散歩好きのフリーライターがたどり着いた「更地マニア」という最終形態

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散歩好きのフリーライターがたどり着いた「更地マニア」という最終形態

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田中マリネ

フリーライター

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東京のそこかしこで行われているスクラップアンドビルド。その際に生まれる更地の魅力について、フリーライターの田中マリネさんが解説します。

更地の魅力とは

 筆者は更地(さらち)マニアです。散歩の途中で更地を見つけると、思わず見入ってしまいます。筆者が更地を見つけてまず行うのは、

「ここには以前、何があったか」

を思い出すこと。だから知らない街ではなく、何度も散歩したことがある街の更地が好きなのです。「ここにはおそば屋さんがあったな……」といった具合で、思い出せるとちょっとうれしくなります。

都内の更地(画像:田中マリネ)



 散歩から帰宅すると、更地のある場所をグーグルマップのストリートビューですぐに確認します。すると見覚えのある住宅兼店舗だったり、まったく記憶にない住宅だったりしていろいろと楽しいのです。

 ときには更地になる前、建物の解体現場に遭遇します。そんなときはかなりの時間、そこにたたずんでいます。昔のカレンダーや新聞などといった生活の痕跡が、壊される建物のなかからふと見えたとき、「かつては家族の団らんがあったのかも」と思いをはせてしまいます。

 あまり他人に自慢できる趣味ではないですが、筆者がなぜ更地にこだわるのかを今回考えてみました。

更地の期間は短い、だからいとおしい

 こだわりの理由――それは漫画家の藤子不二雄が描く作品に出てきた「土管のある空地」へのあこがれではないかと思いました。

 筆者が小学生だったころ、土管のある空地をしばしば見かけました。当時はそんな空地を見つけると、土管の上に登ったり、なかに入ったりして、時間を忘れて遊んだものです。

左の画像は3月に撮影。右は同年11月に撮影。あっという間に雑草が生えた(画像:田中マリネ)



 年を重ねるにしたがって足を運ばなくなりましたが、東京の街を散歩するようになってから再び探し始めました。しかし、残念ながらもうありませんでした。

 空地の時間は永遠ではありません。いつかはそこに何かが建てられます。昔は何かが建てられる時間は今より長かったのではないでしょうか。だから更地であり、また空地としてそこに存在できたのです。

 今は建物が解体され、更地になったら、その姿をすぐに変えてしまいます。多いパターンは、更地から駐車場への変化です。空地になる暇すらないのです。ただ駐車場の期間もそんなに長くなく、建物の建設作業が始まります。

 更地ははかないのです。だからこそ、記憶にとどめておこうと思うのです。

六本木ヒルズにも更地時代があった

 筆者は更地になった場所を定期的に見に行きます。そのままにされた更地にはあっという間に雑草が生い茂ります。

 雑草の成長の早さには驚かされます。なかにはゴミが捨てられていて、「ゴミを捨てないでください」という立て看板が立っている更地もあって、心が痛みます。

 また、小さな更地の記憶はあるのですが、大きな更地はよく覚えていません。六本木ヒルズ(港区六本木)などの大規模開発も気が付けば、フェンスで覆われた土地から大きな建物がニョッキリ生えてきたという感じです。

東京はある日突然、大規模な商業施設が出現する(画像:田中マリネ)



 仕事などで毎日そのかいわいに通っているなら経緯もわかりますが、散歩者として訪れると記憶がよみがえりません。現在工事中の虎の門もフェンスに囲まれていて、どんな場所だったか思い出せません。

 筆者は思います。スクラップアンドビルドを繰り返す東京の更地こそ、日々移り変わる「東京のエネルギー」ではないかと。

 今日もいろいろな更地を見て回ります。あなたは更地が好きですか?

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