身近な「日傘」がコロナ禍に有効? 差すだけでソーシャルディスタンスを守れるアイテムだった

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身近な「日傘」がコロナ禍に有効? 差すだけでソーシャルディスタンスを守れるアイテムだった

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新型コロナウイルス感染拡大の影響で求められる「ソーシャルディスタンス(社会的距離)」。人と人との距離を取るのに「日傘」が有効だとの指摘が、SNSや関係業界から挙がっています。2020年夏、例年以上に日傘が活躍するようになるのでしょうか。

コロナ収束後も「人との距離2m明けて」

 新型コロナウイルスに関する国内の累計感染者数は2020年5月11日(月)時点で1万5874人。東京都内では7日連続で新たに確認された感染者の数が40人を下回り、感染拡大は徐々に収束へと向かっているようにみられます。

 一方、厚生労働省は5月4日(月)に公表した「新しい生活様式」で、新規感染者数が限定的となった地域であっても「再度感染が拡大する可能性があり、長丁場に備えて『新しい生活様式に移行していく必要がある』と説明。

 基本的な感染対策としては「人との間隔はできるだけ2m(最低1m)空ける」ことなどを実例として挙げました。いわゆるソーシャルディスタンス(社会的距離)です。

 たとえ新型コロナの新規感染者が限りなくゼロに近づいても、私たちの生活は「コロナ以前」とは異なる様式が求められるようになりそうです。

 そんななか、今にわかに注目を集めているのが「日傘」です。

日傘を差せば、人と人との間に距離が生まれる?(画像:写真AC)



 環境省が2018年3月に公表した「まちなかの暑さ対策ガイドライン 改訂版」では、日差しを遮ることで「体感温度が3~7度程度低下」すると報告されています。

 太陽光を遮る「遮光性」はもちろん、近年の猛暑対策として「遮熱性」にもすぐれた商品も多く出回っている日傘。紫外線(UV)カット効果も備えているため、女性を中心に多くの人が夏場の必須アイテムとして利用しています。

 この日傘が、本来の機能だけでなく新型コロナ以降の「新しい生活様式」にもマッチしていると、傘の専門店や大手メーカー、手芸店なども日傘の積極的な利用を呼び掛け、機運が高まっています。

きっかけはツイッター、企業が次々反応

「機運」の始まりは2020年4月5日(日)、東京などに「緊急事態宣言」が発令される2日前に投稿されたツイッターのつぶやきでした。

「近所のお婆さんが日傘を持って歩いていて、日傘を差していると自然に人と一定の距離ができるから安心、と言っていた」

 この投稿は瞬く間に広まって、2万8000件の「いいね」が寄せられました。

 4~5月の大型連休や、東京で初の真夏日が観測されたことなどを契機に、企業などからも声が上がり始めます。

 1930年創業の洋傘メーカー小宮商会(中央区東日本橋)は4月22日(水)のブログで、

「日傘を差して人との一定の距離を保ちつつ、紫外線対策もできるのは一石二鳥」

「ふたり以上で歩く場合にも(日傘を差すことで)相手を傷つけることなく自然に距離を保つことができる」

と“効果”を指摘。

 手芸材料大手のユザワヤ(大田区西蒲田)も同社ウェブサイトで、ソーシャルディスタンスへの有用性にふれながら手作り日傘キットの売り場を展開しています。

「日傘でソーシャルディスタンスを」と呼びかけるプレスリリース(画像:ワールドパーティー)



 そのほか、レイングッズ企画・製造のワールドパーティー(大阪市)も「傘メーカーとして今われわれが出来ること」として、日傘の利用を促すプレスリリースを5月11日(月)に配信しました。

 梅雨入り・梅雨明け後、本格的な夏が訪れる頃には、企業側の動きはさらに加速することが考えられます。

「日傘男子」が増えることにも期待

 こうした「日傘機運」で期待されるのは、日傘を日常的に活用する男性人口のさらなる増加です。

 インターネットリサーチを手掛けるNEXER(豊島区池袋)が2019年5月に行った調査では、20~60代男性694人のうち「日傘を使っている」と答えた割合はわずか3.2%。逆に「使っていないし使おうとも思っていない」は全体の83.1%にも上りました。

男性の日傘利用について行われた2019年のアンケート調査(画像:NEXER)



 日本洋傘振興協議会(台東区浅草橋)事務局の田中正浩さんは、「直射日光を浴びることで体が受けるダメージに男女の差はありません」と指摘。体力が低下している年配の男性や、外回りの仕事などをしている男性にこそ日傘を活用してほしいと話します。

「使い始めは少し気恥ずかしいかもしれませんが、ひとたび使えば『これほど違うのか』と涼しさを体感していただけるはずです」

 ここ3年ほどで各メーカーも男性用日傘に本腰を入れるようになり、商品数も増えたのだそう。加えて新型コロナウイルスによりソーシャルディスタンスが叫ばれるようになったことで、日傘の利用が広がるひとつの機運と捉えます。

「日傘を差せば感染を防げるわけではもちろんありませんが、人と人との間に自然と物理的な距離が生まれますし、お互いに距離を取ろうという意識の変化につながるかもしれません」

 新型コロナウイルス禍では、全国民が一丸となって外出自粛、STAY HOMEに努めました。こうした社会共通の体験は、2019年まで「超少数派」だった日傘男子をマジョリティーへと成長させるのでしょうか。2020年夏の動向が注目されます。

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