新型コロナ禍で露呈した6月「父の日」が全く盛り上がらない根本理由

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新型コロナ禍で露呈した6月「父の日」が全く盛り上がらない根本理由

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母の日と、父の日。一対の記念日のようでいて、そこには歴然たる格差が。その決定的な理由が、新型コロナ禍で見えました。

ふたつの記念日の決定的な違い

 突然ですが2020年の「父の日」が6月何日か、あなたは即答できますか。

「母の日」と「父の日」。対を成すこのふたつの記念日ですが、皆さんご存じの通り、母に/父に贈り物をするか――という実行性や認知度について、大きな差があります。

2020年の「父の日」、6月何日か即答できますか?(画像:写真AC)



 マーケティングリサーチのマクロミル(港区港南)が運営するサイト「ホノテ」のインターネット調査(2018年版)によると、「母の日」に贈り物をしたいと答えた人は62.0%とおよそ3人にふたり。一方「父の日」については46.7%と、過半数を割ることが明らかになりました。その差は実に15.3ポイント。

 かねて父の日は、母の日に比べて「何だか影が薄い」「祝い忘れてしまうことが多い」と言われてきた記念日です。そしてまたその理由をめぐる推測も、SNS上を中心に長年の議題テーマとなっているよう。

子どもはやっぱり母親が好き?

 例えば「父親より母親の方が子どもにとって距離が近いから」説。

 言うまでもなく人は誰しも、母親から生まれてきました。のみならず日本の家庭は多くの場合、父親が民間企業に勤めているため平日は帰りが遅く、夕食どきにそろうのはたいてい母親と子どもたち――というスタイルが大半を占めます。

 男性が主な稼ぎ頭となって女性が家庭を守る、その役割分担の良しあしについての議論はまた別の機会に譲るとして、子どもにとって接する時間が長い母親の方に、より深い愛着を持つというのは、通りにかなっていると言えそうです。

家族には見せない努力や苦労が、きっと父親にはあるのだ(画像:写真AC)

 またもう一説は、「母親の方が贈り物を喜んでくれるから」説。

いまいち反応が乏しい父親たち

 ツイッターの投稿を見てみると、

「母のときはすごく喜んでくれたけど、父はいまいちリアクションが薄かった……」
「昔あげたけど、あまりに反応が薄すぎたのでそれ以来あげてない」
「内心はうれしいんだろうけどさー」

といった声が。

 確かに、一般的に女性の方が贈り物の授受に慣れ親しんでいて、何かを贈られれば感情を豊かに感謝の思いを表してくれるというのは、傾向としてうなずけます。

 引き換え世の父親たちは、上記の投稿を見る限り、恥ずかしがり屋の方が多いのでしょうか。本当は喜んでくれているのだとしたら、贈る側もより贈りがいを感じるのですが。

 そして、さらにもうひとつ。「シンボリックな贈り物が、母の日にはあるのに父の日にはない」説。

 母の日といえば、そう、カーネーション。先に引用したインターネット調査によると、母の日に贈りたいものを問う設問に「花」と答えたのは50.0%、さらに「お菓子・スイーツ」が36.6%と続きます(複数回答)。

 対して父の日は、最も多い「お酒」が35.5%、ネクタイなどの「服飾品」が26.2%など、回答が分散してしまっている様子(同)。

母の日といえばカーネーション。贈る側も、商品を選びやすい(画像:写真AC)



 この、「シンボリックなアイテムの有無こそがイベントの盛り上がりを左右する」実例が、まさに2020年春の新型コロナウイルス禍で示されました。

 それは、2020年5月いっぱいを「母の月」にしようと呼び掛けた、日本花き振興協議会(千代田区四番町)などの取り組みです。

イベントの「旗振り役」の不在

 新型コロナによる外出自粛のさなかにあった2020年5月。日本花き振興協議会は、第2日曜日である「母の日」だけでなく5月いっぱいを「母の月」と位置付けて、「たとえ当日に間に合わなくても、外出自粛で直接会えない今こそ母への感謝の思いを伝えよう」というメッセージを発信しました。

 もちろん背景には、コロナにより需要が落ち込む花き業界の窮状もありました。

 協議会に賛同する大手花き業者などが次々と「母の月」キャンペーンを展開。イベントや贈答のため大切に育てられたカーネーションなどを無為に廃棄してしまうのはあまりに忍びないと、業界支援の意味も含めたムーブメントは、花好きの人たちを中心にSNSなどを通じて一定程度の支持を集めたところです。

「父の月」と検索してヒットする数少ないページのひとつ(画像:ニューオータニホテルズ)



 ここでいう花き振興協議会とはつまり、イベントの旗振り役。翻って父の日は、上記で示した通りシンボリックな贈答アイテムがない分、6月に入った現在も主だった動きが見られないのが現状です。

 試しにヤフーで「父の月」と検索してみても、ニューオータニ(千代田区紀尾井町)のスイーツや、京都にある湯葉店のサイトなどがいくつかヒットする程度。当日まで1か月を切った時期ながら、「母の月」の検索結果とは明らかなる差が見て取れます。

アッと驚かせるような贈り物を

 日本記念日協会によると、2019年の母の日の市場規模(推計)は約1205億円。一方、父の日の市場規模はそのおよそ半分程度とされています。数々のギフト商品を取りそろえる百貨店にとって、6月は父の日よりもお中元商戦に注力する、といった業界事情もあるようです。

 とはいえ、父の日を祝おうという機運が全くないわけでは当然ありません。

 クイーンズ伊勢丹を運営するエムアイフードスタイル(新宿区西落合)は、ネクタイの形をしたユニークなオリジナルパンを発売。東京など首都圏の駅構内でおなじみの靴修理ミスターミニットを運営するミニット・アジア・パシフィック(台東区柳橋)などは、「オンライン靴磨きワークショップ付きシューケアセット」を販売するなど、さまざまな商品が登場しています。

6月は「父の月」。お父さんに感謝の思いを伝えてみては?(画像:写真AC)

 お父さんのリアクションがいつもいまいちなら、上記のような一風変わったプレゼントを用意して驚きのリアクションを引き出してみるのはいかがでしょうか。

 コロナ禍で近しい人への感謝の思いを新たにしたのは、母に対しても父に対してもきっと変わりありません。もし離れて暮らしているのなら、なおさら。

 2020年の父の日は、6月21日(日)です。もちろん当日でなくても何日か遅れてしまっても、「父の月だから」と贈り物をしたら、お父さんだってやっぱりうれしいのではないでしょうか。

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