女子学生が約7割 国立で唯一の外国語大学「東京外大」とはどのような大学なのか

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女子学生が約7割 国立で唯一の外国語大学「東京外大」とはどのような大学なのか

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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日本の外国語大学で頂点に立つ東京外国語大学。同大のたどった歴史について、教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

女子学生が約65%

 国内の外国語大学の最高峰に位置づけられる東京外国語大学(府中市朝日町)は、大阪外国語大学(2007年廃止)と大阪大学(大阪府吹田市)の統合以降、唯一の国立の外国語大学です。

府中市にある東京外国語大学の外観(画像:(C)Google)



 語学のエキスパートを養成する大学といったイメージが強いですが、文化や宗教など多種多様な視点から専攻を学ぶことができます。

 また知名度が高い割に、学部生と院生を合わせて4500人程度という「狭き門」であり、かつ女子学生の数が約65%に上ります。

歴史に翻弄されてきた大学

 東京外国語大学の歴史は古く、幕末までさかのぼります。しかし一度消滅したり、震災や戦乱で何度も移転したりなど、時代に翻弄(ほんろう)されてきました。

 東京外国語大学は東京大学(文京区本郷)と同じ起源を持つ開成学校から独立した学校で、1873(明治6)年に東京外国語学校として設立されました。しかし13年後の1886年に廃校の憂き目にあっています。

 その後、約10年のときを経て復活した現在の東京外国語大学につながる学校は、一橋大学(国立市中)と起源は同じです。大学創立の1897(明治30)年は、一橋大学の前身である高等商業学校内に付属の外国語学校を新設した年にあたります。

 その2年後に分離独立を果たし、神田錦町の地で歴史をスタートさせましたが。しかし1913(大正2)年に神田大火で校舎を消失。その後、千代田区麹町に新校舎を建てたものの、1923年の関東大震災で再び失ってしまったのです。

 以後、新宿区にあった陸軍士官学校の用地を借りて学校再開。千代田区の仮校舎を経て、現在の滝野川区西ヶ原町(現在の北区西ヶ原)に本校舎を新築し、移転。しかしまた戦争により全てが灰となってしまったのです。

東京外国語大学の位置(画像:(C)Google)

 その後、間借りしていた上野の東京美術学校(現在の東京芸術大学)の敷地内で終戦を迎え、1949(昭和24)年に北区西ヶ原に戻るまで、しばらくの間は板橋区の学校を間借りするなど、成り立ちから戦後数年まで移転を繰り返していました。

 なお、北区西ヶ原に戻ってからは本部を半世紀にわたり置くことになります。

2012年と2019年に学部改編

 歴史をひもとくと波乱万丈な東京外国語大学ですが、手狭になってきた西ヶ原キャンパスを離れ、2000(平成12)年に府中市に新しいキャンパスに移転。

かつて西ヶ原キャンパスがあった場所(画像:(C)Google)



 近年は伝統校でありながら時代に合うよう学部を改編し、2012年にそれまでの外国語学部を言語文化学部と国際社会学部の2学部構成に改組し、2019年からは国際日本学部も新設するなど、改革を推し進めています。

 こういったことから、言語に特化した学習だけなく、地域の文化や歴史、経済といった広い視野から物事を検証、分析する人材育成を行っていこうとする姿勢を見て取ることができます。

 グローバル化が進んだ21世紀は、あらゆる角度から物事を測ることが重要になり、また企業側もそのような学生を欲しています。

 特に東南アジアの発展やそれに伴う日本企業の進出も盛んなため、現地社員との架け橋や、海外の取引先とのやり取りで相手の言語を使いこなし、かつ文化や宗教への理解のある人間が必要とされています。

 この10年での東京外国語大学の大変革は、こうした社会のニーズにこたえていこうという強い意志表示といえるでしょう。

単位認定のインターシップは1、2年次から可能

 通常大学3年が多いインターンシップも、東京外国語大学では1、2年次から可能となっています。期間は2週間から4週間までで、単位として認められます。

 就職活動を前提にしていませんが、早い段階で社会体験をさせることで働くことをリアルに感じ将来を考えさせる大学側の狙いが見えてきます。

キャリアアップのイメージ(画像:写真AC)

 キャリア支援においても、2011年にグローバルキャリアセンターを設置。東京外国語大学というブランドを使って、さまざまな分野で活躍するOB・OGへの無償相談、一流企業や経営者によるグローバルビジネス講義、外交官等国家・地方公務員プログラムなど幅広い内容を提供しています。

特徴はクオーター制にあり

 入学早々からインターンシップに参加できる一方、世界約70か国、215の機関と協定を結ぶ国際交流が盛んな大学という顔もあり、2018年度の学生は1学年次に約52%が短期留学を経験。2019年度の卒業生の約75%が卒業までに海外留学をしています。また全授業中15.5%が外国語によって授業が行われています。

東京外国語大学のウェブサイト(画像:東京外国語大学)



 こうしたキャリア支援と留学、普段の講義で在学中から豊富な国際経験を実現させているのは、東京外国語大学ならではのクオーター制(1年を四つに分ける4学期制)の導入があるためです。

 夏学期や冬学期に集中講義や短期留学、インターンシップに参加し、意義ある過ごし方ができるようになっているのです。

グローバル社会では外国語は必須

 高い言語能力は、就職活動の強い武器となります。

外国語を使ったコミュニケーションのイメージ(画像:写真AC)

 特に東京外国語大学は英語やフランス語といったメジャーな言語以外も学べ、ラオス語などの一般的にはマイナーなイメージのある言語も専攻科に含まれます。専攻以外の言語を合わせると76もの言語を学べ、国内最高峰にふさわしい充実ぶりです。

 学部の再編や再構築で時代のニーズに合う内容を学べつつ、留学やインターンシップも入学早々から参加できることもあり、「日本と世界の架け橋をしたい」「海外で仕事をしたい」という志を持つ学生にとって、東京外国語大学はチャレンジしがいのある大学と言えるのではないでしょうか。

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