目の前に突如現れた「真っ赤な橋」 ほろ酔いアラサー男性が迷い込んだ異世界「月島」の夜

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目の前に突如現れた「真っ赤な橋」 ほろ酔いアラサー男性が迷い込んだ異世界「月島」の夜

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ズズズ

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東京で暮らし、働く男性たちは、日々何を見て何を思いながら過ごしているのでしょう。イラストレーターでライターのズズズ(zzz)さんが、自身の「何でもない今日」をイラストともに切り取ります。今回のテーマは「月島の異世界」。

初秋、友人ともんじゃを食べていた

 日が暮れると気温も下がり、過ごしやすい季節になりました。頬をかすめる心地良い秋の夜風が、たまには夜の東京を散歩してみようかという気持ちにさせてくれます。

 その日私(ズズズ。イラストレーター、ライター)は東京メトロ有楽町線月島駅から徒歩数分の「月島もんじゃストリート」(中央区月島)でもんじゃ焼きを食べていました。

 月島の歴史は古く、昔隅田川の河口に佃島(つくだじま)と石川島というふたつの小さな島があり、その島の周辺を埋め立てることで造られた人工島が「月島」です。もともと「築島」が正式名称でしたが、「築地」と区別するため「月島」に改名されたようです。

 現在では月島といえば「もんじゃ焼き」のイメージが強いのですが、これは戦前から工場や倉庫の労働者が集まったこの地で、小さな子どもたちのおやつとして親しまれるようになったのがルーツとのこと。

 もんじゃ焼きとビールを堪能した私と友人は、その帰り道に秋の心地良い風を感じてか、「酔い覚ましに散歩してから帰ろう」といって当てもなく歩くことにしました。

 適当に歩いていて偶然出合った佃小橋(同区佃)からの風景はとても不思議な感じがしました。

 佃小橋は朱色に塗られた小さな橋で、その下には隅田川の支川が流れています。橋の中央から景色を眺めると、手前には古くからある家屋が立ち並び、遠くには高層マンションが煌々(こうこう)と輝きながらそびえ立っているのです。

あまりに鮮烈な風景のコントラスト

 朱色の橋から眺める新旧時代の風景コントラストはまるで異世界にでも迷い込んだ気持ちにさせられます。このような風景が見られる場所は、これまでの人生であまり出合ったことがありませんでした。

朱色の欄干の上から眺めた、古い住宅地と立ち並ぶ高層マンション群(ズズズさん制作)



 老朽化した木造建築も多い月島エリアは現在再開発が進められています。私たちがもんじゃ焼きを食べていた「月島もんじゃストリート」も路面整備が進み、かつての景色から変わりつつあります。

 そのため、新旧時代の風景コントラストが見られるのは今だけの特別なタイミングなのかもしれません。

 古い景色が失われることに少しの寂しさを感じつつ、酔いが醒めた私は視線の端の煙突に気付きました。そう、銭湯です。

 日の出湯(同区佃)という銭湯で、もんじゃの匂いとにじむ汗を流そうと友人と立ち寄りました。

 利用者は地元のお年寄りが多いようで、レトロな建物の空気感も相まってか、非日常を感じずにはいられません。温度の異なる三つの浴槽を堪能し、私たちはナイトクルージングを再開します。

 隅田川の方へ向かうと佃公園にたどり着き、綺麗に整備されたテラスから佃大橋を眺めることができます。対岸にはきらびやかなビルが立ち並び、その奥には世界でも屈指の高級街「銀座」があります。

 それもまた月島のレトロあふれる風景とのギャップを感じさせます。明かりの少ない月島から眺めてこそわかる東京の夜景がそこにはありました。

今もし互いに交わることがなくても

 きらびやかな対岸を横目に佃公園のテラスに沿って歩いていると、すぐそばに高層マンションがあることに気が付きます。先程、佃小橋から眺めていた新旧の風景コントラストの奥にあったマンション群です。

 私と友人はマンションを眺めながら家賃はどれくらいだろうか、芸能人が住んでいたりするのだろうか、あの紫色の明かりが灯る部屋は何だろうか、そんな中身のない会話をしながら歩きました。

明かりがともるマンションの窓ひとつひとつに人々の暮らしがにじむ(ズズズさん制作)



 東京は歩くのが楽しい街です。どこを眺めても発見があり、歴史があり、画になる風景がある街です。

 そんな中で東京の面白いところがこの月島には詰まっているような気がしました。

 それは、風景コントラストで感じたように同じ場所に新世代と旧世代が共存している点です。木造住宅には古くからこの土地で暮らす人々が生活しており、高層マンションには恐らく地方から東京にやってきて、対岸にあるオフィスで働く若い世代の人々が住んでいるのでしょう。

 この新旧世代はもしかしたら互いに交わることはないのかもしれません。しかし、最近では古い町に若者が新たな風を吹き込んで町が再興する事例が増えているのも事実です。

 月島の再開発がどういった方向性になるのかはわかりませんが、ただでさえ他人と関わることが希薄になってきている世の中ですので、交流が盛んな街になることを願います。

秋の夜歩きにもぴったりの街、月島

 昨今サウナや銭湯ブームもありますので、例えば次に来るときはあの銭湯、日の出湯に若者とお年寄りの笑顔があふれていると素敵だなと思います。

 月島に思いをはせながら佃公園のテラスに沿って歩いていると月島駅に戻ることができますので、秋のナイトクルージングにはちょうど良いコースかもしれません。最後に今回の散策ルートをご紹介します。

1.月島駅に集合
2.月島もんじゃストリートでもんじゃ焼きを堪能
3.佃小橋で新旧時代の風景コントラストを眺める
4.佃小橋近くの銭湯「日の出湯」に入る
5.佃公園から佃大橋と対岸のビル群(夜景)を眺める
6.佃公園のテラスを歩きながら高層マンションを眺める
7.月島駅で解散

 ぜひ皆さんも試してみてはいかがでしょうか。

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