東京の中心で自分再発見? 日本初「瞑想専用スタジオ」が東京人に伝えたいこととは

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東京の中心で自分再発見? 日本初「瞑想専用スタジオ」が東京人に伝えたいこととは

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アーバンライフ東京編集部

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2018年6月に新宿にオープンした瞑想専用スタジオ「muon」。その中では何が行われているのでしょうか。記者が実際に体験してきました。

ゆっくりと呼吸を繰り返し、心を整理する

 暗闇の空間に黄色く、ぼんやりと光るいくつもの柱―――。皆さんはこの画像を見て、どのようなことを想像しますか?

手前の柱には、木の断面らしき模様が見える(2018年10月1日、國吉真樹撮影)



 この空間には、ヒーリングミュージックをバックに女性の声が流れ続けています。その中であぐらをかいて座っているTシャツ姿の記者。その右腕の表面を撫でるように、ひんやりとした風が過ぎ去っていきます。

「鼻から一息、息を吸って……鼻からゆっくりと吐き出します……もう一息深く、吸って……吐いて……呼吸とともに、今の自分の中にある考え事や感情をいったん手放してみましょう……」

 声に従い、ゆっくりと繰り返される呼吸。目線は30cmほど先に立った柱に向けられています。時間の経過に比例するように、しだいに光の中に吸い込まれそうな感覚に陥ります。ふたたび流れる女性の声。

「準備ができたら目を閉じて、自分自身に注意を向けましょう……」

 目を閉じて、無心になろうと試む記者。それと同時に、日々ため込んだ雑念妄念が湧いてきます。また、それから逃れようと無心になろう、無心になろうと自分に言い聞かせます。

 そんな葛藤を30分ほど繰り返したころでしょうか、まぶたの向こうが明るくなったのを感じました。記者の左斜め前、数メートル先で同じくあぐらをかいていた女性が、ささやくような声でこう言いました。

「お疲れさまでした。以上でセッションは終了です」

30分の瞑想を体験した空間(2018年10月1日、國吉真樹撮影)

 少し明るくなった空間。柱は先ほどと同じように光り続け、赤茶色の床にはその光がぼんやりと映し出されています。空間にはいくつものクッションが置かれています。

 立ち上がって空間を出た先にある部屋。その中央には和テイストの畳をあしらった縁台、脇にはロッカーが置かれています。受付にはふたりの女性の姿が。

瞑想スタジオを出た先にある部屋の様子(2018年10月1日、國吉真樹撮影)

 縁台に座り、約30分間の記憶を手繰り寄せる記者に、短く刈り込んだ黒髪の中年男性が笑顔で声をかけてきました。鍛えられた肉体が印象的です。

「マインドフルネス体験、いかがでした?」

完全予約制、支払いはキャッシュレス

 JR「新宿駅」西口から都庁方面へ徒歩6分。ファミリーレストランや大手居酒屋チェーンなど、さまざまな飲食店が立ち並ぶエリアを抜けると現れる大型ビル。今回の取材先はその中にあります。お店の名は「muon(ムオン)」。同店は2018年6月21日(木)に、日本初の「瞑想専用スタジオ」としてオープンしました。

予約当日は手ぶらでOK

 同店を訪れた人はロッカーに貴重品や上着を預け、スタジオであぐらをかいて瞑想します。ちなみに、スタジオ内に流れていた声は、元フジテレビアナウンサーでアロマセラピストの大橋マキさんによるものです。

待合室の奥に瞑想用の空間がある(2018年10月1日、國吉真樹撮影)



待合室の入口付近に置かれた店舗のリーフレット。利用客の半数程度が女性で、30~40代が多いという(2018年10月1日、國吉真樹撮影)

 ウェブ上からの完全予約制で、利用料金も事前オンライン決済のみ。予約当日は手ぶらで瞑想プログラム(セッション)に参加できます。

 受付を済ませて、スタッフから提供される白湯(さゆ)を飲みながらプログラムの開始時間を待ちます。

瞑想の前に提供される白湯(2018年10月1日、國吉真樹撮影)

 開始時間が近づくと、スタッフがプログラム参加者の手首に、店オリジナルのアロマオイルを塗ります。取材当日に塗られたのは「#01」という、サイプレスやエレミ、ライムなどをブレンドしたオイル。森林浴をしているような爽やかさをイメージしたものだといいます。

スタッフが手首にアロマオイル「#01」を塗っている様子(2018年10月1日、國吉真樹撮影)

 ムオンが提供する瞑想プログラムは、座って行うものと横になった状態で行うものの計8種類。記者が今回体験したのは、前者の「マインドフルネス(座位の瞑想)」です。同プログラムでは、自らの動きや呼吸に注意を向けて、「今この瞬間にいること」を体感するのが目的。料金は2160円(税込)です。

多すぎる東京の「ノイズ」から、解放される場所を

 muonの運営は、全国にヨガ教室を展開するヨギー(目黒区中目黒)です。記者に声をかけてきた同社の古藤路人(ことうみちと)さんは、コンセプトについて次のように話します。

ヨギーで店舗開発を担当するマネージャーの古藤さん(2018年10月1日、國吉真樹撮影)



「東京はノイズが多い街です。ノイズというのはなにも『騒音』という意味だけではありません。わずらわしい人間関係や過剰に飛び交う情報なども含んでいます。そのような状況から一時的に離れられる、解放される場所を作ろうと、この店を作りました。完全予約制、事前オンライン決済にしているのも理由は同じ。ノイズからの解放。ホームページのデザインや情報もあえてシンプルにしているんですよ」(古藤さん)

スタジオ内に置かれたクッションとブランケット。このクッションの上であぐら状態で瞑想する(2018年10月1日、國吉真樹撮影)
クッションの使い方(画像:muon)
瞑想スタジオ内の光の柱を正面に据えて瞑想するイメージ。柱の表面には木材を薄くスライスしたシートが貼られており、光とBGMは連動する(2018年10月1日、國吉真樹撮影)
腰かけに座った状態でも瞑想ができる(2018年10月1日、國吉真樹撮影)

「スタジオの中には、スマートフォンなどを持ち込めないようにしています。ですから、デジタルデトックス(デジタル機器から一時的に離れること)にもなる。といっても皆さん忙しいですから、ここに何時間も滞在できないでしょう。ですから仕事やプライベートのすき間時間を使って『効率的』に利用してもらいたいですね」(古藤さん)

ムオンの入口付近の様子。中は黒一色で統一された畳敷きの通路になっている(2018年10月1日、國吉真樹撮影)
通路から待合室入口までの通路。手前がU字になっている(2018年10月1日、國吉真樹撮影)

 今後の課題は、「瞑想」という言葉を使わずに瞑想の魅力を伝えることだと話す古藤さん。

「瞑想という言葉は、宗教的なイメージがまだ付きまといます。この課題を越えれば、東京人のオアシスになれるのではないかと思っています」

スタジオ内の様子(2018年10月1日、國吉真樹撮影)

 今回の体験を通して、日々の生活の中で、自分と向き合う機会がいかに少ないかを感じた記者。30分という短い時間でしたが、光と暗闇、静寂に包まれた空間の出来事は貴重な体験となりました。

 日本初の試みに取り組むmuon。過剰なノイズであふれる東京において、「東京人のオアシス」になれる日はそう遠くないのかもしれません。

●muon(ムオン) 
・住所:東京都新宿区西新宿1-21-1 明宝ビルディング2F
・交通アクセス:JR「新宿駅」南口から徒歩5分、西口から徒歩6分
・営業時間:8:30~20:00(平日)、9:30~17:00(土曜)
・定休日:日曜・祝日
・電話番号:03-3345-6555

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