コロナ禍で健康管理への要望が急増中 都教委に寄せられた「都民の声」とは

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コロナ禍で健康管理への要望が急増中 都教委に寄せられた「都民の声」とは

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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東京都教育委員会のウェブサイトにある、同委員会へ寄せられた「都民の声」の昨今の動向について、教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

さまざまな声が寄せられる「都民の声」

 東京都教育委員会(新宿区西新宿)のウェブサイトに、同委員会へ寄せられた「都民の声」というコーナーがあるのをご存じでしょうか。

東京都教育委員会が入る都庁第二本庁舎(画像:写真AC)



 東京都教育委員会では毎月、この「都民の声」の件数を公表しており、その対応策を掲載しています。

 具体的な内容を見ると、都立校生徒の交通ルールへの苦情から就学支援の充実を訴える請願まで、幅広い意見が寄せられているのがわかります。

 そんな「都民の声」に、2020年に入ってから新型コロナウイルスに関するさまざまな声が殺到しています。

 例えば2月には、感染拡大防止に向けた休校措置の延長について、

「感染者が出てから休校にするのでは遅いです。早く全校休校にしてください。学校内での感染も心配ですが、満員電車も感染するリスクが高いと思います」

という声が寄せられました。それに対して東京都教育委員会は、

「都教育委員会では、国の依頼を受け、都立学校について、3月2日から春季休業開始日までの間を臨時休業にすることとしました。また、区市町村教育委員会に対して都立学校の対応を提示し、区市町村立学校における適切な対応を依頼しました」

と回答しています。また4月には、

「5月連休明けから学校再開は危険だと思います。連休中の移動で学校関係者に感染者がいるかもしれません」

という声が。それに対して、

「都教育委員会では、国において緊急事態宣言が延長され、都における緊急事態措置等がなされたことを踏まえ、全都立学校について、5月31日まで臨時休業にすることとしました。また、区市町村教育委員会に対し、都立学校の取組を参考として、引き続き、感染拡大防止の取組への協力を依頼しました」

と東京都教育委員会は回答しています。

 このように東京都は保護者などから届く不安の声に対し、いったいどのように対処しようとしているのでしょうか。

感染者数増加に比例して件数が急増

「都民の声」は、

・教職員
・生徒指導
・学校運営
・教育施設
・社会教育
・健康管理
・福利厚生
・その他

の計8分野に分かれており、急増しているのはこの中の「健康管理」分野です。

「都民の声」分野別の受付件数のグラフ(画像:東京都教育委員会のデータを基にULM編集部で作成)



 1月の「健康管理」分野は普段より多いものの、前月比4件増となる11件にとどまりましたが、2月3日(月)のクルーズ船「ダイヤモンドプリンセス号」の横浜港帰港以降、国内や都内で新型コロナウイルスの感染者数が出始めると、それに連動する形で「健康管理」分野が676件と爆発的に増加しました。

 通常、インフルエンザなどの感染症が増える冬場でもほとんどが1桁台であることからも、676件というボリュームがいかにすさまじいものかがわかります。

 勢いはその後も衰えず、3月には801件まで増加。緊急事態宣言が出された4月には、1913件までに達しています。

 文部科学省はこのような現状を受けて、対応を表明しました。

保護者の不安をくみ取る対応を表明

 文部科学省が5月22日(金)付けで発表した衛生管理マニュアル「学校の新しい生活様式」には、基礎疾患のある生徒児童の通学について、保護者から主治医の見解を確認し、登校の是非を判断するといった趣旨が記載されています。

衛生管理マニュアル「学校の新しい生活様式」(画像:文部科学省)



 基礎疾患だけでなく、未知のウイルスへの不安を持つ保護者から「学校を休ませたい」という問い合わせがあった場合についても、その具体的な対応方法を載せています。

 学校側は保護者に感染症への対応対策を説明し、話し合いの結果、「やはり学校に通わせたくない」と保護者が判断した場合も、その理由によっては、校長の判断で通常の欠席扱いではなく、出席停止や忌引等による休みとするよう明記しています。

東京都はどのような対応を行っているのか

 これを受けて、東京都の公立学校は臨機応変な対応を見せています。

 都立高校に向けの学校運営ガイドラインには、感染が終息していない中での通学に不安を感じている保護者から「感染するのではと不安だ」という訴えに対し、校長の判断によっては「出席停止・忌引等の日数」として記録するように、と明記しています。

衛生管理マニュアル「学校の新しい生活様式」(画像:文部科学省)

 都内の公立小中学校もこの流れを踏襲していますが、区市町村によってはウェブサイトに欠席の扱いを記載しているところもあれば、載せていないところもあるなど、足並みはそろっていません。

 そのため、「本当は不安だが再開に向けて通わせる」という保護者が出てくるのではないかと危惧されています。

「通学が当たり前」を見直す契機になるか

 日本において、子どもの学びや社会性を身につける場は学校のみと言って過言ではありません。それだけにコロナ禍の影響は甚大であり、「通学が当たり前」という固定観念が揺らいでいます。

 この数か月の間に教育を取り巻く環境は激変し、学びの形が多様化しています。「学校の新しい生活様式」による欠席扱いの対応や、自治体への指示は今まで以上に保護者や子どもに寄り添ったものになっています。その一方で、学校は多くの子どもにとって最適な学びの場であることは変わりありません。

「都民の声」に寄せられた「健康管理」分野の割合と全体の受付件数のグラフ(画像:東京都教育委員会のデータを基にULM編集部で作成)



 ウィズコロナ時代の公教育の構築は、行政や現場だけでなく、さまざまな声を拾う必要があります。「都民の声」のように、インターネットで集まった市井の人々からの意見を活用することが、国や東京都に今求められています。

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