス越しに消えた夏」
・佐野元春「アンジェリーナ」
などがあります。「アンジェリーナ」に至っては、「車の窓から身を乗り出し 街角の天使にグッドナイト・キス」と、とてもロマンチックです。

これらのシチュエーションは、若者たちにとって当時が「クルマの時代」だったことを象徴しているのではないでしょうか。そのほかにも杉山清貴、角松敏生なども歌詞にクルマをちりばめています。
「若者の車離れ」との相関性
しかし現在のJ-POPを聴いても、道路やクルマを描いた作品をあまり耳にしません。いったいなぜでしょうか。
まず想起されるのは、21世紀以降叫ばれている「若者の車離れ」です。若者のライフスタイルが変化していると言ってもいいでしょう。一般的に欧米の楽曲と比べ、J-POPはターゲットを若者に設定していると言われますが、そのあたりに理由がありそうです。

EXILEや三代目 J SOUL BROTHERSなどは「マイルドヤンキー」なファンを手堅く確保しているので、一見、クルマとの関係が強いと思われがちですが、彼らの歌詞にクルマが登場するケースは意外なほど少ないのです。
印象にあるのは、それぞれ数曲程度といったところでしょうか。不思議な事実であり、ここにも同様の原因があると言えます。
J-POPから、クルマのイメージがいつの間にか消えたといっても過言ではありません。もちろん1990年代に入ってからも、
・スピッツ「青い車」
・Mr.Children「光射す方へ」「ALIVE」
といったような例外はあります。

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